決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。

硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地

1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求し、進化を続けてきた「市松」。その技術のひとつが「合わせ金」だ。

金属同士をロウ付けして接着することで、表面と裏面を別の金属で構成するという技法で、これまでは、純金・純銀・純プラチナの3種から自由に組み合わせてオーダーすることができた。これらの組み合わせも当然非常に難しいのだが、それぞれの金属の硬さが近しいため、制作が成功した。

しかし、「市松」が新たに辿り着いた境地は、当初不可能だと思われていた、さらに難度の高い技法。

それは、硬さが異なる18金と純プラチナを接着するというもの。性質が異なる水と油のような2種の金属は、製作工程においても全く言うことを聞かず、コントロールできるのは職人の坂入大士さんがこれまでに積み上げてきたノウハウと技術あってこそ。すべては「市松」を求める人が選べるバリエーションを増やすため。

手と手を合わせる「祈り」や「(様々な意味における)ふたりの関係」を表す「合わせ金」の技法と、ブランドの歴史において重要な18金の融合。これは「市松」の新たな到達点である。

独自の配合による色味が特徴の18金を表面に、純プラチナを裏面に配して合わせた。左から[K18(イエローゴールド)×platina1000 5.5mmリング]、[K18(ブラックゴールド)×platina1000 3.6mmリング]、[K18(グリーンゴールド)×platina1000 3.0mmリング]、[K18(シャンパンゴールド)×platina1000 4.5mmリング]、[K18(ピンクゴールド)×platina1000 2.5mmリング] 各24万円〜(組み合わせ方や幅、サイズにより変動)

合わせ金の工程とは

板状の金属から手で切り出した2枚を接着させる「合わせ金」。特に18金と純プラチナは硬度が異なるため、特に難度が高い。

1.写真左がカットする前の状態。それを職人の坂入さんがオーダーサイズに合わせ、糸ノコで写真右側のような状態に切り出す。素材のカットから職人自身が手がけることは稀である。

2.木槌で形を整えたあと、小さなシルバーをロウ代わりに金属同士を接着させる。

3.しっかりロウを溶かして接着。この段階ではそれぞれの金属がうまく噛み合わないため、木槌を使って形を調整していく。

4.熱したり木槌で叩いたりすることによって、ぴったりと2種の金属が噛み合った状態。しかし、18金は軟らかく純プラチナは硬いため、このあとの工程のなかで割れたりすることも。

5.木槌をリング状に丸めて、その切れ目にロウを入れて接着。撮影時にも、予想できないタイミングでこの切れ目が開いたり閉じたりと、まるで生き物。

6.「市松」ならではの鎚目を付けていく工程。このタイミングや、仕上げの刻印入れのタイミングで割れてしまうこともあるという。

市松/職人坂入大士さん|「市松」を生み出した職人であり、工房のある南葉山にて28年間アクセサリーを製作し続けている。これまでに作ってきた総数は5万点以上にも及ぶという

オーダーはベルーリア鎌倉店で

「合わせ金」も含め、すべてのサンプルを揃える「ベルーリア鎌倉店」。リングは0号から0.5号刻み、バングルは実寸1mm単位でオーダー可。

【問い合わせ】ベルーリア鎌倉@belluria神奈川県鎌倉市長谷2-20-32TEL0467-22-256612:00〜18:00 不定休(要予約)@ichimatsu_accessory

(出典/「2nd 2026年1月号 Vol.216」)

この記事を書いた人
パピー高野
この記事を書いた人

パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

メイド・イン・ノーサンプトンを貫く英国靴の筆頭「Crockett & Jones」のモノづくり

  • 2026.10.21

革靴の聖地であるノーサンプトンにて1879年に初声をあげた〈クロケット&ジョーンズ〉。英国靴を語る上で欠かすことのできない同ブランドのモノづくりの現場に足を運んだ。 一足の革靴に宿る147年の歴史と誇り 革靴産業の一大拠点として名を馳せる英国・ノーサンプトン。中世から靴職人が集まり、17世紀には軍用...

原毛から生地まで。一貫生産を守る英国生地の名門「ムーン」とは?

