AirPods 5は、標準モデルが2万3800円、ワイヤレス充電ケース付きモデルが2万7800円(いずれも税込・以下同)となっている。

オープンイヤーなのに驚きの『静けさ』という体験
最初にAirPods Proが登場した時(2019年)には、そのANCの素晴らしさに多くの人が驚いた。もちろんANC自体はBoseなど多くの高級オーディオに搭載されていたが、AirPods Proのように一般ユーザーが使うモデルに搭載されたこと自体がインパクトだった。電車の中であれ、賑やかなカフェの中であれ、ANCをオンにすればいつでも静かな自分の世界に浸ることができた。
それがAirPods 4では、ANC搭載モデルと、非搭載モデルが用意された。搭載モデルでは、学生でも買えるような普及価格帯のオープンイヤーモデルにANCが搭載されたことが驚きだった。
AirPods Proのような、イヤーチップで外の音の影響を抑えることができる製品ならANCが効くのも分かる。ANCというのは、周囲の音と逆位相の音を出して、周囲のノイズを打ち消す仕組みだが、当然のことながらオープンイヤータイプだと強い効果を出すのは難しい。
AirPods 4では、ANCの効果はあったが、たしかにAirPods Proシリーズほどの効きではなく、「オープンイヤータイプなら、このぐらい効けば十分」という評価を我々も下していた。
それが、AirPods 5では、明確に強く効くようになり「これなら十分に効果的」と思えるようになった。

オープンイヤータイプでこれほどANCが効くのは驚きだし、それを2万3800円の安価なモデルで実現しているところが素晴らしいと思った(円安のおかげで、2万円を切っていないのは残念だが)。
従来モデル比1.5倍の『静けさ』を実現
この体感を裏付けるのが、Appleが公表しているノイズキャンセリングの数値だ。AirPods 5は、新しいマルチポート音響アーキテクチャと進化したコンピュテーショナルオーディオアルゴリズムにより、ANC搭載のAirPods 4と比べて最大50%多く雑音を除去するという。Apple Parkでの取材では、性能向上を支えているのは新しいアコースティックアーキテクチャの再設計と、ANCコンプレッサーの完全な書き直しによると聞いた。
人の声の周波数も除去対象になっているそうで、通勤・通学や旅行中の移動、カフェでの作業集中といったシーンを主な使用想定として挙げていた。ぴったりと耳を塞いでしまうタイプが苦手な人でもANCの恩恵に預かれるようになったというわけだ。
ちなみに搭載チップは、AirPods Pro 2から変わらずH2。おそらく2022年のAirPods Pro 2搭載時にはかなり性能に余裕があったのだろう。
アップルらしい素直な音
音質についても触れておきたい。低音はほどほどにあり、ボーカルもクリアに聞こえ、細かい音もきちんと拾える。バランスの良さはアップルの有線イヤフォンEarPodsから続くAirPodsシリーズ共通の美点で、多くの人には好まれるはずだ。
ただし正直なところ、ちょっと丸められた、整えられたようなAppleスタンダード独特の音の作り方は健在で、一部のオーディオマニアには物足りなく感じられるかもしれない。とはいえオープンイヤーであることを踏まえれば、これまでよりクリアなニュアンスで綺麗な音が聞こえるようになっているのは間違いなさそうだ。
このあたりは、AirPods Pro 3で採用されたパーソナライズ機能(耳の形状に合わせて音を最適化するアルゴリズム)が、今回小型モデルにも展開されたことが効いているようだ。チップ自体はAirPods 4と同一だが、アルゴリズムと演算処理が刷新されているとのこと。トランスペアレンシーモードも同様に、より自然な外部音を再現するよう改良されている。
2モデル展開、違いはケースとステム
今年のAirPods 5は2モデル展開で、リスニング性能自体はどちらも共通だ。標準モデルは前世代のANCなしモデルと同じ2万3800円という価格(前世代のANC搭載モデルより6000円ほど安い計算になる)で、ANC使用時は1回の充電で最大4時間、ケース込みで最大20時間。上位のワイヤレス充電ケース付きモデルは2万7800円で、ステム部分をスワイプするだけの音量調整(このスタイルのAirPodsとしては初)に対応し、ANC使用時は最大5時間、ケース込みで最大22時間まで伸びる。Apple WatchやQi規格の充電器にも対応した充電ケースが付属するのも嬉しいポイントだ。

ちなみに、筆者の耳にはAirPods Proシリーズはピッタリなのだが、AirPods 5は少々耳への収まりが緩く、ボリュームを下げるアクションはいいのだが、ボリュームを上げるステムを引き上げるというアクションは、AirPods 5が耳から抜け落ちがち。そのあたりは個人の耳の形の問題ではあるが、「耳の形はひとそれぞれなので、フィット感に個人差がある」ということはあらためてお伝えしておきたい。
標準モデルにボリュームコントロールがない理由を質問してみたところ、『ANCをできるだけ低価格で提供したい』ということを優先したためとの回答があった。ステムのボリュームコントロールにはセンサーなど追加のエンジニアリングが必要で、コスト増につながるという事情らしい。ちなみに外観上の違いはケースに開いたFind My対応スピーカー用の小さな穴くらいで、イヤーピース部分の形状自体はAirPods 4と同一とのことだった。

(左が新しいAirPods 5、右がAirPods 4。外見からは区別がつかない)
AI機能やライブ翻訳もハンズフリーで
もちろん機能面も進化している。iOS 27のSiri AIと組み合わせれば、メッセージや写真といった個人のコンテクストを理解した応答や、アプリ内のアクション実行がハンズフリーで可能になる。頭を縦に振れば「はい」、横に振れば「いいえ」とSiriに応答できるのも面白い。ライブ翻訳はANC搭載が前提の機能で、昨年の登場以来好評とのことだ。
iOS 27で3バンドのイコライザーが追加されたにも嬉しい。設定からしっかり効果のわかる振り幅で音を調整できる、シンプルながら良い機能だと感じた。両モデルともIP57の防塵性能と耐汗耐水性能も獲得しており、耐久性も上がっている。
すべての人に『静けさ』を
というわけで、AirPods 5はオープンイヤー型でありながら強力なノイズキャンセリング能力を獲得した点が最大美点。音質の好みは分かれるかもしれないが、この価格のイヤフォンとしては十分以上。むしろ、ライバルが見当たらないほどの性能だ。
標準モデルでも十分ANCの恩恵を受けられるので、コスパを重視するなら標準、音量操作やバッテリー持ちを求めるならワイヤレス充電ケースモデル、という選び方で良さそうだ。
(村上タクタ)
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