熊本県人吉市にある国内最高峰のシャツファクトリーに、ニッポンのモノづくりの底力を見た

熊本県人吉市に工場を構えるシャツファクトリー「HITOYOSHI」。そこには、大手セレクトショップや世界的評価を獲得している日本のデザイナーズブランドから厚い信頼を置かれる所以である、国内最高峰のクラフトマンシップが存在した。

名だたるブランドが信頼を置く確かな技術と妥協なき精神

2ndでシャツを特集するにあたり、工場を取材したいと思った。できれば国内最高峰の工場がいい、とも思った。本誌が信頼を置く業界人に聞くと、彼らが真っ先に挙げたのが「HITOYOSHI」だった。

熊本県人吉市。熊本市街から車で約1時間半のところに彼らの工場はある。創業は1989年。親会社のアパレルメーカーのシャツの生産と並行し、英国の某有名ブランドをはじめとする名門のOEMを手掛けていた。その後独立し、現在はOEMとオリジナルブランドの二軸で事業を展開している。

工場に足を踏み入れると、想像よりも静かであった。いくつもの電動ミシンの音が響き渡る。職人たちの眼差しは真剣そのものだった。取材班が撮影を開始しても意に介さず、黙々と作業を続けている。

HITOYOSHIが国内外から高い評価を得ている所以は、モノづくりの丁寧さにある。工場には裁断機を除いて大型の機械は存在しない。ボタン操作のみで動く自動ミシンではなく職人自らが操作する電動ミシンを使用。大量生産ではなく、一つひとつの工程に精神を宿している。

また、彼らの強みはODM(Original Design Manufacturing)にもある。ODMとは、ブランドに対してデザイン提案をし、発注をもらって生産すること。OEMを請け負うことで蓄積されたノウハウに基づき、ブランドに対して“もっと良いシャツ”を作るための提案をするのだ。この点も彼らが高い評価を得ている理由のひとつだろう。

工場での滞在時間はわずか1時間ほどであったが、彼らのモノづくりにかける想いを感じ取るには十分だった。

HITOYOSHIとは……

1989年に大手アパレルメーカーの子会社のシャツ工場として開業し、その後独立。2010年よりOEM生産を開始し、2015年からオリジナルブランドを始動。国内の大手セレクトショップ、世界的な評価を獲得している日本のデザイナーズブランドのシャツの生産を請け負うなど、圧倒的な実績を誇る。近年はオリジナルブランドにも力を入れており、カジュアルからドレスまで、幅広いラインナップの上質なシャツを展開している。

HITOYOSHIのシャツができるまで

トラッドを愛好する者であれば、シャツができるまでの工程は知っておくべきだ。そこで、国内最高峰のシャツファクトリーとして名を馳せるHITOYOSHIの工場へと訪問。どのようにして“仕立ての良いシャツ”は作られるのかに迫った。

裁断

国内外問わず、これまでに数々のブランドのOEMを担ってきた実績を誇るHITOYOSHIは、数え切れないほどの型紙を所有しており、これらはデータで一括管理している。シャツ作りの最初のステップである裁断の工程では、まずPCから裁断機にデータを送り、反物(生地)をセット。オーダーシャツは生地を1枚ずつ、既成服は複数枚の生地を重ねて裁断機へと入れる。機械が発達する前の時代は、職人が手作業で裁断を行なっていたが、上質なシャツを製造するために丁寧かつ正確に生地を裁断するためにも機械を導入。この機械に生地を流すと、前身頃、後身頃、襟、カフスなどのパーツに生地が裁断されていく。

縫製

次は各パーツを繋ぎ合わせていく縫製の工程。HITOYOSHIの工場では、①襟、②後身頃、③袖、④前身頃、⑤カフス、⑥本流(全パーツの組み立て)という6つの班に分かれる。各班にはそのパーツのスペシャリストともいえる職人が配置され、黙々と作業を続ける。工程は非常に細かく、例えば襟だけでも約20の工程が存在するのだという。こうして完成した各パーツを本流担当の班が組み立て、前身頃と後身頃を繋ぎ合わせ、襟と袖を付け、脇と裾を縫う。こうして1枚のシャツが完成するのだ。職人たちがミシンと向き合い、シャツが完成へと近づいていくサマは“クラフトマンシップ”という言葉がピッタリだ。

