広角ズームはなくても困らないけど、あると絵作りにググッと幅が広がる。多くの人が持ってるものではないから、『他の人の撮れない絵が撮れる』というのが特徴だ。
筆者の取材シーンで言えば、室内の全体、イベント会場全体の雰囲気を撮るのにピッタリだ。
たとえば、多くの人が撮影する東京タワーだって、超広角レンズがあれば、ご覧のようなユニークな絵柄で捉えることができる。
現在、RFレンズの超広角は(『超広角とは何mmからか?』という議論はあるかもしれないが。)
RF16mm F2.8 STM(5万0380円)
RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM(8万5800円)
RF14-35mm F4 L IS USM(23万6500円)
RF15-35mm F2.8 L IS USM(34万6500円)
の4本がある。そのうち、RF14-35mm F4とRF15-35mm F2.8は、筆者の経済力では手に余るので、ここではRF16mm F2.8とRF15-30mm F4.5-6.3を話題にしたい。
そりゃUSMのLレンズが良いのは分かってるが、筆者はプロカメラマンではないしそこまでの対価は払えない。また買えるとしても、レンズが重過ぎると、取材の時に身体に負担が来て、フットワークが悪くなる。というところで、ここまでと同じ議論だが、EOS R本体の性能に頼って、レンズはほどほどのラインナップで揃えようという作戦だ。
RF16mm F2.8 vs RF15-30mm F4.5-6.3の一騎打ち
というわけで、RF16mm F2.8と、RF15-30mm F4.5-6.3について、じっくり考えてみよう。実はこれ、なかなかの難問なのだ。
まず、基本的にズームレンズの方が便利だ。だが、広角側の30mmという画角は標準レンズの24mmでカバーできる。要するに標準側のニーズは低いのだ。
そして、RF16mm F2.8の方が明るいし、コンパクトだし、安い。
ちなみに、RF16mm F2.8は約φ69.2mm×40.2mm(レンズ収納時)で、約165g。
対してRF15-30mm F4.5-6.3は約φ76.6mm×88.4mmで、約390g。
かなり寸法に差がある。超広角レンズだけ持って出掛けることはないだろうから、あくまで他のレンズと一緒に持つことを考えると、やはり軽いに越したことはない。
ちょっと余談になるが、EFとRFの設計上の最大の違いはミラーがないことによるフランジバック(マウントからセンサーまでの距離)で、このフランジバックの短さが特に効果を発揮するのは(詳しい説明は省略するが)広角レンズにおいてだ。だから、こんな超広角レンズが使えるのは、RFマウントのEOS Rならではのメリットなのだ。これは買わないと損ということだ。
筆者のEOS R6 Mark IIのボディと合わせると、RF16mm F2.8は約835g(バッテリー、カード1枚を含む)。
対してRF15-30mm F4.5-6.3は約1,060g。まぁ、標準ズームを付けたぐらいのサイズなのだが、超広角はあくまで変化球だと考えると、レンズは小さいに越した事はない。
どちらか1本あれば、超広角レンズならではの魅力的な絵が撮れる
という理屈はともかくとして、写真を撮ってみよう。
たとえば狭いクルマの中でも、グッとワイドな絵が撮れるのが魅力だ。これは日産の試乗会の時に助手席から撮影したフェアレディZの車内。
これぞ、超広角の真骨頂。標準ズーム広角側の24mmだと私とハンドルぐらいしか画角に入らないが、リアのスラントしたCピラーや、ダッシュボード、MT車ならではのシフトノブまで画角に入るので、2シーターのタイトな運転空間にいるかのような絵が撮れる。
続いては、とあるスタジアムでの写真。フィールド全体どころか観客席まで入るので、臨場感ある写真を撮ることができる。
風景でもご覧の通り。徳川の菩提寺である増上寺の大殿、安国殿と、昭和の東京タワー、平成のアークヒルズ仙石森タワーを1カットに収めることができる。滝や、山や、大木などの壮大な風景を撮るのに適していることだろう。
その時に、こんな風にワイドに撮影できると実に楽しいのだ。
そして、何よりも室内の写真だ。筆者の場合、ショップ取材で店内のなるべく広い部分を撮ったり、イベント会場で会場全体の雰囲気を撮ったりしたい。そんな時に、超広角があると本当に便利なのだ。
ところで、この写真がいい例なのだが、超広角カメラは、写真に写るものすべてに強いパースがつくので、水平を出すのが難しい。この写真も、天井などの角度を見て撮ったのだが、実際に仕上がりを見てみると、もう少し左を上げた方が良かったようだ。
単純に水準器を使えば水平になる……というものではなく、超広角の場合は画面に写っているさまざまな要素を総合して『これが水平に感じられる』というポイントを探すことが必要だ。難しい。
『RF15-30mmの方が便利』か? 『どうせ広角端しか使わないからRF16mm』か?
