横丁で飲むオジサンたちを横目に過ごした少年時代。今は自分がそのオジサン。
東京北区赤羽は葛飾区立石と並ぶ横丁の聖地として知られているエリア。荒川を挟んで対岸は埼玉県川口市。東京の北端部に位置し、東京の北の玄関口でもある。
この街も昔から横丁文化が発達していた土地として知られているが、昨今の横丁ブームとして名を挙げるきっかけとなったのが、赤羽に住むリアルな日常をコミカルに描いたエッセイ漫画『東京都北区赤羽』清野とおる著。のちにドキュメン タリー風、いわゆるモキュメンタリードラマとして放送されたことが大いに後押ししたに違いない。
そのため、現在はちょっとした東京の観光名所のような賑わいを見せており、少し横丁を歩けば、若い女性グループやカップルなども多く横丁の雰囲気を楽しんでいるようだ。かと言って常連さんたち がいないかというとそうでもなく、夕方の明るい時間帯から、酒を楽しむ中年、年配勢も多数。幅広い年齢層が入り混じるサマは街として独特な印象だ。
そんな横丁の賑わいを横目に静かに大人の酒を楽しむのはツノカワファーム代表の角川さん。
「ボクはもともと地元が赤羽なんです。赤羽で生まれ育ったので、よくこの辺で友達なんかと遊んでましたよ。だから、この街で飲むのが一番しっくりくるんです。なんか普通ですみません」
とはいえ遊び回っていたのは未成年の少年時代。成人して大人になる頃には、アパレル会社で勤務していたこともあり、自然と渋谷、原宿など職場に近い土地で飲む機会が多くなっ ていったという。それは故意に地元を避けていた訳ではなく社会人の宿命だろう。
「大手アパレルメーカーから独立して14年になるんですが、仕事のベースをこっちに移してからは、地元の赤羽で飲むことばかりです。やっぱり気持ち的に余裕を持てますよね。渋谷界隈と違って周りに同業者や取引先さんが飲んでいる確率も格段に低いですし、別に悪いことをしている訳ではないですが、周りをキョロキョロしながら飲まなくていい(笑)。
もしもの時の粗相があってはいけませんからね。その点、赤羽は地元ということもあるし、住んでいる家もオフィスも近いし、ほんとに酒を飲むのに気を遣わなくていい。いつでも自然体でいられて、気楽なんですよ。だからこそ、仕事終わりの一杯が格段に美味い」
ごもっとも。ただただ共感するばかりの角川さんの呑兵衛論。
さて今回の舞台となった北区赤羽。まず驚いたのは、JR赤羽駅の改札を出て、駅ターミナルのコンビニに生ビールサーバーが設置されており、駆けつけ一杯、生ビールが飲めること。さすがは横丁の聖地、赤羽。
ちなみにレモンサワーも同様にサーバーが設置してあり、呑兵衛ウェルカムな街の雰囲気に早くも酔い知れることができた。角川さんの行きつけは南口改札から徒歩1分の友人がオーナーを務める「カドナシヤ」。
「赤羽は昔からせんべろの店。千円でベロベロに酔える価格帯の安居酒屋が多くあることでも有名なんです。もちろん、ボクも若い頃はお世話になっていたクチですが、安さ早さ重視では、落ち着いてお酒が飲めないので、自分流にゆっくりと飲める店で飲むことが多くなりましたね。
ボクは自宅ではほとんど酒を飲まないので、仕事終わりに夕飯を外で済ませちゃう。そんなノリです。深酒もしなくなりましたね」
横丁の雑多な雰囲気とは異なり、やや落ち着いた印象を受ける角川さんの行きつけ。決まって注文するのは、大根がマストのおでんと天ぷら。おでん同様、天ぷらも海老一本から注文できる自由なスタイルが、角川さんにとってちょうど良いのだとか。
やっぱり地元で飲む酒が一番美味い! 角川さんの一番街&OK横丁行きつけ店。
【一番街】FUJIKO
東京を代表する横丁、赤羽「一番街」。居酒屋が続くアーケード内には友人が店主を務めるカドナシヤの系列店「FUJIKO」がある。
【DATA】
FUJIKO
東京都北区赤羽1-22-10
TEL03-6454-4385
営業/17時~24時
休み/日曜
【OK横丁】カドナシヤ
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