夢のゲーセンを個人所有! ナツゲーミュージアム探訪

見てみ、この部屋いっぱいのゲーム機! しかも、ピンボールを除いたすべてが個人の所有物!! ゲーマーなら誰もが夢見る、“ゲーセン部屋”。その無謀な夢をとんでもないスケールで叶えた、ナツゲーミュージアム館長に話を訊く。

ゲームも好きだけど、みんなで楽しんでる風景が好き

2010年1月、東京・千代田区岩本町に80年代アーケードゲームが遊べる「ナツゲーミュージアム」がオープンした。その後、神田佐久間町に移り約9年間ゲームセンターとして営業。閉店後、稼働していたゲーム機は関東近郊の某所で大切に保管されている。この倉庫は「ナツゲーミュージアム」の呼称を継承しており、倉庫の一角に作ったプレイルームを今後イベントの企画に役立てる予定だ。この膨大な筐体がすべて個人のコレクションと言っても、誰も信じまい。

倉庫には、かつては多くのゲーマーを夢中にさせた人気マシンが、所狭しと並べられている。イベントやナツゲーミカドに提供される際は、メンテナンスされて往時の輝きを取り戻す

ナツゲー館長(本名非公開)はオレたちより少し年上。80年代前半に起きた、ゲームセンターブームの直撃世代。あの頃の熱狂や興奮が忘れられず、1台のゲーム機を購入したことから、すべての物語が始まっていく。

「僕が30歳の頃、最初に買ったテーブル筐体が『ドンキーコング』。そこから好きなゲームの基板を買って、一人で遊んでいたんです。筐体や基板が増え始めた頃、知人のビルのフロアが空いたので、倉庫代わりに借りたんです。すると、“風営許可が取れる”というのでゲーセンとしてオープン。ゲーム誌でレトロゲームが遊べることが取り上げられたことを機に、人が集まり始めたんです」

自分のために購入した筐体が増え始め、気づいたらゲーセンの店長になっていた

「今ゲーセンがどんどん減っているし、昔のゲームが遊べる場所がなくなってきたので『だったら、みんなで遊べる環境を自分で作ろう』と考えました。一人で遊んでいてもどこか寂しかったし、ゲームも好きだけどみんなが楽しんでいるのを見るの も好きだったんですね。やっぱりゲームはみんなでワイワイやった方が楽しいと思ったんです」

倉庫の一角に作られたゲーム部屋には、テーブルゲームや体感ゲームがズラリと並び、ゲームタイトルのポスターが貼られていて、この空間はまさに昭和のゲーセンそのもの。あの頃の記憶がフラッシュバックするのと同時に、懐かしさと興奮の感情が湧き上がってくる。

「小中学生の頃、ゲーセンに行くとおもしろいゲームがたくさんあって、それだけでワクワクしたじゃないですか? 今振り返るとあの頃から『いつか自分の好きなゲームだけを並べて、ミュージアムみたいなものを作れたら最高』という気持ちが漠然とあったんでしょうね」

レトロゲームを残すために若い世代への啓蒙を図る

大人になって夢を叶えた館長だが、「ナツゲーミュージアム」は夢の向こう側とも言える、想像以上の展開を見せてくれた。

「店内ではゲームコーナーの他に、サントラなどのレトロゲームグッズも販売していました。なかでもサントラ制作会社さんが作曲者の方と引き合わせてくださり、その流れで開催した開発当時のトークショーやサイン会は、お客様に大変好評でした。また、ハウステンボス(長崎県)から園内の『ゲームミュージアム』の企画のお話をいただき、ゲーム機の貸し出しという形で外部とのコラボも始まりました。

VS.システム(’84)|任天堂が発売したアーケードゲーム。向かい合ってのプレイが可能で、『VS.テニス』は最大4人で遊ぶことができた

その店内では、ナポリタンやクリームソーダのメニューがあってテーブルゲームの上で食べることもでき、昭和レトロブーム も重なって大きな話題になるなど思いもよらない展開を見せました」

2016年には、埼玉県が主催し、SKIPシティ映像ミュージアム(埼玉県川口市)で開催された「あそぶ!ゲーム展STAGE2」に、コレクションを貸し出している。

「イベントなどに協力するうちに、レトロゲームを残していくためには若い子に興味をもってもらわないといけないという気 持ちが芽生えてきたところに、『あそぶ!ゲーム展』のお話をいただきました。この展示ではゲーム機は飾られるだけでなく遊ぶこともでき、小学校の社会科見学のコースになっていました。

シェリフ(’79)|任天堂が発売したアーケードゲーム。町の保安官となって、侵入してくるならず者を撃退する。筐体のデザインは、『スーパーマリオブラザーズ』の生みの親でもある宮本茂

僕らの時代は、“ゲーム=悪”みたいなイメージがありましたが、学びの場としてとらえるところに時の流れを感じます。親子でいらしてそこに会話も生まれるなど、自分にとってもうれしく意義あるイベントでした」

こんなに楽しい場所があったことを伝えていきたい

現在、館長はゲーセンのカルチャーを知らない人に伝えることに積極的に取り組んでいる。

「最近はゲームメーカーさんからイベント協力依頼をいただくことも多くて、すごくありがたい。貸し出しする立場となると いろんな種類があった方がいいのでゲーム機は増える一方。倉庫に300台くらいあるんですけど、一人で遊ぶならこんな台数は必要ないですよ(笑)。

みんなが集まっていろんな音が鳴っているあの刺激的な空間を再現して『昭和の頃は、こんな楽しい場所があったんだよ』と、知らない人にも伝えていきたいという気持ちが今は強いですね。2021年には、ナツゲーミカドがオープンしています。私のコレクションを中心にかなりの台数のレトロゲームをそろえていますので、昭和50年男の皆様ならきっと楽しめるはずです」

スペースハリアー(’85)|セガ・エンタープライゼス(現・セガ)が発売した擬似3Dシューティングゲーム。操作に合わせて筐体全体がダイナミックに可動する
山のぼりゲーム(’81)|こまやより発売されたエレメカ式ゲーム。「すすむ」「もどる」のボタンで障害をよけながら頂上を目指す
パックマン(’80)|ナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)が発売。発売初期はパックマンを「PUCKMAN」(後 にPAC-MANに変更)と表記していた

アフターバーナー(’87)|セガ・エンタープライゼス(現・セガ)が発売した体感ゲーム。スロットルレバーと2つのボタンで最新鋭戦闘機F-14トムキャットXX(ダブルエックス)を操作し、敵機を撃墜するのが快感だった
タクシー(’88)|アメリカのウィリアムス社(現・WMS インダストリーズ)が発売したピンボール。ゴルビー、マリリン、ドラキュラ、サンタといった世界のVIPを乗せて進む
バーチャコップ(’94)|セガが発売したガンシューティング。犯罪都市バーチャシティの警官となり、悪党を銃で倒す

【DATA】
ゲーセンミカド× ナツゲーミュージアム in白鳥会館
ゲーセンミカドとナツゲーミュージ アムがコラボした、80年代ビデオゲーム、エレメカ、ピンボールが稼働しているゲームセンター。
東京都新宿区高田馬場4-8-8
@natsugemikado

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「昭和50年男 2023年5月号 Vol.022」)

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