細かなパーツで極限の性能を引き出す
XR750のヘッドをアイアンスポーツの腰下に組み合わせ、生産されたXR1000はさまざまな欠点を抱えるのだが、ここに見るタペットおよびプッシュロッドまわりも、まさに典型的なウィークポイントといえる箇所だろう。
特にプッシュロッドはレーシングモデルゆえ、他車種と異なり、無調整の構造となっており、ロッカーカバー部のエキセントリックでタペット調整を行うのだが、プッシュロッドのボールエンドにガタがある場合、正しい調整範囲に収めることは不可能。ゆえにサンダンスではSCM415鋼材に浸炭焼入れを施したスペシャルボールエンドの開発に至ったのだが、こうした細かな箇所への着目は、まさにスペシャリストならではのものだ。
またそのプッシュロッドを受け止めるタペットにしても純正XRは薄く脆弱な作りなのだが、サンダンスではニッケルクロモリ鋼材を削り出し、“NOブロークン”タペットを開発。もともとタペットローラーの内側がすり減った際、純正にはないシムをセットし、再生させていた同社だが、それを進化させ、「タペットローラーのベアリングを保持しつつもオイルを浸透させるため」に独自の歯車型シムを採用。XRの構造と弱点を知れば知るほど唸らされる作りとなっている。こうした点も掛け値なしに流石である。
低抵抗&強化型“NOブロークン”XRスーパータペットキット

キャップと胴体がはめ込み式な上、薄い肉厚で破損が多い純正XRのタペットの弱点をすべて解消するスペシャルパーツ。一体削り出しクロモリ鋼を焼き入れ後、摺動部表面に硬質クロムを施し、他に類を見ない低フリクション化を実現する上、ローラー部にオイルを浸透させる独自の歯車型シムを採用。まさにXRを知り尽くした技術とアイデアが息づく。
浸炭焼入れSCM415鋼材製XR1000プッシュロッド・スペシャルボールエンド


劣悪なオイルの使用により左のように『玉ねぎ形』に摩耗することもある純正だが、浸炭焼入れSCM415鋼材を採用した右のサンダンス製はさに非ず。ロッカーカバー部のエキセントリックでタペット調整を行うXRにおいて正しいプッシュロッドのクリアランスを出すためにも、ここは交換必須のパーツである。
問題が山積する駆動系の改善策は
ここまでウンザリするであろう程にさまざまな問題点を挙げてきたXR1000というモデルだが、中でも致命的な欠陥といっても過言ではない箇所が、ここで見る駆動系にまつわる部分だろう。
特に代表的なものがクランクケース左側の鋳造段階で鋳込まれたスチール製のベアリングボス部とアルミ部の間にガタが生じてしまうという問題で、ここはプロショップですらも見逃しがちとのこと。ここが原因となり、なぜか反対側の(右ケース側)のピニオンシャフトが根元から折れるというトラブルが発生する症例が実に多いという。その対策に有効なパーツや修理方法は右で簡単にまとめているが、そのどれもに共通していえるのが、いずれにしても機械を機械として正しく捉え、弱点を解消・改善し、手を加えてやればXR1000という特殊なモデルでもより高いパフォーマンスと耐久性を両立するマシンにすることが可能ということ。今回はほんの一例の改善策を紹介したに過ぎないが、これらの技術の蓄積の結果、スーパーXRという世界に誇るべき名機が生まれた事実を忘れてはならない。
ハイテックプライマリーキット

引っ張り衝撃も少ない上、チェーンのようなアソビを必要としないシンクロフレックスベルトはクランクケース・ベアリングボス部のガタ対策としても絶大な効果を発揮。駆動重量を4kgも軽量化し、エンジンのレスポンスも確実に向上する。



根本的な問題を抱える4速スポーツの改善パーツも当然、サンダンスでは用意。メインシャフトにCrN処理を施した上でアルミビレットのシールカバーとし、カウンタースプロケットの固定スプライン部からのオイル漏れを未然に防止する“リークレス”は効果も絶大ゆえ掛け値ナシにオススメである。


ケース左側の鋳造段階で鋳込まれたスチール製のベアリングボス部とアルミ部の間に生じるガタは高強度のクロモリ製ノックピンを打ち込み、改善。見落とされがちな箇所だが、施工の効果は絶大だ。
(出典/「
text&photo/M.Watanabe 渡辺まこと 取材協力 サンダンスエンタープライス TEL03-5450-7720 https://www.sundance.co.jp/