ALL JAPAN LEATHER PRODUCTとは
国産の原皮を使用し、鞣し、縫製までの全工程を日本で行う“ジャパンレザー”の素晴らしさを伝えるべく立ち上がった一大プロジェクト。記念すべき第1弾の革に選ばれたのは、日本の原皮の真骨頂ともいえる銀面の美しさと靭やかさを備えた、北海道産黒毛和牛の地生。ただし基準を満たす原皮が集まるのは月にわずか30枚。この希少な革を、日本の鞣し技術の粋を集めたグローブレザー製法で仕上げる。出来上がったプロダクトは9月26、27日のレザーズデイ(https://www.leathersday.com/)でお披露目予定。

モヒカン小川|本誌レザー担当にして自称革の伝道師。世界各国のレザーブランドやタンナーを取材してきた経験を活かし、今回のプロジェクトには“プロデューサー”として参加する。
【1日目】打ち合わせ@浅草
打ち合わせの目的は「どのような革を作るのか」を決めること。プロジェクトの中核を担うメンバーが集結し、採用する革や色、厚みなどを入念に議論を重ねた。また、レザーズデイに合わせて製作するプロダクトについても議題に上がり、当初予定していた革ジャンだけでなく、ブーツやベルトなど、ラインナップを増やす方向へと話は進んだ。

プロジェクトメンバー初の顔合わせということで記念撮影。左から、東京服装ベルト工業協同組合理事長を務める三竹産業の麻生和彦さん、日本革類卸売事業協同組合や協同組合資材連の理事を務める和田商会の和田良彦さん、モヒカン小川、全国皮革服装協同組合代表理事を務めるリューグーの松本宙士さん。プロデューサーのモヒカン小川を中心に、日本の革業界を代表する各団体の要職を担う3社の代表が集まり、レザー談義を繰り広げた。
色をめぐる白熱の議論

この日の大きな議題はふたつ。ひとつは茶芯の色について。話し合いの結果、アメリカンワークブーツを代表するモデルを参考に、やや赤みのある茶芯を採用することとなった。採用するレザーについては、野球のグローブに使用されるグローブレザー(牛)の製法をベースにクロム鞣しがもたらす耐久性と柔軟性、ベジタブルタンニン鞣しがもたらす経年変化、このふたつをブレンドしたコンビ鞣しによって、グローブのように最初は少し硬くても、着用を重ねることで身体にフィットしていく“育て甲斐”のあるレザーを目指す。


「染料仕上げにして革本来の風合いは残す方が良いかな」、「茶芯はふんわり見えてくる感じが良さそうだ」、「タッチ感はどうしよう。オイルは多めに入れた方が良いかな」、「厚みは1.3〜1.4ミリが良さそう。革ジャンには合うとして、ブーツにするならもう少し厚い方が良いかもしれない。まずは仕上がった革を見てみてからだな」。4人のレザーラバーによる白熱した会議は1時間以上にわたって繰り広げられた。



この日の打ち合わせに先駆け、プロジェクトメンバーは原皮となる日本を代表する4種の国産牛を視察するべく、北海道(黒毛和種、ホルスタイン、ジャージー)、鹿児島県(黒毛和種)、熊本県(赤毛和種)、トカラ列島(野生牛)を巡った。さらに、副産物である原皮がどのように処理され保存されるのが良いのかを把握すべく、国内のみならずアメリカの食肉センターにまで足を運んだという。牛の種類、飼育する環境により革の特性は微妙に異なる。品質の良し悪しだけではなく、作りたい製品に合わせて最適な原皮を手に入れることが視察の目的だ。辿り着いた答えが、北海道の黒毛和牛。綺麗な水と恵まれた飼育環境のもと、24時間365日体制で大切に育てられた牛からは、良質な肉や牛乳、そして副産物である良質な原皮が生まれる。その革は繊維が緊密に絡み合い強靭で、傷が少なく銀面がきめ細かく美しい。まさに日本の畜産が生んだ「地生」という名の宝だ。ただし、基準を満たす原皮は月に30枚しか集められない。この希少性こそが、地生の価値である。そしてメンバーは、国産原皮と北米産の輸入原皮で製作した革を試験機関に持ち込み、引き裂き強度や引っ張り強度、耐光堅牢度による経年変化の具合のチェックなどを重ね、地生の実力を数値の面からも検証した。
【2日目】タンナー見学&革の確認
打ち合わせから約3カ月後、一行は兵庫県たつの市を拠点とする老舗タンナー「湯浅皮革工業所」に集結。同プロジェクトにて製作する月にわずか30枚しか集まらない北海道産黒毛和牛の地生が、赤みのある茶芯のグローブレザーとしてどう仕上がったのか。同タンナーの工程・設備を見学させてもらい、その確認を行なった。
月30枚の地生、鞣し上がる

案内してくれたのは、プロジェクトのコアメンバーのひとりであり、湯浅皮革工業所を切り盛りする湯浅雅善さん。革産業の街として知られるたつの市にて1975年に創業し、タンニンなめしや厚物革の技術で高い評価を受けている老舗タンナーだ。
この革の核心は“二度の鞣し”にある

この革の核心は、コンビ鞣しにある。まずクロム鞣しで革に骨格となる強靭さと柔軟性を与え、そこにベジタブルタンニンを重ねる本鞣しを施すことで、繊維に形状記憶のような性質と豊かな経年変化が宿る。野球グローブが使い込むほど持ち主の手の形を覚えていくように、この革は着る人の身体を覚えていくのだ。各国のタンナーを取材してきたモヒカン小川をして「鞣しを2度行なっているタンナーはあまり見たことがない」と唸らせる、手間を惜しまぬ日本の鞣し技術である。



鞣しが終わり、傷や革の表情によって選別された革は、まず芯を赤みのある茶に染める。その上から熟練の職人がスプレーで丁寧に黒を染め重ねる。いきなり全体を染めず、革の切れ端を染めて色見本とし、何度も照合しながら染め上げる。表面は顔料で覆わない染料仕上げ。黒毛和牛地生ならではのきめ細かな銀面がそのまま活き、着込むほどに黒の下から茶芯が現れる。「永遠に見ていられる(笑)」とモヒカン小川。
茶芯に宿る、経年変化への執念



この日の最大の目的である革の確認。一同が口を揃えたのは「いい色に仕上がったね〜!」。参考としたワークブーツのイメージ通り、赤みがかった茶芯レザーの仕上がりに一同感銘を受けているようすだった。グローブレザー特有のコシや弾力も確認し、「オイルを芯まで入れて柔らかくするか、グローブレザーらしいある程度の“硬さ”を残すために芯までは入れないべきか」、「ジャケットの型はスポーツジャケットがいいかな」、「この強度であればブーツも作れそうだ」と次のステップであるプロダクトの製作に向けての打ち合わせが自然と始まった。次号では、この特別な茶芯レザーを使い完成したプロダクトを紹介するので乞うご期待!
【AJLP活動第1弾で決まったこと】
・銀面が美しく靭やかな北海道産黒毛和牛の地生(月産わずか30枚)を採用・クロム×ベジタブルタンニンのコンビ鞣しによる、身体に馴染むグローブレザー製法
・赤みのある茶芯×染料仕上げで経年変化を追求
・革ジャンを軸に、ブーツやベルトの製作も視野に
・完成したアイテムは9月26、27日のレザーズデイでお披露目
photo/Makoto Tanaka 田中誠 text/Kihiro Minami南樹広
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