仕上げ

丹精を込めて作り上げられたシャツが出荷される前の最後の工程が仕上げである。縫製が終わったシャツを検品するのだ。仕様書通りに正しく作られているか、ステッチやボタン付けは丁寧か、細かい糸のほつれはないかなど、商品としてHITOYOSHIが定める高いクオリティに達しているかを細かくチェックする。こうしてチェックを通過したシャツはアイロンでシワを綺麗にプレスし、ハンガーラック、もしくは平置きで保管され、出荷前に袋詰めされていく。編集部が取材に訪れた際には、日本の大手セレクトショップが手がけるレディスレーベルのオリジナルシャツが一つひとつ丁寧に品質確認されていた。

工場長・竹長一幸さん|HITOYOSHIの工場の指揮を取る工場長の竹長一幸さん。元々は大手アパレルメーカーの子会社として1989年に開業した同工場だが、2008年のリーマンショックによる親会社の経営難を境に独立し、数々の苦難を経て今日に至る。「子会社時代は大量生産のために自動ミシンを採用していましたが、独立後は“モノづくりの精神”に重きを置き、電動ミシンを採用し、OEMと自社ブランドのシャツ作りに取り組んでいます」

OEMで培ったノウハウを活かして生み出した日本最高峰のボタンダウンシャツ

様々なブランドのOEMを請け負うHITOYOSHIが展開するオリジナルブランドが「HITOYOSHI Japanese Shirt Factory」だ。アメリカントラッドにおけるシャツの最定番であるホワイトオックスフォードのボタンダウンシャツは、一般的なシャツが3cm間に16〜18回の運針であるのに対し、24回という丁寧かつ繊細な縫製の端正な佇まいが魅力。生地は洗いざらしがサマになるヘビーオンスのコットン100%で、本前立てというクラシックなディテールが光る。美しい襟のロールや左胸のポケットなど、アメトラ好きにとって外せないディテールも◎。1万4300円

カラーや素材も豊富に展開!

基本中の基本である白のオックスフォードシャツやブロードのドレスシャツのほか、ブルーデニムのワイドカラーシャツ(左)やダンガリーのボタンダウン(右)など、襟型、素材、柄も豊富に展開する。オンラインストアからぜひチェックしてほしい。ともに1万7600円

【問い合わせ】
HITOYOSHI オンラインストア
https://store.hitoyoshicorp.com

(出典/「2nd 2026年6月号 Vol.218」)

この記事を書いた人
みなみ188
この記事を書いた人

みなみ188

ヤングTRADマン

1998年生まれ、兵庫県育ちの関西人。前職はスポーツ紙記者で身長は188cm(25歳になってようやく成長が止まった)。小中高とサッカーに熱中し、私服もほぼジャージだったが、大学時代に某アメトラブランドの販売員のアルバイトを始めたことでファッションに興味を持つように。雑誌やSNS、街中でイケてるコーディネイトを見た時に喜びを感じる。元々はドレスファッションが好みだったが、編集部に入ってからは様々なスタイルに触れるなかで自分らしいスタイルを模索中。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

いつもの装いに、頼れる履き心地。この秋は、コートスニーカーとチロリアンシューズがあればいい

  • 2026.09.18

トラッドな装いになら、足元はやっぱり品よくいきたい。でも、履き心地だってこだわりたい。そんな欲張りな気分に応えてくれるのが「ロックポート」。クラシックな佇まいと快適さを両立した2足を紹介する。 品よく履けて、しっかり快適 「お洒落は我慢」とは言うけれど、格好よさも履き心地も譲れない。そんなわがままに...

究極のクラシックを背負う。英国発バッグブランド「Billingham」のカメラバッグ『System-1』

  • 2026.09.24

英国生まれのバッグブランド「ビリンガム」。そして同ブランドを代表するモデル[システム-1]。"用の美"を極めたその実用性とルックスは昔も今も、服好きの心を捉えて離さない。 “機能美”を極めたクラシックバッグの筆頭 創業は1973年。写真を撮るのが大好きだったという創業者のために妻がカメラバッグを手作...

