3ページ目 - ヨーコさんの評伝を実現させるまでは死ねない|ビートルズのことを考えない日は一日もなかった 特別対談 Vol.18 藤澤志穂子

産経新聞で始めた連載「経済人が語る私とビートルズ」

産経新聞で連載されていた「経済人が語る私とビートルズ」

竹部:ニューヨークで細かくビートルズ活動していたんですね。それで帰国後に産経新聞でビートルズの連載を始められると。「経済人が語る私とビートルズ」。これはビートルズでしか成立しない企画ですよね。

藤澤:2012年がちょうどデビュー50周年だったので、ビートルズの記事を作りたいと思ったんです。全くの趣味ですが(笑)。最初のきっかけは、たまたま当時のキリンビールの社長にインタビューすることになって、どんな人なのか調べてみたら、ビートルズが好きらしいっていうことがわかって、実際に話を聞いたら、ビートルズの話でものすごく盛り上がったんです。これって企画になるんじゃないかと思いまして、ビートルズ好きな社長に限って調べてみたら、結構名前が出てきまして。社内で企画を出したら反応もよくて、正式に始めることになったんです。取材を依頼するとみなさん大喜びで受けてくれて、取材も盛り上がりました。

竹部:石坂敬一さんもいましたよね。

藤澤:覚えています。すごく楽しい取材でした。ポールとリンダと一緒に映った写真も貸してくれて。お会いしたときは元気だったので亡くなったのが信じられなかったです。

竹部:ぼく石坂さんの自伝を作ったんですよ。亡くなる1年半前くらいから定期的に話を聞いて。本が出る前に亡くなってしまったのが残念で。でも話を聞いておいてよかったと今になって思います。

藤澤:読みました。あの本、竹部さんの名前出ていましたっけ?

竹部:石坂敬一著にしていますから。でも奥付に僕の名前はクレジットされていますよ。

藤澤:そうなんですね。私なんか、関わった本は無理やり表紙に自分の名前をクレジットしてもらうのに(笑)。

竹部:あれは藤本さんと一緒に作った本でしたしね。

藤澤:ついでに言うと、当時の帝国ホテルの社長にも話を聞いているんですが、なぜビートルズは来日したときに帝国ホテルに泊まらなかったのかっていう話がおもしろかったです。あの頃、外国人のVIPはほぼ例外なく帝国ホテル泊だったんです。マリリン・モンローとか。なのに、ビートルズはヒルトンに泊った。それは老朽化で立て直しが決まっていたからだというんです。もし立て直しの時期ではなかったらビートルズは帝国ホテルに泊まっていたと。

竹部:そうか。建て替えはあのタイミングだったんですね。もし、帝国ホテルだったらビートルズ史も変わっていましたよね。

藤澤:連載はいったん10人で終了したんですが、読者の方々から「もっとやってほしい」という反応を多くいただきまして。また経済界からも「自分が出たい」という声が結構とどきまして、2回目の連載をやりました。結局合計20人ぐらいの社長に話を聞いたのかな。で、傾向としてはポール好きが多いっていうこと。取材の中で必ず好きなメンバーの名前を聞いたんですが、7割以上がポールでしたね。なぜですかね。海外だとジョンのほうが多いような気がするんですが。社内では、日本人は英語力の問題で、歌詞ではなくメロディから入るからポールになるのではないかという話になりましたけど。海外だと歌詞から入るのでジョンのファンが多いと。

竹部:お行儀がいいからですかね。傾向としては曲もポールが多いんですか。

藤澤:ポールでしたね。みなさん聞き込んでいる人ばかりだったんですが、ポールの曲で、時代は初期が好きという人が多かった。『ミート・ザ・ビートルズ』や『プリーズ・プリーズ・ミー』を挙げる人も多くて、それはビートルズが出てきた初期の衝撃があるのかも。

竹部:そうですね。出てきたときをリアルタイムで知っている人はそうなりますよね。ぼくも一周回って初期が好きですよ。若くて、4人ともかわいくて、仲が良くて、バンドとしてのまとまりがある64年がいいんですよ。それにしてもなぜビジネスマンやエグゼクティブはビートルズを好むのか。この点についてはいかがですか。

藤澤:団塊の世代の人が多かったんですが、やっぱりビートルズに受けた衝撃によって人生観が変わり、彼らのパイオニア精神を経営に生かしたいと言っている人はいましたね。

竹部:なるほど。この取材は楽しかったんじゃないですか。ビートルズを題材に仕事が出来て幸せでしたでしょ?

