技術の追求の果てに生まれる究極の4カム・ハーレーたち
今回、本誌では特集タイトルのとおり、さまざまな『4カムハーレー』に焦点を当てている故、ZAK柴崎という稀代のエンジニアの、こうした過去の功績を華々しく報じれば、きっと、その体裁も整うのだろうが、しかし本懐は決してそうではない。彼が極限のフィールドに求めたのは、あくまで公道を走るすべてのユーザーへ技術を還元するためであり、いわば「走る実験室」としての実践だ。故に「個人的にはスポーツスターもビッグツインにも垣根はない」ともZAK柴崎氏は常々言う。
「もちろん、4カムハーレーという素晴らしいバイクがあったからこそ、D・オブライアンやR・レイマンなどの先人たちが伝説を残し、ハーレーのイメージを牽引してきたし、自分もレースの世界に身を投じたからこそ、今があることは自覚しているよ。特にXRのエンジンは、内部を徹底的に検証する中で“このパーツはこう改良しよう”とか“ここは別の設計にすべき”というさまざまな気づきが必然的に生まれたし、それが今のサンダンスの“もの創り”にもつながっている。実際、スーパーXRの誕生は純正用の強化対策パーツを作っていったことがキッカケなんだけど、そもそも発想を得たのはアメリカでH-Dレーシングのレジェンドである彼らと交流をもち、その中でアイデアが沸き起こってきたからなんだ」。
1995年、3月──ZAK柴崎氏はパーツを日本から運び、一人でデイトナの地にてスーパーXRの1号機を組み、火を入れ、産声を挙げさせたのだが、それはH-Dレーシングの先人たちへの敬意と技術を伝承し、それを発展させていく意思の表明に他ならない。
「でもレースを始めてデイトナに挑戦して、勝つまでは正直、地獄のような日々だったよ。そんな極限状態の中で“何をどうすればいい”“どこまでいけるか”と考え抜いたからこそ、あらゆるアイデアが脳内に蓄積されていったんだ。もちろん、レースで得た安全性や強度に関するデータは、そのままビッグツインにも応用できる。本筋にあるのはお客さんが路上で乗るハーレーだからね」と彼。
サンダンスがレースの世界から身を引いて既に20余年が経過しているのだが、いまだ強烈に、その残り香を感じさせるのは、きっと対峙する姿勢の実直さの中にある。
そう、ただサーキットに並ぶだけでは、このページを飾るマシンたちと同じ空気はまとえない。

サンダンスエンタープライズ代表・柴崎‘ZAK’武彦氏|1982年にサンダンスを創業して以来、機能性に富んだオリジナルパーツや独自設計のエンジンを生み出し続けてきた、世界のH-D史に名を残す人物。4カムH-Dのみに焦点を当てたこの特集を見るだけでも、その計り知れない功績の一端が伺えることだろう。
1987年のBuell RR1000がレースへ挑戦する起点

1987年に登場した“ビューエル”の日本総代理店となり、その開発に携わる流れから極限の戦いに挑むこととなったサンダンス。XR1000のエンジンを搭載した“RR1000”が、後にスーパーXRへと続く起点か。

1988年にEVOスポーツスターエンジンとなったビューエルRR1200が登場し、実験的に1600ccストローカーエンジンのマシンを製作。回転型のXRに対して、あえてトルク型のテイストを与え、H-Dの可能性を探求する。
デビュー戦、日本のBOTTにてポールポジションを獲得

あらゆる面で欠陥だらけだったといっても過言でないRR1000を戦闘的なレーシングマシンへと仕立て上げ、1988年、ついに実戦へと投入。同年、日本のBOTTのMT(モデファイド・ツイン)クラスにてポールポジションを獲得し、デビュー戦で2位の結果を残す。
筑波BOTT参戦、2年目でMT-1クラスを制覇


ドゥカティやモトグッチ、BMWなどの欧州車勢を向こうに回し、筑波BOTT参戦2年めでMT-1クラスで優勝。翌年から最高峰のET(エキスパートツイン)クラスへの出場となったサンダンス。この時代は「H-Dワークスのエンジンを搭載している」とやっかみから、あらぬウワサを立てられたそうだが、逆説的に言えば、当時からそれほどの速さを見せつけていたといえるだろう。
サーキットでの経験が息づくストリートレーサー

初年度にわずか40台ほどが生産されたビューエルRR1000だが、サンダンスがレースでの経験を活かし、90年代初頭に改善を試みたのがコチラの1台。エンジンからの発熱を封じ込めるノーマルの外装を排除し、新たに与えられたデザインはレーサー、“ザ・ウェポン”を彷彿とさせるもの。今、見てもクールなスタイルだ。

1992年から米国、フロリダ州にある“デイトナ・スピードウェイ”に挑み、1998年に勝利した“デイトナウェポンI”と、同年に国際耐久選手権である“鈴鹿8耐”に参戦し、ゴールチェッカーを受けた“II”は、まさに日本が世界に誇るべき4カムハーレーの頂点。その驚愕のメカニズムとパフォーマンスをこのスペースで語ることは難しいが、ご安心あれ。本誌Vol.296の54ページから大々的に、この2台を特集しているので、ぜひバックナンバーを参照してみてほしい。
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