昭和の洋楽ファンと伝説の洋楽番組『ファントマ』

  • 2023.06.01

5月31日に発売された『昭和45年女』の特集「私たちの洋楽ROCK SHOW」のハイライトともいうべき扱いで掲載した、シャーリー富岡さんと中村真理さんの『ファントマ』対談ページ。なぜ、この特集は2人だったのか、2人でなければダメだったのか。本誌編集長が『ファントマ』愛を語ります。

80年代洋楽を語るうえで欠かせないtvkの影響力

自分の半分以上はtvkでできている、そういって過言ではないほど、少年期の私はtvkっ子だった。東京生まれなのに……。本来であれば東京では映らないはずのtvkを、なぜ東京の下町で観ていたのか、というと、それは親にむりやり頼み込んでUHFのアンテナを付けてもらったからだ。

70年代半ばから後半にかけて、熱烈な野球少年で巨人ファンだった私は、毎晩、プロ野球中継を楽しんでいたのだが、当時の野球中継は夜7時半から8時54分まで。延長はなく、試合途中でも放送終了なので、その後はラジオで聞くという、なんともやりきれない気持ちだった。だが、ある日、新聞のラテ欄を見ていると、tvkでは8時54分からリレーナイターという番組があるのを見つけた。なんでもこれは、日本テレビの中継をそのまま引き継ぎ、試合終了まで放送しているという。

これに歓喜した私は前述のとおり、親にせがんで普通のアンテナよりも少し背の高い、UHFのアンテナが付けてもらうことになった。すると今度は、tvkでトップナイターという番組まで始まった。これは試合開始から日本テレビで中継が始まるまでの様子を中継してくれるというものだった。それが78年から79年にかけてのことだったと記憶する。

巨人ファンとしてこのうえない環境を手に入れながら、自分の巨人愛、野球愛が薄れていってしまう。きっかけは例の江川の空白の一日事件。子供ながらに「巨人ならなにをやってもいいのか」という不信感を抱き、野球への興味が薄れ、tvkを観る機会も少なくなっていた。


特集「私たちの洋楽ROCK SHOW」で実現したシャーリー富岡さんと中村真理さんのツーショット!前書きが長くなってしまったが、これからが本題。そんななかで、少し時間が経ったある日、ふと付けたtvkから流れていた洋楽ロックに魅了されてしまったのだ。その番組は『ファンキートマト』。確か、これが80年で、ロッド・スチュワートやザ・ポリスのビデオだったと思う。これ以降、今度は、『ファンキートマト』目当てでtvkを観るようになっていく。洋楽知識ゼロで観始めたので、最初の頃はよくわからないことも多かったけど、司会の植田芳暁さんとシャーリー富岡さんの丁々発止がおかしくて、毎週金曜日が楽しみだった。

まだミュージックビデオが珍しかった時代に、電話でリクエストを募っていて、番組最後にランキングを発表。オフコンの集計画面がなんとも昭和だったこと……。あと、基本洋楽番組なのに、サーフィン情報なんてコーナーもあって、なんておしゃれなんだと思った。

アーティストの最新情報を伝えてくれたのは、中村真理さん。途中から大貫憲章さんも加わって、よしやん&シャーリーとは違った丁々発止のおもしろさが番組に華やかさを添えていた。毎回多くのミュージックビデオがオンエアされていたけど、だいたいがフェイドアウトで、フル尺で見られたものはほぼなく、毎週コマ切れで脳内にシーンを蓄積していくしかなかった。81年、家にビデオが導入され、毎週を録画して楽しむようになると、いつの間にか一丁前の洋楽ファンになっていった。

ということを踏まえて今回の『昭和40年女』の特集「私たちの洋楽ROCK SHOW」では、どうしても『ファントマ』の記事を作りたく、できればシャーリー富岡さんと中村真理さんのツーショットで対談してもらいたかった。以前にも、個別に取材したことはあったんのですが、今回は40年越しの念願叶い、ついに対談が実現。2人が目の前に揃った感動と言ったら……。インタビューの中でも、今でも多くの人から「『ファントマ』に洋楽を教えてもらった」と言われるとおっしゃっていて、『ファントマ』に思い入れのある昭和生まれの人間は私だけではないと確信。2人の発言はどれも貴重なものばかりで、ホントに企画してよかったと思うのでした。昭和の洋楽ファン、『ファントマ』ファンにはたまらないページになっているかなと。シャーリー富岡さんと中村真理さん、ありがとうございました。

2020年の『昭和40年男』に掲載したtvk『billboard Top40』記事。中村真理さんのインタビューあり

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