  • 2026.10.19

服を突き詰めていくと辿り着くのが生地。トラッド好きなら一度は耳にしたことがあるであろう英国の名門が「ムーン」だ。羊毛から紡績、染色、織布を一貫して行う英国最後の生地メーカーが誇る伝統のモノづくりに迫る。(写真は、生地の製造において重要な“織り”の工程。タテ糸とヨコ糸をゆっくりと交差させ、チェック柄が...

気鋭のアイウエアブランド「CUBITTS」が描く、クラシックとモダンの共鳴

  • 2026.10.19

18世紀から20世紀にかけて眼鏡産業の世界的な中心地であったものの戦後、衰退の一途を辿ったロンドン。この地で2013年に創業した「キュービッツ」は当時を彷彿とさせるクラシックスタイルをモダンに昇華させた独自の世界観を築く気鋭のブランドだ。 伝統と現代とを繋ぐアイウエアの研究所 「キュービッツ」は伝統...

「BEORMA」140年の伝統を受け継ぐ、英国屈指のレザークラフト

  • 2026.10.21

英国トラッドを語るうえで欠かすことのできない存在がレザークラフトだ。140年の歴史とクラフトマンシップを受け継ぎ、現代のスタイルにも馴染む唯一無二のプロダクトを生み出す〈べオーマ〉は、その筆頭となりうる存在だ。 熟練職人の魂宿る伝統のレザークラフト 英国中部の小さな町・ウォルソール。革加工・馬具産業...

東洋エンタープライズが手がける「ゴールド」。高品質な素材選びに一切の妥協なし。

  • 2026.10.20

1965年に創業した日本屈指の老舗メーカー東洋エンタープライズ社が手がける〈ゴールド〉。同社が得意とするヴィンテージへの膨大な知見と技術力の高さを活かしつつも上質にモダナイズしたものづくりに定評がある。着用時のシルエットはもちろん、高品質な素材選びに一切の妥協をしないこと。それこそがシンプルな服に深...

Pick Up おすすめ記事

世界最高峰のニットメーカー「JOHN SMEDLEY」が編むもの。

  • 2026.10.20

イングランド中部、リーミルズの自社工場で240年以上前からニットウエアを作り続ける〈ジョン スメドレー〉。1784年に創業した同ブランドが編んできた歴史と伝統が息づく場所で彼らが編むものとは。 240年の伝統と魂が息づくファクトリー 英国のトラッドブランドとして群を抜く歴史を持つのが〈ジョン スメド...

19世紀から英国紳士に愛され続ける世界最高峰のハンドメイド傘

  • 2026.10.19

年間を通じて降水頻度が高い英国において傘は必需品。ひいては英国紳士を象徴するプロダクトのひとつだ。その中でも、旧くから英国王室や上流階級の紳士たちに愛されてきたFOX UMBRELLAS(フォックス アンブレラズ)は最上級の存在である。 手作業から生まれる圧倒的な造形美 真のトラッド好きは服だけでな...

東洋エンタープライズが手がける「ゴールド」。高品質な素材選びに一切の妥協なし。

  • 2026.10.20

1965年に創業した日本屈指の老舗メーカー東洋エンタープライズ社が手がける〈ゴールド〉。同社が得意とするヴィンテージへの膨大な知見と技術力の高さを活かしつつも上質にモダナイズしたものづくりに定評がある。着用時のシルエットはもちろん、高品質な素材選びに一切の妥協をしないこと。それこそがシンプルな服に深...

金子ノブアキが着る【REDKAP × FREAK’S STORE】

  • 2026.10.21

長い歴史を持つワークウエアブランド〈レッドキャップ〉と〈フリークス ストア〉のコラボアイテムを金子ノブアキが今の感覚で着こなす。年齢を重ねたからこそ楽しめる服のこと、ブランドが持つ哲学のこと、そしてこれから大切にしていきたいこと。45歳を迎えた金子さんに、ファッションと生き方について話を聞いた。 タ...

HISTORY OF B.V.D. 着心地を追求した150年

  • 2026.10.20

1876年、ニューヨークで誕生したB.V.D.。風を通すゆったりとした肌着から、水着、街や休日を彩るシャツまで。その歩みを貫くのは、日々を心地よく過ごすための工夫だ。時代ごとの広告や製品を手がかりに、着心地を追求してきた150年をたどる。 HISTORY OF B.V.D. 1876年 ニューヨーク...