「G.B.ガファス」漆畑さんに聞く! いいメガネにはワケがある【一問一答】

高価格で高品質なメガネが優れていることは何となく分かるけれど、その理由を言葉にするのは意外と難しい。このモヤモヤを解き明かすべく、“いいメガネ”の詳しい背景について、渋谷の名店「G.B.ガファス」の漆畑さんに聞いてみた。

「G.B.ガファス」プレス・漆畑博紀さん|「G.B.ガファス」と「デコラ」のプレスを務めるほか、両店を運営する「グラッシーズ」の専務取締役。ファッションにも深い知見を持つ

基本のおさらい

  • 主なプラスチック素材

セルロイド
発火性が高く生産が減少傾向にある希少な素材。独特のぬめりと艶がある

セルロースアセテート
発火性が低く取り扱いが容易なため、現代では最も一般的なプラスチック素材

  • 主なメタル素材

サンプラチナ
美しい光沢を持つ希少な素材。近年はチタンの方が主流

チタン
メタル素材のアイウエアの大半はチタン。軽くて丈夫で錆びにくい

素材編

セルロイドはなぜ希少なんですか?
燃えやすいので扱いが難しく、加工に高い技術が求められる素材なので生産量が限られています。また、原材料の価格の高騰も理由です。それでも、特有の肌触りや美しい光沢を持つ“ロマンのある素材”として根強い人気がありますね。
生地が厚いと、その分価格も高くなりますか?
単純に生地価格が上がるだけでなく、生産過程で曲げや磨きに時間を要すること、重量が増すことによって掛け心地に影響が出ないよう全体のバランスを考慮した高度な設計が求められることでコストアップにつながります。

同じアセテートのなかでも違いはあるんですか?
色や柄などによって加工の手間や技術が変わるため、価格が変わってきます。また、右記したエコ素材のアセテートは生産方法や原材料が一般的なセルロースアセテートとは異なるので高価になりますね。

【 エコ素材のアセテート「バイオアセテート」 】
木材パルプやコットンリンターなどの天然由来セルロースを原料とし、最終的に自然に還っていく生分解性を持つ、環境に優しい次世代のプラスチック。 高い透明度や美しい発色に加えて、肌なじみがよく軽量で掛け心地が良い。やや張りがあって硬いので、衝撃に強く変形しにくいのが特徴。

プラスチックやメタル以外の高級な素材について知りたいです!
べっ甲や水牛などの天然素材があります。素材自体の価格+加工の難しさで、価格が上がります。アレルギーがほとんど起こらないので肌に優しく安全で、長く使うにはいい素材です。

べっ甲については、黄色や黒など単色のものが1番高価です。原料である亀の甲羅から、その色の部分だけを厳選してつないでいくので、柄の入ったべっ甲よりも加工に手間がかかるからです。

高級素材のサンプラチナって何がいいんですか?
まったりとした美しい光沢が1番の持ち味ですね。メッキを施さずに丁寧に磨くことで艶を出しており、プラチナのような輝きを楽しめます。メッキが剥がれるリスクがないので長く使えますし、硬めの素材なのでしっかりとした掛け心地を好む方にはオススメです。

レンズ編

レンズメーカーによって違いはありますか?
基本的な設計や性能に、メーカーごとの差はほとんどありません。今は調光機能などのコーティングが多様化しているので、そこで各メーカーの個性が出てきます。弊社でも扱っている〈ツァイス〉などの高級レンズメーカーは、最高級のコーティングが施されていることや、海外生産などによって高価格になっています。

ツァイス製調光レンズならではの青色!

価格はどのように決まりますか?
素材や薄さ、設計、コーティングの種類などで価格は変わります。特に高級レンズでは、ひとりずつの見え方に合わせて、光学設計(レンズの加工や調整によって見え方などを光学的に最適化する)を取り入れているものはより高くなりますね。
たまに聞くガラスレンズって何がいいんですか?
プラスチックに比べて傷がつきにくい、曇りにくい、透明性が高く視界がクリア、などメリットがたくさんある素材です。また、外部からの圧力による見えない歪みが生じにくいため光学性能にも優れています。

ディテール編

彫金が施されたメガネは他と何が違うんですか?
ひと手間をかける分、価格は上がります。既存の型ではなく自社で起こしたオリジナルの型を用いる場合や、精緻な彫金のために高性能な機械を使用する場合は、コストがさらに上がります。



ノーズパッドや蝶番などはメガネごとに違いがありますか?
掛け心地に影響が大きい部分なので摩耗しにくい素材を使ったり、ロゴデザインを配したりと、メーカー独自のこだわりがつまっており、価格にも影響してきます。

【 本カシメ 】

【 飾りカシメ 】

例えばカシメには、パーツ同士を固定するための機能を持った「本カシメ」と、見た目のアクセントとして施される装飾用の「飾りカシメ」があります。本カシメは手間がかかる分コストが高くなりますが、耐久性に優れ、ぐらつきにくいのが特徴です。

加工・製法編

アンティーク加工はどのように施されているんですか?
長年使い込んだようなムラや風合いを出すために、あえて擦って傷をつけたり、一度つけた色を削いだりする工程を手作業で行います。手間や時間がかかる分、価格は高くなります。

「G.B.ガファス」のオリジナルブランドである〈フィッシュ&チップス〉から約10年前に発売されていたモデル。すすを部分的に当てた後、あえて少し残るように磨きを施したり、表面に傷をつけたりすることで、美しいエイジング加工が施されている。

加工以外にメガネの価値を高めるものはありますか?
生産工程の中でも必ず手作業を要する磨きですね。丁寧さや回数によって仕上がりが左右されるため、手間がかかります。最終段階の細かい隙間の磨きは、やはり人の手でなければできない工程です。日本は磨きが丁寧で、「どこまで突き詰めて磨き上げるか」という、ものづくりに対するメンタル性が高いともいわれています。

10万円を超えるようなメガネは他と何が違うんですか?
メガネ自体の価格以外にも、意匠やパッケージ、ケース、クロスなど他のブランドと差別化を図るために作られた高級な仕様の付属品によって、価格が上がる場合があります。例えば、〈ジャックマリーマージュ〉の場合は、他のブランドに流出しない自社だけのオリジナル生地である「留め生地」を採用しているため、その分値段が高くなります。

15万9500円/ジャックマリーマージュ(G.B.ガファス TEL03-6427-6989)

よく耳にする「七宝」は本当に難しいんですか?
専門の職人が、色付けや焼き付け、研磨などの複数の工程を1本ずつ手で行う加工です。釉薬の厚みや乗せ方で仕上がりが変わるので、美しく仕上げるには高い技術と経験が必要です。

【 七宝加工とは 】
金・銀・銅などの金属素地にガラス質の釉薬をのせ、高温で焼成することで、鮮やかな色彩のガラス層を生み出す技法

【 七宝 】

【 セル巻き 】

七宝とセル巻きは、どちらもフレームに色や装飾を加えて見た目を華やかにする技法だが、仕上がりの表情は異なる。ガラスのような艶と発色が魅力の七宝に対して、セル巻きはフレームの周りに巻き付けたプラスチックの立体感のある表情と、メタルとのコントラストが魅力。

(出典/「2nd 2026年7月号 Vol.219」)

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