藤澤:その通りです。だからこれを本にしたいなと思って。産経新聞出版から出さないかっていう話もあったんですけど、わたしが忙しくてほったらかしにしていたらそのままになっちゃった。

竹部:これもいつかまとめてほしいです。ところで、藤澤さんは今でもビートルズは聞いていますか。

藤澤:もちろん。初めて聞いから45年以上経っても、聞くたびに新鮮で、古くならない。必ず戻る場所っていうか、音楽の原点です。最初は歌謡曲を聴いていて、そこからゴダイゴが好きになったんです。ゴダイゴって歌詞が英語でしたよね。小学生のとき、ゴダイゴを聞いていると英語の勉強になると思って聞いていたら好きになって。

竹部:ぼくもゴダイゴ好きでしたよ。

藤澤:たぶんゴダイゴが好きだったからビートルズに入れたんだと思う。ゴダイゴってビートルズの影響を受けていますよね。

竹部:タケカワユキヒデさんって、中学生の頃、同級生の女の子から「タケカワくんの声ってポールに似ているね」って言われたらしい。そんなエピソードを読んだことがあります。甘い声が似ていますよね。

藤澤さんの著作『駅メロものがたり』

藤澤:わたし、タケカワさんにインタビューしたことがあるんですよ。『駅メロものがたり』っていう本を書いたときに。西武鉄道の大泉学園駅の発車メロディが「銀河鉄道999」で、タケカワさんが音源を作ったんですよ。

竹部:そうだ。藤澤さん駅メロの本を出していましたよね。最近のビートルズ音源や映像は追いかけていますか。

藤澤:この間の『アンソロジー』とか買いましたけど、やっぱりオリジナルに戻る。AppleMusicで十分かなと思ったんですが、武蔵小山のペットサウンズで買いました。知ってます? ペットサウンズ。

竹部:前に森さんにビートルズ来日話を聞いたことがあります。ペットサウンズでやったサエキけんぞうさんのイベントにも出たことがありました。音楽ファンにとっての最後の砦。ずっと残ってほしいです。最近のビートルズ関連の映像は観ています?

藤澤:『ゲット・バック』のルーフトップ・コンサートは映画館で観たんですが、ディズニープラスのやつは途中まででして。長すぎて……。編集したやつはないんですかね。

竹部:あれは長いからいいんですよ(笑)。相当な情報量があるからいいんですよ。3、4周して、理解に深みが増すんです。今回の『アンソロジー』は昔のやつよりも短くされていて、残念で。

藤澤:やっぱりそうなんだ。でも根気がいりますよね。何が良かったですか。

竹部:バンドが崩れていく様子。でも意外に仲いいとか。演奏がかっこいいとか、4人のファッションや髪型とか、おいてあるお酒とか食べ物とか。でも、『ゲット・バック』は鑑賞ガイドがあったほうがいいかも。『ゲット・バック・ネイキッド』という藤本さんの本は傑作なんだけど、あれは配信前に作られたものだから、配信後のガイド本があったらいいなって思う。

藤澤:そうですね。もう一回、『ゲット・バック』見ます。最近のポールの『マン・オン・ザ・ラン』は見ました。前に見たことある映像ばかりだなと思ったんですが……。

竹部:確かに。「カンボジア難民救済コンサート」の「アロウ・スルー・ミー」とか、初めて観る映像もあったんですが、だいたい『ウイングスパン』で見たことのある映像でした。

藤澤:『ウイングスパン』は結構衝撃だったんですけどね。日本公演逮捕のときのニュースとか。

竹部:今回その映像は『ウイングスパン』と同じでしたよね。ということは『ウイングスパン』はなんだったんだってことになっちゃう気もしますね。言っていることもそんなに変わっていなかったし。でも今回の『マン・オン・ザ・ラン』でポールが大麻事件について触れているところで唯一思ったのは、「子どものために俺が行く」みたいな発言。本当はリンダにも罪が及びそうだったのをポールがひとりで被ったみたいな感じで捉えたんですけど、あれは今までなかった発言ですよね。でもあれってそもそもポールは入国していないって話もあって。不思議なんですよ。

藤澤:それに今だったら、ああいうVIPが雑居房に入れられるんですかね。

竹部:お互い、80年のポール来日逮捕からビートルズ歴が始まっているんであそこのくだりは注目しちゃいますよね。今日はお忙しいところビートルズ話に付き合っていただきありがとうございました。

藤澤:こんな話でよかったんですかね。

竹部:楽しかったです。ぜひヨーコさん本実現させてください。ぼくも協力しますので。

藤澤:それを書ける日本人は私しかいない。それを実現するまでは死ねない、というと大げさですが本気でそう思っているんです。ぜひお願いします。

『COOKIE SCENE』2010年2月号
この記事を書いた人
竹部吉晃
この記事を書いた人

竹部吉晃

ビートルデイズな編集長

昭和40年男編集長。1967年、東京・下町生まれ。ビートルズの研究とコレクションを40年以上続けるビートルマニア兼、マンチェスターユナイテッドサポーター歴30年のフットボールウィークエンダーのほか、諸々のサブカル全般に興味ありの原田真二原理主義者。WEBメディア『昭和MILD(https://showamild.com/)』もよろしくお願いします。
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