代表モデル[101]誕生から100年。西部神話とリアルが生んだジーンズ「Lee」とはどんなデニムなのか?

西部劇に象られた神話のカウボーイ像と、リアルなワーカーの声から生まれたディテール。ヒップポケットやスレッドリベットに込められた工夫は、100年の歴史を経ても色あせない。単なる作業着を超え、アメリカ文化の象徴として私たちの心を捉え続ける「リー」について「エドウイン」クリエイティブディレクター・細川秀和さんに伺う。

「エドウイン」クリエイティブディレクター・細川秀和さん|1990年株式会社エドウイン入社。翌年からLeeブランドに携わり、30年以上のキャリアを持つ。The Archivesシリーズの立ち上げやAmerican Ridersシリーズなどのロングセラーを数多く開発した

本物と憧れの狭間で魅力を育てる。

カウボーイが穿いたデニムは数多く存在する。だが、カウボーイのために生み出されたデニムとなれば話は別だ。「リー」は、数あるアメリカのデニムのなかでも、とりわけ西部との結びつきを色濃く宿す存在である。

その象徴が1925年に誕生したモデル「101」。以来100年にわたり、カウボーイやロデオライダーと共に歩み続けてきた。「リー」の歴史は、単なる作業着の系譜にとどまらず、アメリカ文化そのものと交差し、民衆の心に刻まれてきたのである。ブランドの歩みについて、クリエイティブ・ディレクターを務める細川秀和さんに伺った。

「まず、カウボーイの本来の定義についてお話しします。もともとカウボーイというのは南北戦争後、1800年代終わりのゴールドラッシュ期に入植してきた人たちが、野生のテキサスロングホーンという角の長い牛を捕まえて鉄道駅まで運ぶ。いわゆるロングドライブをしていた人々のことを指します。現代の一般的なカウボーイ像は西部劇に出てくる格好いい存在を思い浮かべますが、実際は自然の中で何日も暮らし、風呂にも入らず、下着すらつけていないような非衛生的な人たちでした。当時は全盛期で10万人ほどの人口がいたそうですが、鉄道の発達によってその職業は衰退し、『リー』の[101]が生まれる1925年には本来の意味でのカウボーイはすでにいません。

彼らは牧場で牛を飼育する“ストックマン”という職業へと移り変わっていったのです。1920年頃、数万人規模のカウボーイやストックマンを相手にデニムを売るのは、冷静に考えれば難しい商売です。それでも『リー』とカウボーイの結びつきが強く語られるのは、当時のアメリカの潮流に理由があります。映画などの娯楽や流行の中心にあったのが西部劇であり、本来のカウボーイではなく、神格化されたヒーローのような姿が描かれることで、憧れの象徴として広まっていった。そうした世間のカウボーイ像を利用したマーケティングによって成功したのが『リー』なのです」

ロデオボーイやストックマンといったリアルなワーカーたちに、馬に乗る際のデニムの問題点を聞き取りながら生まれたものが[COWBOY PANTS]。当時の憧れであった“映画の中のカウボーイのためのデニム”という打ち出し方がマーケティングとして大きな成功につながった。

「本物のロデオマンやストックマンから話を聞くなかで、ディテールはどんどん本物志向へと変わっていきました。例えば、ヒップポケットの金属製のリベットは、馬に乗ったとき鞍を傷つけるためX型のスレッドリベットと呼ばれるクロスステッチに変更。ヒップポケットの位置も鞍に座ることを想定し、外側に大きくずらされるなど、リアルな仕様へと進化していったんです。こうした積み重ねがあったからこそ、西部劇に憧れた人々が『リー』を選ぶようになったのです。

こう聞くと“実際には本物のカウボーイが使っていたわけではないのか”と残念に思う方もいるかもしれません。しかし私はむしろ巧妙で斬新だと感じますし、『リー』の懐の深さを強く感じます。当時デニムを穿いていた主要な職業は鉄道従事者やストックマンであり、そこまでの機能は必須ではなかったかもしれません。ですが『リー』はあえて機能を削らず、魅力として打ち出した。その結果、人々は“映画で観た憧れのカウボーイのためのデニム”として購入していったのです。

