ミリタリーを、糸から読み解く「Combat Mills」が受け継ぐ“LAST RESORTの思想”

JELADOが「LAST RESORT」で培った、ヴィンテージを分析し、糸から生地を再構築するものづくり。その思想をミリタリーへ広げる新境地「Combat Mills」が始動した。第一弾では、米軍初期のヘリンボーンツイルを徹底解析し、生地を一から開発。新シリーズ誕生の背景と、そのものづくりについて、代表・後藤洋平氏に話を聞いた。

「JELADO」後藤洋平代表|元古着バイヤーとしての経験を背景に、2005年6月、東京・恵比寿にてヴィンテージウエアをルーツとするブランド「JELADO」を始動。世界中のヴィンテージを研究し、その背景やディテールを紐解きながら、リプロダクトの枠を超えた現代的なものづくりを追求している。素材から再構築する独自のアプローチを続け、今季は実物のミリタリークロスを解析し、糸から生地を再現する新カテゴリー「Combat Mills」を立ち上げた。

ラストリゾートの世界をさらに広げる新境地、「コンバットミルズ」

ジェラードが新たに立ち上げた「コンバットミルズ」。ミリタリーを軸に、新たなものづくりへ挑むカテゴリーだ。その背景には、ラインナップを見直す狙いもあった。

「一番の理由は、ラストリゾートシリーズのアイテム展開が広がりすぎたことですね。最初は白タグ、黒タグ、茶タグという分類で良かったんですが、青タグが出てきた頃から少し難しくなりました。ライトオンスデニムだけじゃなく、生成りやウォバッシュも入ってきて、『このアイテムは何タグなんだろう』となってしまったんです」

そこでファイブポケットデニム以外はタグによる分類ではなく、「ワーク」と「ミリタリー」という大きなカテゴリーへ整理しなおしたという。

「コンバットミルズは、ミリタリー生地をラストリゾートの考え方で作っていくシリーズです。茶タグで展開していたチノパンもこのカテゴリーへ統合していきます」

その第一弾として、ヘリンボーンツイルの開発に取り組んだ。

「ヘリンボーンツイル自体は以前から製品に使っていました。ただ、生地は既製品だったんです。ラストリゾートのラインナップとして考えるなら、それでは満足できない。ヴィンテージを解析して、糸から生地を作ったほうが、自分たちのものづくりとして説得力がありますから」

そこで米陸軍が1940年代から採用していた、ヘリンボーンツイル製の実物M-47ベイカーパンツを解体し、糸の番手や打ち込み本数、生地構造まで徹底的に分析。その過程で、当時のヘリンボーンツイルならではの特徴を見つけたという。

「実物生地を調べると、杉綾模様の『ハの字』の左右で、S撚りとZ撚りの糸が交互に使われていたんです。理由を示す資料は残っていませんが、撚り方向を変えることで互いに反発し、生地が安定したんじゃないかと思っています。生地のねじれも少なくなりますし、均一感を出すための工夫だったんじゃないでしょうか」

この構造を再現するため、片方の糸だけを染め分け、織り上げた後に脱色、本染めを施している。

「展示会でも、この話をすると皆さん驚かれますね。完成した生地からは見えませんが、ここまで手間を掛けているブランドはあまりないと思います」

分析を進めると、生地の打ち込み本数にも違いが見えてきた。

「思っていたより打ち込みが甘かったんです。今の生地は丈夫にしようとするぶん硬くなりがちですが、当時のヘリンボーンツイルは、しっかりしているのに柔らかい。その風合いを再現したくて、打ち込み本数を約一割抑えています」

柔らかな穿き心地を支えるのは、打ち込みだけではない。米綿を採用し、素材から見直した。

「同じオンスでも米綿だとゴワつきがなくなるんです。デニムもチノもヘリンボーンツイルも、その考え方は同じです。生地としての強さは残しながら、当時の柔らかさを表現したかったんです」

経年変化を見据え、染色には当時と同じスレン染料を採用した。

「今の反応染料より色落ちはしやすいですが、その変化の過程も含めて楽しんでもらいたいんです。デニムのように激しく色が落ちるわけではなく、全体がゆっくりフェードしていく。そういう色の変化がヴィンテージらしい表情になると思っています」

さらにムラ糸を採用することで、穿き込むほど自然な表情が育っていく。

新作のモンキートラウザーズは、ヴィンテージを徹底解析し、糸からオリジナルで製織することで生地を忠実に再現。さらにスレン染料を採用し、ヴィンテージ個体が持つ色味まで追求した

