フォードで解説!戦前のアメリカが生み出した、ホットロッドというスポーツカー文化。

  • 2023.02.21  2020.11.22

GMがコルベットの生産を開始する20年以上も前から、アメリカにはホットロッドと呼ばれるスポーツカー文化があった。近年、日本でもポピュラーになりつつあるホットロッドの魅力について、異なる3つのスタイルを参考にして掘り下げてみよう!

お話を伺ったのは……「J MORTOS」代表・瀬法司敏功さん

ホットロッドを始めとするアメリカ車のスペシャリスト。古着やヴィンテージトイなど幅広い趣味を持ち、チワワとポメラニアンを飼う愛犬家という一面もある。

「ホットロッド」とは、大衆車を改造して速くしたスーパーカーである。

第二次世界大戦以前のスポーツカーといえば、ヨーロッパではイタリア、ドイツ、英国など、すでに市販車として登場していた。しかしアメリカでは’54年にシボレー・コルベットが生産を開始するまでスポーツカーは市販されていなかったのだ。

’30年代からカリフォルニアのドライレイクではスピードトライアルが盛んに行われていて、このレースに出場していたのは基本的にお金がない若いガレージビルダーたち。それだけに安価で手に入る旧い中古車をベースに、エンジンをホップアップ(いわゆるチューニング)したり、フェンダーなどの不要なパーツや装飾品を取り外してボディを軽量化し、スピードを競い合った。

これが戦後のカリフォルニアを中心に盛んになっていったホットロッドのルーツであり、端的に言えば、大衆車を改造して速くしたのがホットロッドであり、これこそが戦前にアメリカ人が生み出したスポーツカー・カルチャーというわけだ。

ベース車といえば、戦後安価で手に入ったフォードのモデルTやモデルA。

当時、大衆車の代表で爆発的に売れたモデルTやモデルAなどのフォード車は、当然ながら中古車として出回る台数も多く、10代の若者でも安く手に入れることができたため、ホットロッドといえばフォードという図式ができた。つまり戦前のアメリカでは、大衆車だったフォードがスポーツカーだったというわけだ。

こうしてホットロッド・カルチャーは徐々に盛り上がり、次第にパーツメーカーというものが登場。エンジンを高性能化するためのアフターマーケット・パーツが市販されるようになり、’40年代から数々のパーツがリリースされた。

そして半世紀以上経った今でも、このホットロッドというカルチャーは生き続け、アメリカはもちろん世界中で愛されている。もちろん日本も同様で、ホットロッドがホビーとして確立している。

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2023年02月21日

スタイルの違う、3台のフォードのホットロッドを拝見!

実際のホットロッドを見てみよう。ここに紹介する3台のフォードも日本を走っているホットロッドで、横浜のJモータースが製作し、普段の足として使えるようにキッチリ整備されている。それぞれスタイルが異なる3台で、’50年代のフラットヘッド(サイドバルブ)エンジンを搭載したトラディショナル・スタイルの車両から、新しいOHVエンジンを搭載したエアコン付きのストリートロッドまで揃えてみた。

【1932 FORD ROADSTER】誰もが憧れるホットロッドといえば、1932年フォード=デュース。

「HOT ROD CUSTOM SHOW 2012」でベストオブショーを獲得した1932年フォード・ロードスター。1932年のフォードは初めてV8エンジンが採用され、しかもたった1年しか生産されなかったこともあって『デュース』の愛称で呼ばれ、フォードの中でもスペシャルな位置づけとなっている。この車両はBrookville製の新品リプロダクション・ボディを使った、言うなれば新車のデュースで、前後にキャストアルミニウム製の18インチ・ホイールをセットしている。

フラットヘッド(サイドバルブ)をOHV化するアーダンOHVコンバージョンヘッドをインストールした当時のハイスペックなエンジン。初めてOHVが市販車に使われ始めた’50年代に、中古のフラットヘッドをOHVに改造できるようにしたアフターマーケット・パーツがアーダンだ。さらに、このエンジンンはスーパーチャージャーも搭載している
今はなきアメリカの高級車ピースアロウの’30年代のインストゥルメントクラ スターを使い、スチュワートワーナーのメーターをセット
ステアリングウィールは、ホットロッドのアフターマーケット・パーツで今でも人気の高いBELLスタイル
インテリアをリアル・タンレザ ーで張り替え、アルミ製のボマー(爆撃機)シートをセット。 大人の雰囲気が漂う

▼細かなスペックはこちらの記事で紹介!

