発売から半世紀。「BELSTAFF」のトライアルマスターは時代を超えて語り継ぐべきプロダクツ。

1959年に誕生したBELSTAFFのトライアルマスターは、そのネーミングの通り、バイクのトライアル競技のために作られたプロフェッショナルのためのツール。発売から半世紀以上の時を重ねても、その機能美は失われることなく、名作として愛され続けている。そんなマスターピースが生まれた背景を探りたい。

過酷な環境下を走り抜くための名作モーターサイクルジャケット。

舗装されていない道を走り抜くトライアル競技に必要とされる機能美が落とし込まれ、すべてのディテールに意味のあるトライアルマスター。このジャケットが生まれた1950年代は天然繊維から化学繊維への移行期であるが、当作はオイルドクロスを筆頭に、アナログな機能素材を駆使した。だからこそ今も愛され続けている。

飽くなき素材と機能性への追求心が名作を生んだ。

トライアルマスターを語る前に、まずはBELSTAFFの歴史を振り返りたい。なぜならトライアルマスターは、当社の創業時からのアイデンティティと英国文化のひとつであるモーターサイクルや気候が、絡み合ったからこそ生まれたプロダクトであるからだ。創業されたのは、今から100年ほど前の1924年。ユダヤ系移民であったイーライ・ベロヴィッチとハリー・グロスバーグが、雨の多い気候である英国でニーズの高い防水ファブリックを独自技術で開発し、創業へとこぎつけたのだ。当初は防水性や実用性を重視したマントやレギンスなどを展開。

転機となったのが1928年。独自の防水ファブリックを使った初となるモーターサイクルウエアをリリースした。今でこそ影を潜めてしまっているが、当時のイギリスは数々の名門バイクメーカーが存在し、20年代から50年代にかけては黄金期となっており、世界を牽引する存在であった。また当社は、1920年代後半には軍隊を統括する省庁と契約を結び、コントラクターとして活躍。最初期のフライングスーツや第二次世界大戦時にはグラウンドシートとも使えるケープなどを納めており、70年代に至るまでその協力関係は続いていた。ミリタリーウエアの生産を行うことで資金面はもちろん、クオリティファーストのモノ作りへ一層の磨きが掛かったことは間違いないだろう。

アーカイブを見てわかるように、30〜40年代の当社のモーターサイクルウエアは膝下まであるコートタイプがメイン。一方でアメリカでは飛行服から着想されたアビエイタータイプのライダースジャケットが台頭する。戦後には映画『乱暴者』の影響もあり、全世界に着丈の短いスポーティなモーターサイクルウエアが流行となる。その流れをきっちりと汲み取ったのが、1953年にパラコム53ジャケット。これはブランド初となる腰丈でジッパーを採用したモーターサイクルジャケットで、いわばトライアルマスターの原型となったモデル。セットアップで同じ素材の防水トラウザースを展開した点も同じだ。また同時代には皮革を用いたライダースも展開しており、英国のモーターサイクルウエアブランドとして飛び抜けた存在になったのは間違いない。

そして60年代に世界中で大流行するダートレースを予見したかのように、1959年にトライアルマスターが登場。スティーブ・マックイーンが愛用したことでも有名でその卓越した機能美はプロライダーからも絶賛された。

【1924-30s】独自の防水生からすべてが始まる。

1924年にイギリス・ストーク=オン=トレントで創業されたBELSTAFFは、オイルドクロスやゴム引きなどの独自の防水生地を作ることからスタート。当初はマントやレギンスなどを生産していたが1928年に、初となるモーターサイクルコートをリリースした。写真は1932年の広告に登場したシニアTTコンペティションコート。防風を目的としたコーティングが施された生地でウールのライナーだ。

【1940s】モーターサイクルコートブランドへ進化。

1928年以来、数々のヒット作を輩出していく。この時代には代名詞であるオイルドクロスのモデルも散見され、モーターサイクルウエアブランドとしての地位が確立された。WWⅡ時は軍への支給品に追われ、一般向けの製品の生産が止まったそうだ。写真は1940年代のスーパーシニアストームコート。オイルドクロスを使い、革新的な4層構造により、保温性、防水性、防風性を兼ねた。

創業時はケープやリュックサックなどの生産をしていたため、軍へバッグ類も支給していた。これは第二次世界大戦時の英国陸軍。

【1950s】時代の流れを汲み、コートからジャケットへ。

戦後のアメリカでは英国車の人気がさらに高まり、多くのバイクが輸出された。アメリカでは短丈のライダースジャケットが主流となったことで、その流れは英国にも波及し、1953年には初となるミドル丈モデルを発売。コートからジャケットへシフトしていく。

1954年のカタログには、ミドル丈の初期作であるブラックプリンスが。上はTTコンペティションコートを短丈にアレンジしたもの。

1950年代にはレザー製のジャケットにも注力していく。英国では定番の襟付きのシングルライダースは、シープスキンを使っている。

1950年にリリースされていたモンタナジャケットは、アメリカのライダースジャケットから影響を受けている。シープスキン製。

【1959】名作トライアルマスターの誕生。

映画『乱暴者』の影響もあり、英国でも59CLUBに代表されるユースカルチャーが形成される。その一方で対極となる競技的なモータースポーツも盛り上がる予兆があった。これまで培ってきた技術を投影し、ダート競技向けに生まれたのがトライアルマスターだ。上のジャケットは、なんとスティーブ・マックイーンが実際に愛用していたトライアルマスター。これを着用し、レースに参加した。

最初期となるトライアルマスターのセットアップ。広告にもあるように競技向けのモデルのため、セットアップで提案。

名作ジャケットの現在もチェック! 2025-2026 AW COLLECTION

TRIALMASTER

地図や工具を入れるための4つのポケット、風のバタつきを抑えるウエストベルト、保温性を考慮したコーデュロイを配したスタンドカラーなど、機能美に裏付けられたデザインの結晶である名作ジャケット。英国のミラーレーン社のオイルドクロスを使っており、その伝統を守り続けている。¥99,000

RACEMASTER

トライアルマスターのショートバージョンとして1981年に発表。本家と胸ポケットの意匠こそ同じであるが、よりスポーティな印象に。シェルには、ミラーレーン社の6オンスワックスコットンを使い、サイドのベルトや下部のスナップボタンなど独自のデザイン。黒、紺、オリーブの展開。¥82,500

INCLINE JACKET

フィールドジャケットから着想を得たモダンなニューモデル。左右非対称な3つポケットのデザインで表地には伝統的な英国製6オンスのワックスコットンを仕様。裏地にはアイコニックなチャック柄のコットンツイルを配しているので、保温性も高い。襟にはコーデュロイを配している。¥83,600

ICON GILET

英国らしい上品なキルティングパターンが際立つジレは、単体で着れることは言わずもがな、スナップボタンでトライアルマスターなどのアウターに装着することもできるユーティリティなモデル。フラップ付きのポケットなど、モーターサイクル的な要素も盛り込まれている隠れた名品だ。¥46,200

【問い合わせ】
OUTER LIMITS
https://outerlimits.co.jp

(出典/「CLUTCH Magazine 2026年2月号 Vol.102」)

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