【リノベーション倉庫⑪】大谷石の元倉庫群を改装した、素材感で魅せる大空間モール。|栃木・宇都宮

宇都宮の市街地から少し離れた郊外に建つ、大谷石で作られた倉庫群。3棟3様のたたずまいを活かしたリノベーションを施し、大空間が楽しめるモールへと変身。セレクトショップや美容室が入店し、新たな魅力を発信している。

大谷石と鉄骨の無機質なコントラストが唯一無二のモール。

宇都宮市街地から少し外れた下川俣町。住宅や田畑が入り混じる、ちょっとした郊外のこの場所に、鉄骨造で壁材
に大谷石を使った倉庫が3棟ある。

木組みの屋根下地に鉄骨トラス梁、壁は大谷石という、素っ気ないほどシンプルな構造を持つ。無骨な中に素朴な魅力を感じられる

それぞれ大きなひさしを持ち、広い敷地の中、L字に囲むように配置されたこの場所は、寂れた倉庫群から華やかな店舗群へと生まれ変わった大空間。内装は基本的に大谷石むき出し、鉄骨むき出し、屋根下地むき出し。しかもよく見ると文字や数字が走り書きされ、かつての倉庫時代を物語る。しかしその荒々しさが逆にアジトのような、好奇心をくすぐる味わい深い雰囲気を醸し出している。

大谷石は、栃木県宇都宮市北西部の大谷町付近一帯で採掘される石材だけあり、この倉庫ならではの表情として上手く活用されている

全区画5店舗のモールには、セレクトショップや創作和食の店があり、異業種同士の多彩な顔ぶれを見せる。この場所に集う店舗に共通するのは、「この敷地の、大谷石倉庫の雰囲気が好き」という思い。同じ好みのモノ同士が集った場所だからこそ、個性あふれる面々の世界観はそのままに、ゆるやかで居心地のよい場所を築き上げている。

ポーラスに集まった個性ある店舗たち。それらが隣近所という関係性をつくりながら、大谷石の倉庫群を舞台に、居心地のよい場所をつくりあげている

使う人が魅力的なら、倉庫は自ずと魅力的になる。そんな思いから、壁材として積み上げられた大谷石の多孔質になぞらえ、この場所は「ポーラス」という名前が付けられた。たくさんの孔が吸収性を生み出すように、いろんな人が集まって、余地がいっぱいの倉庫にいろんな色や匂いが吸収されていく。そんな懐の深い場所になってほしいという願いは、いま確実に叶えられえている。

セレクトショップ「HoBow」

大谷石倉庫群の雰囲気に惹かれ、ポーラスに出店を決めたというセレクトショップ「HoBow」。その店舗は緑色に塗られた美しいトビラが目印。

洋服や雑貨を扱うため、大谷石特有のもろくて細かい粉じんは大敵だったという。そこでリノベーションの際、壁一面にニスを塗装した。作業は大変だったというが、大谷石がもたらす美しい雰囲気は何物にも代えがたかったそうだ。もちろん大谷石は店内の商品展示にも有効活用されている。

【DATA】
HoBow
TEL028-660-7112
http://hobow1984.com

 

大谷町ならではの大谷石を使った倉庫群。その素朴な魅力を持つ大空間には、モールとして活用することで新たな魅力が宿った。また人の心を楽しませる“衣”や“食” が存分に堪能できるので、大谷石倉庫の景観とともに味わってみてほしい。

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(出典/「Lightning 2018年2月号 Vol.286」)

この記事を書いた人
めぐミルク
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めぐミルク

手仕事大好きDIY女子

文房具、デザイン、ニッポンカルチャーなどのジャンルレスな雑誌編集を経てLightningへ。共通しているのはとにかくプロダクツが好きだということ。取材に行くたび、旅行するたびに欲しいものは即決で買ってしまうという散財グセがある。Lightningでは飲食、ハウジング、インテリアなどを担当。
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