「プリクエル」と「カマクラクラシックス」の両ブランドのリーダーはシャツをどのように作っている?

ヨーロッパのヴィンテージをベースに、独自の物語性と生地開発で服作りを行うプリクエル「プリクエル」とアメリカ東海岸のアイビースタイルを、日本の職人技で再構築する「カマクラクラシックス」。両ブランドのリーダーは、どのようにシャツを作っているのか? その頭の中を覗き見る!

左/「カマクラクラシックス」企画部・須田滉介さん|日本の新しいアイビー像を目指す「カマクラクラシックス」の若きリーダー。映画やジャズなどカルチャーにも造詣が深く、サックス演奏も嗜む

右/「プリクエル」デザイナー。西嶋秀浩さん|「オルゲイユ」のディレクターを経て、現在は自身のブランド「プリクエル」とファブリックブランド「フォーリー」の両方のデザイナーを務める

当時の生地見本帳と、映画・書籍が着想元

——それぞれが“シャツ”というアイテムと向き合われる中で、着想の源は何ですか?

西嶋 「プリクエル」は、当時のシャツや生地見本帳を参考にした生地開発からスタートするので、ヴィンテージは着想源のひとつです。

須田 実際に生地に触れてみると分かるんですが、打ち込みの数が多く、かなり目が詰まっているんですね。

西嶋 当時のワークウエアですからね。しかもこれらはいわばマスプロダクトなので、現地の蚤の市でも、同じモノが大量に並んでいたりします。ユーロヴィンテージのシャツの中でも、僕が好きなのはワークウエアに当たるので、実は量産品が多いんですよ。

——この辺のシャツって、古着としてのマーケット的価値はどうなんでしょうか?

西嶋 あくまで日常着なのでブランドという概念もないし、データも体系化されていないので、そういう意味での価値はないんじゃないですかね。だから安く手に入るし、僕のような数寄者が買い漁ることができるっていう(笑)。とはいえ市場価格は上がってきているように感じます。

須田 当時の生地ならではの特徴もあったりしますか?

西嶋 無地やドビーもありはしますが、種類ではいえば圧倒的にジャカード織りが多いですね。デザインも非常に細かく、重厚感と立体感に優れていて、どちらかといえば貴族文化からのドレス寄りで、似ているけどもうちょっとシンプルで速く織れるドビー織りは大衆文化のワーク寄りという感じに大別されます。両方に共通しているのが柄を織り込んでいるという点ですが、これには汚れが目立ちにくいというメリットもあります。そこから時代を下っていくと生地の厚さも薄くなって、着やすさ重視に。アイビーシャツの場合はどうですか?

須田 アメリカでも、アイビーファッションが花開いた1960年代のモノは、マスプロダクトなので、大量生産のための効率性が肝になってきます。なので、現代でも当時に近いところまで再現することは可能です。その上でシーズンごとのコンセプトやテーマを決めて、それを具現化にするためのサンプルやイメージを古着店や書籍、映画から集めて参考にしています。

西嶋 どういう書籍を参考にするんですか?

須田 1960年代に活躍した黒人のジャズミュージシャンや俳優をフィーチャーし、彼らのヒップなアイビースタイルを取り挙げた『BLACK IVY』という本がありまして、その表紙に使われているマイルス・デイビスの写真からインスパイアされて誕生したのが、ウチのアイコンとなっているグリーンのオックスフォードシャツです。

——目の前に実物がある訳ではなく、写真から作り出すには難しい部分もあるのでは?

須田 おっしゃる通り、生地自体はアイビーの代名詞なので当時のレシピを忠実に再現することも可能ですが、写真では見えていない細かな部分は想像して作り込む必要がありました。その一方で、「当時のプリントのパターンを今作ったら面白いよね」とか「当時存在したライトなオックスフォード生地が現代の気候に合うんじゃないか」というように生地はヴィンテージを参考にしています。西嶋さんはどうやってモノづくりをされていますか?

日本の優れた技術と 生産背景がカギを握る

西嶋 ウチの場合、“ベーシック”を作り出したいという思いがあるので、生地感やディテールにまず注目して、そこからどうやって着られていた、どういうアイテムなのかというストーリーを想像し、そのニュアンスを汲み取ってアイテムに反映させることが多いですね。当時のシルエットやディテールをそのまま移植するだけだと、現代の生活では着にくいだけのシャツに仕上がってしまいますし。

須田 たしかにそうですよね。僕らもブランドの立ち上げ当初は、ヴィンテージを忠実に再現していたんですが、ちょっと違うなと。そこで、自分らで実際に着て動いてみて、問題点を洗い出して現代風にアップデートしていく作業は必要でした。当時のモノはネック周りやアームホールが細いので、現代人の体格や姿勢に合うようにイジりつつも、ショルダーラインは絶対にジャストを厳守。そこだけは変わらないようにして誕生したのが「カマクラクラシックス」のアイビーシャツです。

——なるほど。では、“ヴィンテージ”という下敷きがある上で、新たにシャツを作ることの面白みとは?

西嶋 ヴィンテージを再現してアレンジするという点でいえば、柄の選択肢が幅広いというのはあります。ドビーやジャカード、プリントもあれば無地もありますし。テキスタイルの再現でいえば、日本の技術力ってすごいんですよ。通常、細かい柄の再現は難しいんですが、それを可能としている工場がありまして。

須田 多分、京都のあそこですよね?

西嶋 あ、ご存知ですか? そこです(笑)

須田 抜染プリントという手法があるんですが、それもイタリアや中国の一部の工場以外では技術的に難しいといわれていて。海外の工場で大規模投資した最新設備では逆に作れず、ガラパゴス的に進化した日本の技術ならできるというのも面白い話ですよね。クオリティ面でいえば、それこそ柄合わせなんかも、キッチリ誤差なく仕上げますし。

西嶋 本当にスゴイですよね。それに比べると海外の工場は、ちょっとアバウトだったり。僕は元々デニム畑の出身で、ヴィンテージデニムの特徴とされるディテールの中にも、「偶然の産物なのでは?」と思っているものもあり、シャツなんかも同様で(笑)

——なんにせよ、ディテールへのこだわりは日本人ならではの感覚なんですかね。

西嶋 日本人の得意なところではありますよね。分析して体系化するっていうのは。またインターネットの進化によって情報量が増えたことで、これまでにない新たな解釈や切り口も生まれているでしょうし。「プリクエル」も想像から自分らにとっての正解を導き出すモノづくりをしているので、重厚感と立体感があるジャカード織りをカジュアルに落とし込んだり、他のブランドがやっていないことを形にして世界に発信し、新たなシャツの定番を作ることができたらなと。

須田 「カマクラクラシックス」は現在、海外に向けて新たなジャパニーズ・アイビーを提案していますが、これからは日本でのマーケットも開拓していき、日本の優れた生産背景だからこそ可能な、高品質かつ面白いと思ってもらえるヒップなアイテムとスタイルをお届けできればと思っています。

(左から)

PREQUEL/Stand-up Collar Shirt

PREQUEL/Indigo Stripe Shirt

Kamakura Classics/BOLD MULTI STRIPE OPEN COLLAR SHIRT

Kamakura Classics/VINTAGE IVY BUTTON DOWN OXFORD

(出典/「2nd 2026年6月号 Vol.218」)

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