XR1000を“Super”にするサンダンス流・改善術!

創業6年後の1988年から「レーシングプロジェクト」の旗印のもと、過酷なサーキットでさまざまな技術に挑み、それを蓄積してきたサンダンスだが、ここからは、後の傑作「スーパーXR」へとつながる究極のXR1000改善術を内部パーツを中心にレクチャー。同社が誇る至高のエンジニアリングに、今こそ刮目してほしい。

XR1000のアキレス腱、 ロッカーまわり を改善、強化する

この記事では、サンダンスのレース活動と、そこで培った技術をストリートへ還元してきた歴史を駆け足で紹介させていただいたが、ここからは、その礎を築いたといっても過言ではない「XR1000」への対策と改善策をお伝えしていこう。

1984年、レース(米国BOTT)出場のホモロゲーションをクリアすべく市販化され、1700台弱が生産されたXR1000は、アイアンスポーツスターの腰下にレーシングマシンXR750のヘッドを組んだ特殊な構造ゆえ、実はさまざまな問題を抱えているのだが、その最たる箇所こそが、まずはここで焦点を当てるロッカーまわりである。

XRのロッカーアームおよびシャフトは、もともとレース用だったため、慣らし運転を省略する目的でベアリング軸受け方式を採用しているが、しかしこの構造は、使用部位の特性上、常に同じ方向へ大きな負荷が掛かり、結果としてベアリングシェル自体が粉砕してしまうトラブルが多発する。それを劇的に改善するのが、この「軸受けのブッシュ化」というアプローチである。

サンダンスではここを特殊ブロンズ材のブッシュに打ち替えて対応しているのだが、これにより、優れた耐摩耗性と長寿命化、さらにオイルのフローティング効果によるノイズ減少を得られるのが大きな利点。その理論を簡単に説明すると、ベアリング式がローラースケートのような「接触による回転運動」だとすれば、ブッシュ式はアイススケートのような「非接触潤滑方式」。この構造的な違いを考えれば、その効果の差は一目瞭然だ。

さらにサンダンスでは、このロッカーまわりに施す「T-SPEC処置」として、オリジナルの治具を用いて正しいロッカージオメトリーを算出し、再製作しているのだが、これはノーマル状態でも、レース使用を想定して接合改造されたロッカーアームを採用するXRの設計ゆえ。ベストな位置関係でロッカーアーム、バルブ、プッシュロッドが配置されるよう「改造されること」を前提としたXRでは必然の工程なのだが、プロでもこの本質を認識している人は少ないという。

ちなみに、このロッカージオメトリーを簡単に説明すると、「カムによる回転運動から変換された往復運動を、プッシュロッドを介してバルブへと伝える方向変換機構(ロッカーアーム)の角度を、いかに効率よく開閉するようにレイアウトするか」というもので、実際にそのジオメトリーを割り出し、作業をするとなれば、専用の治具や機器の製作は絶対条件。さらにはロッカーアームの切断加工や低温溶接などの難作業が要求されるため、一般的にはまったく手をつけられないままチューニングが行われていることも多いそうだが、しかし、効率の良いOHVエンジンを作る上では、このように正しいジオメトリーの算出が必要不可欠であることは言うまでもない。

OHVエンジンのバルブ長やプッシュロッド長、ロッカーアームの軸位置は当然、適当に決められたものではなく、すべてが一つの法則に基づいており、まず1シリンダーの排気量と目的に応じた回転数を決め、それに適したバルブ径やリフト量をフローベンチテストで算出し、さらに使用回転数やロッカーボックスのスペースといった妥協点から、ロッカーアームの比率が決定するのだが、こうしてカムのリフト量とタイミングが導き出されて初めて、正しいエンジン設計となることを忘れてはならないだろう。

XR用ブロンズロッカーアームブッシュ

施工後は少しの慣らしが必要になるものの、絶大な効果を発揮するのが軸受けをベアリング式からブッシュに変更したロッカーアーム。特殊ブロンズ材ゆえ耐摩耗性と静粛性にも優れる。