具体的に標準ズームとの違いを見てみよう。
これが標準ズームの一番広角側で撮った会議室。手前の席に座った人はギリギリ入るぐらいになるだろう。
対して、広角単焦点で撮るとこんな感じになる。
グッと部屋全体が写るようになったことがお分かりいただけると思う。わずか、約165g、5万0380円のレンズ一本で、この画角が手に入ると思うと実に魅力的だ。
そして、広角ズームの広角端。
上の16mmよりさらにワイドだし、逆にズームリングを回すとこの1本で、標準っぽい写真も撮ることができる。
とはいえ、このレンズだとF値は30mmだと6.3になってしまうので、24mmで撮ると4、30mmで撮っても4.5まで開けられるRF24-105mm F4-7.1の方が有利ではあるが。
ともあれ、15mmだとちょっと余計なものが入ってしまう……という時に、15……18……20mmとズームしていけるのはとても便利だ。
結局のところ、どちらを選ぶかは、「どうせワイド端しか撮らない!」と見切ってRF16mm F2.8を選ぶか、15〜30mmの微妙な画角を自由に選べることのメリットを重視してRF15-30mm F4.5-6.3を選ぶか、そのポイントが決断の分水嶺であるように思う。
『寄って、ボカす!』もRF16mm F2.8の楽しさ
と言いつつ、もうひとつRF16mm F2.8の楽しさをご紹介しておこう。『寄って、開けて』後ろをボカした寄り写真を撮れることだ。
寄って表現するミクロの世界と、広大な世界を背景にボカして入れられるのはRF16mm F2.8の面白さだ。
たとえば、料理に寄って、店内をボカして背後に入れることで、料理と同時に店内の雰囲気も伝えることができる。
これが、RF15-30mm F4.5-6.3だと、そこまでボケないから背景にも目が行ってしまう。
ちなみに、RF15-30mm F4.5-6.3は、ワイド端15mm時、0.128mまで被写体に近づいて撮影可能で、最大0.52倍の撮影倍率によって、ハーフマクロとして(ただしMF時に限る)撮影できるから、これはこれでまた面白いのだが。
『安い、軽い、明るい』のRF16mm F2.8を買いたい
実際、撮れる画角の自由度はRF15-30mm F4.5-6.3の方が高いのだが、筆者の取材の中で1発の変化球としての使い方だと『安い、軽い、明るい』というメリットを考えてRF16mm F2.8の方を選びたい。
お金が潤沢にあって、持ち運びの重さが気にならない状況ならRF15-30mm F4.5-6.3を選んだ方が、画角の選択肢が増えて気持ちが楽という考え方もあると思う。
どちらを選んでも後悔はないと思うのだが、値段も、持ち運びやすさも含めて、筆者はRF16mm F2.8を選びたいと思う。
ただし、今はまだEOS R6 Mark IIとRFレンズを一気に買ったダメージから財布が立ち直っておらず、手元不如意につき、実際に入手するのはもうちょっと後になりそうだが。
そうそう、最後にもうひとつ迷ったポイントを。
実は、筆者が購入している『ミドルクラスのRFレンズの一部』は、フィルター径が67mmで統一されており、同じフィルター、レンズキャップが使えるのだ。今、手持ちのRF24-105mm F4-7.1 IS STM、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、RF85mm F2 MACRO IS STMに加えて、RF15-30mm F4.5-6.3 IS STMも同じレンズキャップを使えるとなると、実際のレンズ交換の時に便利だという魅力はあった。
サイズが似ていて間違える危険もあるが(実際RF24-105mm F4-7.1を持って行くつもりで、RF85mm F2を持って行って困ったことがある)、『揃ってる』というのは何かと好都合なのだ。
これも、ちょっと欲しいポイントではあった。
(村上タクタ)