ドレスコードもクリアする、ワークウエアではないデニムジャケットを作りたい。
古くは英国の伝統的メジャートゥメイドの「ビスポークティラァドジャケット」それを、ビジネスマンの仕事道具として? 合理的に解釈? した、米国の「サックスーツ」。男の色気? パーソナルスタイルとしての伊国のサルトリアテーラーリング。
世界にはその国独自の文化としてのテーラードジャケットスタイルがあるおもいますねん。ある意味背広の民俗衣装? ほんで、日本には『日本の昭和の背広』がありますやろ。昭和の時代、わたしら、子供の時代、日本の街ごとに、小さな洋服仕立て屋さんおましたわな。職人のおっちゃん、おばちゃんが手作りで縫い上げる背広。
わたしの手元に、わたしの父親が着てた背広上下ありますねんけど、それはそれはこれでもか! ゆうくらいコリに凝った? 作り方してます。今、この作りで既成背広作ったらナンボになる? びっくりする値段になりますやろな。
ハンドメイドの凝りに凝った背広。ビジネスマンの仕事の道具としての背広。最近は、スーツ作りにもコンピュータが使われる時代。令和のフツーの背広、味も色気もあらしまへんな。ただのサラリーマンの仕事着やんけ。
ひょんな事で、世界的大ヒットしてしもた、わたしの考えたインディゴデニムジーンズ。コレクションとしては、昔ながらのGジャンやカバーオール、ワークジャケットもこさえていきますわ。インディゴデニムウエア、本来はワークウエア。肉体労働者や工場でモノづくりする職人さんの為の、丈夫で長持ち、汚れたら洗濯機に放り込んで洗って乾かしてまたすぐ着て仕事する為の衣料品ですわ。
そんなワークウエアマテリアルのインディゴデニムで、オシャレで、エレガントでシュッとしてるやん! な、ドレスコード付き敷居の高い(笑)レストランにも着ていけるテーラードジャケット作られへんか? ずっと、考えてましてん。
やる気と本気、強い思いで完成させる唯一無二なモノづくり。
まず最初に作ったのは、P社のテーラードカラーシャツジャケット風のシンプルなもの。1994年発行の一番最初のカタログにも載ってます。簡単にゆうと、テーラードカラーのカバーオール。カバーオールはややこしいのんこさえてたし、作るにはそない難儀もしまへんわ。それでも、テーラードカラーゆうだけでオシャレにはみえましたわな。定番アイテムとして、ずっと、作り続けてました。
本格的背広としてのデニムの背広は、まず、インディゴ染めのウール糸を作って、インディゴのウール生地を織ってもろて、三つボタン段返りスーツを作ったのが最初。もちろん、テーラードスーツ工場で作りました。この時、ミシンがインディゴで汚れて困る、工場からクレームきましてん。売れたんやけど、追加生産は不可! でした。(笑)
ウールのインディゴデニム生地を織るゆう、かなりの冒険から始まった、インディゴデニムの背広作り。そのインディゴウールデニムの背広もインディゴでミシンが汚れて、大変や、ゆう理由で追加もできず、幻のモデルになってしもたし。
その後、大阪の老舗テーラードメーカーさんとコラボレーションで、お互いにいろんなもん、こさえるゆう企画がまとまって、その老舗テーラードメーカーの工場でインディゴデニムの背広こさえてもらいました。
仕立ては、昔ながらの大見返しのアンコンストラクテッドスタイル、肩パッドやら芯地のない背広にしましてん。カチカチのオリジナル14.5オンスデニムやし、肩パッドやら芯地入れて縫うのんたいへんやし、洗濯機で洗えてインディゴデニムの色落ちも楽しめるゆうコンセプトからのアンコンストラクテッド仕立て。これはえぇアイデアで、その後の背広つくりは、すべてこの仕立て採用してます。流石の老舗工場の大見返し仕立て。めっちゃえーのんできて、すぐSOLD OUTしたものの、やはり、ミシンがインディゴで真っ黒? 真っ青? になるて、またも、クレーム。追加生産できひんようになってもたやん。
そんな紆余曲折? あって、小さな縫製所の職人さんに、デニムジャケットこさえてもらえるようになったんが、12年ほど前。ただ、この頃は防縮加工施したデニムやストレッチデニムつこてました。もちろん洗濯機乾燥機かけても平気なデニムの背広。これで完成やゆうたら完成の域まではいった? わたしの長女の結婚式は、この工場でこさえたインディゴコットンデニムのタキシードで行きましたで。インディゴデニムタキシード来た花嫁の父はおそらく世界初ですやろな。(笑)
コットンインディゴデニム、究極なんは、未防縮の生機デニム。このクセあり未防縮デニムで、背広作るのは、なかなか難しい。デニムて綾織。縮むとえらい捻れまんねん。この捻れが味と言えば味、ですねんけど。背広で捻れすぎるのは、身頃センターグリンとずれますやろ。前のボタンあっち向いてホイはちょっと具合悪い。そでもグリンと捻れて袖のボタン上に来たらなぁ。かっこ悪いやん。未防縮の味アリクセアリインディゴデニムでシュッとした背広作る方法、ある時、ふと、わかりましてん。簡単やん。昔からの背広作る方法でできますねん。つまりは日本の昭和の背広仕立て屋さんの技。
ただ、そんなことしてくれる工場さんでインディゴデニム縫うてくれるところ、ないことはないんやけど、1着あたり、えらい工賃高い。そらそやわ。1着ずつ裁断して、ひと手間ふた手間? かけてから縫い上げなあかん。普通に売れる値段やなくなるやん。ほなどないすんねん? 自分でミシン揃えて工場つくらなあかんやん。それしかおまへんやろ。工場できても、縫製できる職人さんおらなあかんやん。
いよいよ、自分で縫う? そない思うてたら、なぜか! 縫製大好きWOMAN「KAIRI」が入社してきた。ほんまの偶然。大阪のファッション専門学校でて、広島の縫製工場で修行。背広は縫うた事なかったけど、研究に研究重ねて今や完璧なん縫いあげよる。おそらく日本で1番若い背広縫製職人。
不思議な縁でこさえてるYAMANE JAPANESE DENIMSの名物インディゴデニムの背広。今や、縮率の違うインディゴデニムのクレイジーバージョンまで作れるようになってまんねん。
【DATA】
YAMANE JAPANESE DENIMS
https://yamaneart.base.shop
(出典/「CLUTCH2023年11月号 Vol.93」)
Photo by Masahiro Nagata 永田雅裕 Text by Hidehiko Yamane 山根英彦 Tamaki Itakura 板倉環
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