重要なのは、ただ売れたことではなく、リアルさを追求した先に人々から求められたという点なのです。『リー』とカウボーイの関係性とは、実はマーケティングの上手さによって築かれたもの。私たちが先人たちの遺したものに憧れるように、当時の人々も過去に憧れていた。そうした背景を知ると、『リー』のアイテムはより一層面白く見えてきますよね」

当時の広告のヴィジュアルはイラスト、写真問わず両方ともにカウボーイやストックマンといった男たちが描かれている

歴史を感じる、[101]復刻モデル3選

The Archives RIDERS 101-Z 1948Model

実在したアーカイブ品を完全復刻するライン「The Archives」。1948年に作られたアーカイブを元に、タグや縫製に至るまで忠実に再現した1本となっている。2万8600円

The Archives RIDERS 101-Z 1954Model

1954年のアーカイブを再現したモデル。ウエストの縫い方が現代とは縫製が違う為、内側から見るとベルト部分から落ちている、細川さん曰くその不完全さが魅力なのだそう。2万8600円

The Archives RIDERS 101-Z 1962Model

1962年のアーカイブを復刻したモデル。この年代となると、織機が新しいものに変わり、より幅の広い生地を織れるようになったことから片耳のものが増えてくる。2万8600円

あなたは知ってる? Leeが築いた3つの功績とは?

1913年 ワークウエアの金字塔[ ユニオンオールズ ]。

当時、自動車は現在ほど信頼性が高くなく、運転手が自動車整備士を兼ねることも多かったため、車の下に潜る際に服が汚れる問題が頻発していた。オーナーH.D.リーのお抱えドライバーが整備時に制服が汚れないよう上着を脱ぎ着している姿を見て、H.D.リー本人が工員にとって理想的な機能するワンピースの開発を提案したことがきっかけとなり、ワークウエアでは世界初となるワンピースカバーオール[Union-Alls(ユニオンオールズ)]が誕生する。その革新的な一着は瞬く間に労働者に支持され、作業着の新たな基準となり、数年で全米の自動車に常備されるほど普及したのである。

1924年 カウボーイのためのパンツを開発。

実際に牧場で働くカウボーイや、ロデオ競技のチャンピオンたちの声を反映して誕生したのが、後に名を馳せる[COWBOY PANTS]である。日常的に馬に跨り、ハードな環境で酷使されることを前提に、従来のワークパンツでは補えない改良が重ねられた。当時主流だった銅リベットを廃止し、馬や鞍を傷つけないように配慮したステッチ補強へと進化。馬上での動きやすさを考慮し跨ることを前提とした型に設計されている。[COWBOY PANTS]は、やがて[Lee Riders]という名を変えブランドを象徴する定番モデルとなっていったのだ。

1927年 ジッパーをデニムに初めて取り入れた草分け的存在。

デニム生地の作業着の開閉にはボタンが当たり前だった頃、「Lee」はデニムのオーバーオール、プレイスーツ、カウボーイパンツ、カバーオールに世界初の「ファスナー」を採用する。ファスナーは便利だが、デニムの縮みとの相性が悪くヨレてしまうことから敬遠されていた。そこでサンフォライズド加工を施した生地を採用しデニムの作業着にファスナーをつけることに成功した。「Whizit(ウィズイット)」というモデル名は新モデルの名称募集コンテストで選ばれ、1927年の全国コーンハスカーズ大会では入賞者10人中8人が着用していたほど人気を博したという。

(出典/「Lightning 2025年10月号 Vol.378」)

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なまため
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なまため

I LOVE クラシックアウトドア

1996年生まれ、編集部に入る前は植木屋という異色の経歴を持ち、小さめの重機なら運転可。植物を学ぶために上京したはずが、田舎には無かった古着にハマる。アメカジ、トラッド様々なスタイルを経てアウトドア古着に落ち着いた。腰痛持ちということもあり革靴は苦手、持っている靴の9割がスニーカーという断然スニーカー派。
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