正確なロッカージオメトリーをエンジンごとにオリジナルの治具で測定し、理想のブッシュ式ロッカーアームをオーダーメイドで製作。これもサンダンスの流儀である。

慣らしを必要としないベアリング軸受けロッカーアームという構造ゆえ、このようにベアリングシェル自体が粉砕してしまうのもXRの泣きどころ。ここは改善策が有効だ。

ロッカーアーム軸を中心に左右の長さの比率が1.5対1となる例。ここを仮に12㎜のバルブリフトのカムとすると、それの半分である6㎜リフト時にロッカーアームとバルブは一番作動量の効率が高い直角に交わり、反対側のロッカーアームとプッシュロッドも同じく90度で交わらなければならないが、量産のロッカーアームはそのような都合の良い角度には仕上げられておらず、必然的に改造を施さざるを得ないのが現実だ。

この記事を書いた人
CLUB HARLEY 編集部
この記事を書いた人

CLUB HARLEY 編集部

ハーレー好きのためのマガジン

ブランドとしての知名度が高く、独自のアパレルにもファンが多いハーレーダビッドソンは、バイクにあまり馴染みのない『ごく普通の人』にも大変な人気を博しています。バイクの知識がない人はもちろん、今日ハーレーのことが気になり始めた人、そしていまハーレーが好きで好きで仕方ない人たちも満足のいく情報を詰め込んだ雑誌が『クラブハーレー』です。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

記念すべき第1弾の革をモヒカン小川がプロデュース! AJLP活動報告。

  • 2026.09.01

ALL JAPAN LEATHER PRODUCT。略して「AJLP」なるビッグプロジェクトの活動報告。国産の原皮=地生(じなま)にこだわり、鞣しから縫製まですべてを日本で行う“オールジャパン”に価値を見出し、そのクオリティや魅力を伝えるべく動き出した革のプロたちのリアルドキュメンタリーである。同プ...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

70を超えるレザーブランドが集う! 「Leathers Day TOKYO 2026」が五反田TOCビルで9月26・27日開催!

  • 2026.08.30

雑誌『Lightning』と兄弟誌『2nd』『CLUTCH Magazine』の3誌による、レザー好きのための大規模イベント。4度目を迎える今年は、初の東京会場での開催が決定! 普段なかなか手に取って実物を見ることができないブランドや、このイベントでしか手に入らないアイテムが揃う特別な2日間。さらに...

「VINTAGE PEANUTS」が約10年ぶりに復刻! 「ウエアハウス」の新作Tシャツ一挙見せ!

  • 2026.09.08

ミクロレベルまで研究し、古着と見間違うほどのプロダクツを現代に蘇らせるウエアハウス。当時の生産技術や時代背景までも丁寧に掘り下げられて完成した服は、限りなくヴィンテージに近い存在だ。そんな彼らが生み出す服こそ、オーセンティックと呼ぶにふさわしい。 装いのアクセントにユニークなTシャツを! ウエアハウ...

Pick Up おすすめ記事

「VINTAGE PEANUTS」が約10年ぶりに復刻! 「ウエアハウス」の新作Tシャツ一挙見せ!

  • 2026.09.08

ミクロレベルまで研究し、古着と見間違うほどのプロダクツを現代に蘇らせるウエアハウス。当時の生産技術や時代背景までも丁寧に掘り下げられて完成した服は、限りなくヴィンテージに近い存在だ。そんな彼らが生み出す服こそ、オーセンティックと呼ぶにふさわしい。 装いのアクセントにユニークなTシャツを! ウエアハウ...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

記念すべき第1弾の革をモヒカン小川がプロデュース! AJLP活動報告。

  • 2026.09.01

ALL JAPAN LEATHER PRODUCT。略して「AJLP」なるビッグプロジェクトの活動報告。国産の原皮=地生(じなま)にこだわり、鞣しから縫製まですべてを日本で行う“オールジャパン”に価値を見出し、そのクオリティや魅力を伝えるべく動き出した革のプロたちのリアルドキュメンタリーである。同プ...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

上海発・気鋭のアメカジブランド「REAL SIMONS」を知っているか?

  • 2026.08.30

近年アメカジが流行し、大きな発展を遂げている中国。同国で1984年に創業したレザーウエア工場の生産背景を元に2017年に始動したのが「リアル シモンズ」だ。ヴィンテージピースを現代的に再構築した高品質なプロダクトを手がける気鋭のブランドである。 元々は皆さんと同じ『Lightning』の読者だったん...