ハワイをイメージしてアメリカで誕生したTIKIバーが神戸に。
神戸の北野坂を上っていくと、入口に向かい合った2匹の象の像がある。神戸で知らない人はいない象ビルヂング、通称「象ビル」だ。かなり古いビルで、入口にかかっている時計は、1995年の阪神・淡路大震災が起こった時間から止まったままだ。このビルの4階奥に、白い扉が隠れ戸のように佇んでいる。ここがTIKIバー「THE KAZAN ROOM」だ。
まずTIKIバーについて話しておこう。TIKIバーとは、環太平洋(ハワイ、タヒチ、マオリ、イースター島など)に憧れを持ったアメリカ人が、こんな感じのところなのではないかとイメージした空間のカリフォルニア発祥のバースタイル。アメリカには約120店舗、世界でも約170店舗、日本では沖縄、岡山、東京、そして神戸のTHE KAZAN ROOMの4店舗しかないという。
TIKIはハワイの木彫りや石で作られた神の像のことで、古代ポリネシア時代にTIKIを偶像として祀り崇められていた。TIKIバーではそれぞれオリジナルのTIKIマグを作っており、それでカクテルを飲むのもスタイルひとつ。店によってそれぞれの解釈とオリジナリティを加えているので、TIKIバー好きの中では、コレクションをしている人もいるとか。
また禁酒法時代、カリブ海全域で生産されていたラム酒が人気だったことから、ラム酒をベースにしたカクテルが定番なのも特徴といえるだろう。
さて、THE KAZAN ROOMに戻ろう。オーナーのブランドンさんとキムさん夫妻がTIKIバーをオープンするきっかけになったのは、ハネムーンで訪れたハワイで入ったTIKIバーだった。その世界観にすっかりハマってしまった2人は、世界のTIKIバーを巡り、自作でシロップやカクテルを研究。
それを作っては自分たちだけで楽しんでいたそうだ。そしてお店を持ちたいと、キムさんが英会話の講師として勤務していた神戸に、THE KAZAN ROOMをオープンしたのだ。
ここで飲めるカクテルは、1940~1970年代に誕生した伝統的なカクテル。当時のレシピを忠実に再現しており、さらにシロップやドライフルーツなどは自家製にこだわるなど本格派。使われているフルーツもフレッシュで、アルコール度数は高いけれど、ジュース感覚で飲めてしまうから危険だ。さらにオリジナルのカクテルや毎月変わるスペシャルカクテルも用意するなど、ここにしかない味も楽しめるのも嬉しい。
まだオリジナルのTIKIマグはないが、店名でもある“火山”をイメージしたオリジナルグラスは店の雰囲気にも合っている。ちなみにオリジナルTIKIマグは、オープン1周年記念として作る予定で、どんなマグが出来上がるのか楽しみでしかない。日本ではなかなか出会えないTIKIバー。一度入ったら、その独特な世界観にきっとハマること間違いなしだ。
THE KAZAN ROOMで飲めるおすすめカクテル。
KOKOBE
ウィスキーをベースにパイナップル、ココナッツ、ライムが入ったオリジナルカクテル。本物のパイナップルを贅沢に使った見た目にもハワイアン! 1500円
ZOMBIE PUNCH
1950年にロサンジェルスで誕生したカクテル。3種類のラムとパッションフルーツ、パイナップル、ライム、レモン、ビターズをミックス。フルーティーで飲みやすい。1600円
JET PILOT
1950年代にビバリーヒルズで誕生。2種類のラムをベースに自家製のファレナルムというシロップ、シナモンなどを加えている。シナモンに火を付けてファイヤー! 1500円
【DATA】
THE KAZAN ROOM
兵庫県神戸市中央区中山手通1-22-10 4F
営業/18:00~24:00
休み/日・月曜
@thekazanroom
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2023年5月号 Vol.349」)
Text/M.Matsumoto 松本めぐみ Photo/K.Ihara 井原完輔
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