貴重な本物を大公開! 記憶を宿したメモリアルカバーオールの魅力を『Glad Hand』アートを担うL.さんに学ぶ

近年、様々なブランドからもリリースされているメモリアルジャケット。一説によるとプリンストン大学から始まり、全米に広がったと言われる。究極の一点物でもあり、自由なアイディアが詰まっている。

「L.Head & Co.」L.さん|グラッドハンドを筆頭に様々なブランドや企業のロゴやサインペイントなどを提供。ローブローカルチャーにも精通し、懐古的な作風が得意。

学生たちの寄せ書き文化

近年のヴィンテージウエアの高騰も受けて、メモリアルジャケットなるカルチャーが注目されている。学生たちがチームジャケット的な立ち位置で着ていたカバーオールやラペル付きのジャケットなどに、卒業式や同窓会で集まった際に寄せ書きをする文化があった。当然、ハンドペイントなので一点物であり、ジャケットの他にパンツなどもあり、そのユニークな発想や希少性が受けて、値段が上がっている。今回、そのカルチャーについて聞く絵師のL.さんは、グラッドハンドで10年以上前からこの手のメモリアルジャケットを製作しており、自身が手作業で何千枚と描いてきた。

「その始まりは1910年代初頭のプリンストン大学の学生たちが考案したという一説があります。エリートが集まるアイビーリーガーの一校である彼らに憧れる学生も多かったのでしょう。様々な諸説はありますが、飲み会やパーティの際に自分たちの高価な洋服が汚れないように着ていたこともあり、ビアジャケットと呼ばれるケースもあります。そこから全米に広がっていき、様々な学校の部活動や、独自の文化であるフラタニティで、メモリアルジャケット文化が根付いたようです。

当時の東海岸はヨーロッパの影響も色濃く、秘密結社的なグループもあったようで、その絆の強さやアイデンティティが寄せ書きにも表れています。ベースとなるジャケットや寄せ書きに描いてある年号などで年代判別できるのも、この手のジャケットの醍醐味。特に厳格なルールがあるわけでなく、学生たちの思い思いの自由な発想こそ魅力だと思います」

ピンナップガールが描かれたミリタリー関連のメモリアルジャケット

ヴィンテージ市場でもっとも評価されやすいLeeのカバーオールをベースとしたメモリアルジャケット。Leeは割りかし安価で工場や企業へ白ベースのユニフォームを提供していたので学生にも最適だったのだろう。そのペイントを見ていくと随所にミリタリーを匂わせるモチーフに加えて、ピンナップガールが描かれている。ベースも40年代なので、戦中または戦後に作られたジャケットだろう。

プリントとハンドペイントを組み合わせた見事なアートワーク

希少なハートタグの付いたカーハートのカバーオールをベースにしたメモリアルジャケット。30〜40年代にかけて制作されたもので間違いないだろう。特筆すべきは、スカルや水兵、ベースボール選手などの絵柄はすべてアイロンプリントであること。そこに手書きのメッセージが記されている。ARMYの文字があることからミリタリー関連の学生が作ったと思われ、ウォーアートに近い感覚を感じる。

大学のベースボールチームの軌跡を記した青春の1着

胸に入ったBATES BASEBALLのレタリングから、おそらくメイン州にあるベイツ大学の野球チームが作ったと思われる。この手のメモリアルジャケットは年号が入る場合も多く、当ジャケットには「1939」の記載が。右胸にはそのシーズンの成績が丁寧に書かれ、バックにはチームメイトの寄せ書きと青春を感じる作風だ。バックには日本人の名前が入ってるのもなんとも興味深いところである。

様々なキャラクターが躍動する屈指にアート性に舌を巻く

「今まで見てきたメモリアルジャケットの中でも、絵心溢れる屈指のピースだと思います」とL.さんが評する1着。ベースとなるジャケットのメーカーなどはわからず、ダブルステッチで縫製された簡素なデザインであるが、そこには部活動に励む生徒たちがキャラクタータッチに描かれていて、ポケット部分をうまく使ったレイアウトも秀逸。39と40の文字からこの年を跨いで在籍していたのだろう。バックの大きな絵も見どころだ。

【GLADHAND archive】L.さんが実際に制作したグラッドハンドのアーカイブも拝見!

30年代のチェンジボタン式カバーオールをベースに、フォトグラファーであるYoshiki Suzukiが主宰するピーナッツアンドコーの10周年を記念したスペシャルモデル。すべてL.さんによるハンドペイントにてアートワークが施されている。ヴィンテージと見間違えるようなタッチであるが、学生が使うようなモチーフとは差別化。76,780円(グラッドハンド コア TEL03-6438-9499)

これまでに数々のメモリアルジャケットを制作してきたが、その中でももっとも気合いを入れたというのが、10周年を祝った当作。チェンジボタンを用いたクラシックなカバーオールに、グラッドハンドの世界観をしっかりと落とし込んでいるのがお見事。このジャケットを何十着も生産したが……もちろんすべてハンドペイントで仕上げたというから驚きだ。参考商品。

(出典/「Lightning 2026年4月号 Vol.384」)

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