フォード デュース ロードスターをショーアップしたホットロッドが最高にカッコいい!

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2023年02月21日

【1932 FORD 5WINDOW COUPE】新品エンジン、ディスクブレーキ、エアコン、現代車なみに快適仕様のホットロッド。

デュース・クーペと言えば誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。映画『アメリカン・グラフィティ』でお馴染みになったホットロッドの王道。このデュースは’32年のオリジナル・ボディを使ったルーフをチョップしていない貴重な一台で、もともと’70年代に製作された車両だ。これをさらに手を加えてレストアし、エンジンやブレーキ、エアコンなど、快適仕様にアップデートしている。こちらのデュース・クーペは取材時1200万円で発売中であった。

ノンチョップのルーフに、オリジナルのデュース・グリルや前後フェンダーなど、オリジナルを尊重したデュース・クーペ
インテリアはシート、ドア内張りともに上品なブラウンのレザーで統一し、見 えないようにオーディオも装備。ステアリングは、ライムワークス製の’40フォード・スタイルをセット
エンジンはOHV 351 V8で、フィン付きのアルミ製バルブカバーをセット。キャブレターはホーリー4バレル。そして注目すべきはエアコン付き。ステンレスのヘダースもワンオフで製作
下周りも足周りなどすべてアップデートしているため、まるで新車のようにクリーン。デフはOHVエンジンに合わせてヘビーデューティーな9インチ

【1929 FORD MODEL A ROADSTER】戦前の1939年から製作がスタートし、今も日本で進化し続けるホットロッド。

このモデルAロードスターは、1939年にビルJベアーというホットロッダーが製作を開始して戦後に完成し、以後64年間所有していたヒストリーを持っている。そんな歴史あるホットロッドをレストアし、さらに日本で手を加えながら乗られている一台だ。もちろん先人へのリスペクトを込めて、なるべく原型を崩さないようモディファイしており、今年はワンオフのアルミ製エンジンフードを追加して、製作開始から80年経った今も進化し続けている。

Vウインドシールドは’50年代から付いているもので、ステアリングは’39年のバンジョータイプ。クラスターやメーターも’50年代製をセットする
エンジンはフラットヘッドV8で、日本でリビルトして換装した
’50年代に作られたシートやドアの内張りはボロボロだったため、当時の写真を見ながら、レザーを染めて再現

日本で乗ることは可能?

ここで「エンジンが新しいならともかく、’50年代(70年前)のエンジンで、現代の日本で普通に道路を走れるの?」と思った読者は多いだろう。そこで実際のところどうなのか、ホットロッドを数多く扱っているJモータース代表の瀬法司さんに聞いてみた。

「ちゃんと整備すれば高速道路でも現代車を追い抜けるほど速い。もちろん最新のスポーツカーと比較したらメーター上のスピードは劣りますが、体感速度やドライビングプレジャーは、ホットロッドでしか味わえないプリミティブな楽しさがあります」

しかも’50年代のエンジンとはいえ、フラットヘッドは部品点数が少ないぶん丈夫で、V8で排気量も大きいだけに、パワー、トルクともに申し分なし。むしろ独特の加速感は他のどのクルマでも味わえない迫力があり、ドラムブレーキなどに慣れてしまえば普通に走れるというから驚きだ。

「新しいOHVエンジンを搭載したホットロッドは、ATミッションでディスクブレーキ、しかもエアコン付き。屋根もあるから乗り味は現代車と変わりません。むしろベースが戦前のクルマだと考えれば物足りなさを感じるぐらいかも(笑)。それぐらい誰でも普通に乗れちゃいます」

’50年代のプリミティブな乗り味を楽しむか、現代のテクノロジーで快適に乗るか、ホットロッドというカリフォルニアが生んだスポーツカーの楽しみ方は人それぞれ。それに対応する、様々なスタイルを生み出してきたホットロッドという乗り物の歴史の長さと懐の深さも大きな魅力といえる。

【DATA】
J-MOTORS
神奈川県横浜市青葉区市ケ尾町745
TEL045-979-3901

ヴィンテージ・アメリカンカーがメインのスペシャルショップだが、欧州車から国産旧車まで、車種や年式を問わずお客さんのニーズに対応。東名の横浜青葉インターから近いので、クルマでのアクセスも便利。

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2023年02月21日

(出典/「Lightning 2020年2月号 Vol.310」)

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