トラッドの相棒にドゥニームのジーンズを! ウエアハウスが1988年のクラボウデニムを再現

  • 2026.09.17

1980〜90年代に日本のセルビッジジーンズの先駆けとして一世を風靡したデニムブランド「ドゥニーム」。同ブランドの創業当時のレシピをもとに、再始動を手掛けたのが「ウエアハウス」だ。彼らの徹底的な研究・解析によって生み出された至極の1本は、まさにオーセンティックそのもの。そして、本当の意味での“良い色...

毎日に、最良の定番。B.V.D.の「GOLD」は昔ながらの良さと、いま欲しいバランスを兼ね備えたTシャツ

  • 2026.09.16

長く愛されてきた定番には、変わらない理由がある。B.V.D.の「GOLD」もそのひとつ。肌着として培ってきた心地よさをそのままに、今の気分で一枚でも着られるリラックスフィットが加わった。昔ながらの良さと、いま欲しいバランス。その両方を備えた、新しい定番のかたちを見ていこう。 変わらない着心地にゆとり...

無垢の金属、輝く伝統。純金や純プラチナを使った「市松」の究極の逸品

  • 2026.09.25

純金や純プラチナなど、純度100%の軟らかい金属をアクセサリーにするためには非常に高い技術が必要だ。それを可能にするのが「市松」。約30年にわたって培った“叩く”技術が可能にする唯一無二のリングの輝きに迫る。 熟練の技なくしては完成しない究極の逸品 原材料高騰の影響もあって、希少性が高まっている純金...

Pick Up おすすめ記事

いつもの装いに、頼れる履き心地。この秋は、コートスニーカーとチロリアンシューズがあればいい

  • 2026.09.18

トラッドな装いになら、足元はやっぱり品よくいきたい。でも、履き心地だってこだわりたい。そんな欲張りな気分に応えてくれるのが「ロックポート」。クラシックな佇まいと快適さを両立した2足を紹介する。 品よく履けて、しっかり快適 「お洒落は我慢」とは言うけれど、格好よさも履き心地も譲れない。そんなわがままに...

トラッドの相棒にドゥニームのジーンズを! ウエアハウスが1988年のクラボウデニムを再現

  • 2026.09.17

1980〜90年代に日本のセルビッジジーンズの先駆けとして一世を風靡したデニムブランド「ドゥニーム」。同ブランドの創業当時のレシピをもとに、再始動を手掛けたのが「ウエアハウス」だ。彼らの徹底的な研究・解析によって生み出された至極の1本は、まさにオーセンティックそのもの。そして、本当の意味での“良い色...

イタリア・パルマで誕生。世界屈指のベルト「Anderson’s」、その生まれる場所へ

  • 2026.09.17

1966年、イタリア北部に位置する美食の街・パルマで創業したベルトメーカー「アンダーソンズ」。装いを完成させる“名脇役的存在”のベルトをメインとする稀有な存在にして、世界的な評価を獲得する某ブランドのプロダクトはどのように生まれるのか。その魂が宿る自社工場に足を運んだ。 イタリア・パルマの地に宿る6...

日本の技で蘇る、旧きよきアメリカンベーシック。100年前の起毛機を使った「DISCUS」のスウェット

  • 2026.09.18

「ディスカス アスレチック」の「MADE IN JAPAN」プロジェクト。和歌山で受け継がれる約100年前の起毛機とそれを支える職人の技。そのこだわりから生み出されるスウェットの魅力を追った。 スウェットの裏側に宿る百年起毛 1973年、アメリカで誕生した「ディスカスアスレチック」。その歴史を日本の...

ニューヨーク・ブルックリン発! 作業服由来のデイリーウエアはこう着こなす。

  • 2026.09.16

創業1904年、高層ビルの建設が相次ぐ当時のニューヨークでリアルワーカーに向けて、作業服を提供していた「ブルックリンオーバーオール」。そんな確固たる出自に由来する男服は、カジュアルウエアとして現代にDNAを継ぐ。 旧きよきデザインと生地づくりで飽きのこない王道のワークスタイル 40年代の個体をベース...