「新品と比べると『こんなに色が変わっていたんだ』と気付くくらいが理想ですね。派手な色落ちではなく、気付けば自分だけの一本になっている。そういう育ち方を楽しんでもらいたいです」

だからこそ、目指したのは、ワザとらしく演出されたヴィンテージ感ではなかった。

「僕らが追いかけているのは分かりやすさじゃないんです。ヘリンボーンの柄を強調したり、生地感を大げさに見せたりするのではなく、実際に穿いて初めて違いが分かるような、本物らしい風合いを大切にしています」

コンバットミルズの根底にあるのは、ジェラードらしい視点だ。

「僕らはジーパン屋ですから。だからミリタリーだけで完結するんじゃなくて、色落ちしたデニムにもワンウォッシュにも自然に合うことを意識しています。ジージャンを着た時のバランスまで含めて考えています。それにコンバットミルズだけでなく、ワークカテゴリー(※ワーカーズクロス)もこれから広がっていきます。両方がそろうことで、ラストリゾートの世界観はもっと面白くなると思います」

こだわりは、生地だけでは終わらない。最後に後藤代表が語ったのは、一着一着が持つ《個体差》についてだった。

「僕らは、参考にした個体の癖をできるだけ拾うようにしています」

例えばチノパンでは、サンプルとなったヴィンテージと同じく、共生地のポケット袋布を採用。両玉縁の幅や運針、縫い代まで、その個体の特徴を落とし込んでいる。

「分解した個体がそういう仕様だったんです。だから、その特徴もそのまま採り入れました。仕様だけじゃなく、その一着が持っている雰囲気まで再現したいと思っています」

糸から生地、染色、縫製、そして個体差まで突き詰める。ラストリゾートで培ったものづくりは、コンバットミルズによってミリタリーという新たなフィールドへ広がっていく。

右側は新作のCM47HBTベイカーパンツ、左側はサンプルとなったヴィンテージ。糸から生地、染料に至るまで実物を再現するので、穿き込むほど色がフェードしていく設計である

S撚りとZ撚りの糸を識別するため、片方の糸を水洗いで落とせるピンク色で仮染めしたべレンス糸にして製織。織り上げた後に脱色し、本来の色で染め直す一手間を加え、同じ構造を再現する
JELADOがCombat Mills第一弾としてオリジナルで製織したヘリンボーンツイルは、ミリタリー特有の経年変化を味わえるように“育てる楽しさ”を意識したワンウォッシュカラーも展開されている
Combat Millsに統合された41カーキ。通常のポケットにはスレーキを使うのが一般的だが、サンプリングにしたヴィンテージと同様に、共生地のチノクロスをポケット袋布に採用する

1940年代の米陸軍M-47ベイカーパンツを分析してCombat Millsのヘリンボーンツイルは開発された。さらに生地構造だけでなく、運針やパーツの揺らぎなど、個体ごとに異なる“癖”まで再現

[Lot No_CT94347] CM47 HBT Baker Pants

Color_Olive, Navy
Price_¥36,300

毎シーズン展開してきたCM47を、「Combat Mills」第一弾として独自開発したヘリンボーンツイルに一新。1940年代に米陸軍が採用したM-47ベイカーパンツをデザインベースに、オリーブとネイビーの2色展開し、しっかりとした肉厚な生地感が存在感を放つ。

初期型の特徴である、ウエストサイドに設けられたサイドアジャスターを採用。サイドのカーゴポケットもあえて廃したすっきりとしたシルエットで、洗練されたベルトレスの着こなしも楽しめる。

【問い合わせ】
JELAD FLAGSHIP STORE
TEL03-3464-0557
https://jelado.com

この記事を書いた人
ADちゃん
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ADちゃん

ストリート&ミリタリー系編集者

Lightning本誌ではミリタリー担当として活動中。米空軍のフライトジャケットも大好きだけど、どちらかといえば土臭い米陸軍モノが大好物。そして得意とするミリタリージャンルは、第二次世界大戦から特殊部隊などの現代戦まで幅広く網羅。その流れからミリタリー系のバックパックも好き。まぁとにかく質実剛健なプロダクツが好きな男。【得意分野】ヴィンテージ古着、スケートボード、ミリタリーファッション、サバイバルゲーム
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