路面状況は最悪……予選走行で岩城さん転倒
一昨年、73歳にしてレース活動を再開した岩城滉一さん。昨年はアメリカンバイクによるクラシックレース「AVCC」に参戦。メカニックは、かつて「スポーツスターカップ」でライバルだった「バーン! H-Dスポーツ」代表の奥川潔さんだ。4月の開幕戦では、チームメイトの大浦さんが1位、岩城さんが3位を獲得。復帰戦から早くも大きな話題を呼んだ。
「70歳の時に体調を崩して倒れたことで、新たな『目標』ができたんだよ。『いつかやろう』じゃなくて『もうやらなきゃ』ってね。今一番の願いは、レースを面白くして、いろんな人に観に来てもらうこと。次に狙うのはチームでワンツーフィニッシュだね!」
11月9日の最終戦前に意気込みを語っていた岩城さん。決勝当日は悪天候が予想されていた。
「雨のレースで今まで勝ってきてるから、割と得意なんだよ(笑)」
岩城さんが参戦するCSSCクラスの車両は、装着できるレインタイヤがなく、ノーマルタイヤで走行しなければならない。しかし、マシンのコントロール能力に定評がある岩城さんは、むしろ勝機を感じていた。
決勝当日は、朝から雨が降ったり止んだりの悪条件だったが、だからこそ頑張りたいという。
「せっかくレースを観に来てくれる人たちがいるからね、しょぼい走りはしたくない」
雨と寒さの中でも、モチベーションは高いまま。サスペンションの柔らかさやブレーキの遊び、スプロケットなど雨仕様にセットして予選に挑んだ。
スタート序盤は好調。アグレッシブな走りで2位につけていた。問題は4周目、ダンロップコーナー明けのS字コーナーで起こった、ゼブラゾーンに接触し、そのまま転倒してしまったのだ。
「速度を落としすぎちゃって、クリッピングポイントが内側に寄りすぎてしまった。それでゼブラに乗っかっちゃったんだよね」
冷静に分析するが、転倒時にハンドルに左手が挟まってしまい、中指を骨折。みるみる腫れ上がってしまったが、予選は2位通過と聞いて、岩城さんは当たり前のように決勝に挑む意志をみせた。
決勝に向けて、奥川さんが急ピッチでマシンの修復作業を進める。一方、腫れた左手をグローブに収めるべく、その場で加工が施された。岩城さんもチームメンバーも心は折れていない。出走するだけじゃなく、勝ちに行くつもりだ。
「クラッチが握れないなら、握らなきゃいいじゃん。スタートはしょうがないけど(笑)」
岩城さんの闘志の強さに、チームの士気も高まる。テントにはチームを激励する人たちであふれた。
そうして臨んだ決勝。セカンドグリッドに着くも、序盤は4位まで後退。先頭集団に食らい付き、チャンスを狙っていた。すると2周目、2位につけていたチームメイトの大浦さんが転倒。チームでワンツーフィニッシュは難しくなったが、岩城さんの表彰台を狙う意志はより強くなったという。
こうして岩城さんはファイナルラップで2位まで浮上。第2ヘアピンを抜けて、トップを狙えると確信し、最終コーナーで勝負をかけた。オーバースピード気味でコーナーに侵入し、そのままトップを抜き去り逆転優勝。レース実況、観客席も歓声と拍手で沸いた。
「無事に終わってよかった。皆のおかげだよ。レースが終われば皆仲間だから感謝してる。喜寿、77歳まで走りたいよね。狙ってるよワンツー。もっとレースを盛り上げていきたいしね(笑)」

伝説となった雨の筑波サーキット

CSSCクラスは、「XR750」や「XR1000」、キャブレター仕様の「スポーツスター」を対象としたカテゴリー。装着できるレインタイヤがなく、ノーマルタイヤで走行しなければならない。さらにコース上には水が溜まりやすい場所とそうでない場所が点在し、降水量によって路面状況は刻一刻と変化する。そんな雨天時はエンジンやタイヤの性能差以上に、ライダーの判断力と操作技術、レースの経験値が勝敗を分ける。マシンのコントロール能力に長けた岩城さんは、「雨のレースに強いから勝てる」と語っていた通り、雨の筑波サーキットで伝説を残した。

予選の序盤、ゼッケンナンバー#51の岩城さんは快調。チームメンバー#50の大浦聡選手、#30の「バーン! H-Dスポーツ」チームの伊藤昌史選手とトップ争いに。決勝のポールポジションを狙って激戦となった。
予選走行で岩城さん転倒!

予選4周目、ダンロップコーナー立ち上がりのS字コーナーで、岩城さんのマシンがゼブラゾーンに触れ、スリップダウン。転倒により左手を負傷するも、予選は2位で通過となった。
転倒により指を骨折してしまう

転倒の際、ハンドルが左手の上に乗り、左手中指を骨折。周囲に心配をかけまいと笑顔を見せていた岩城さんだったが、アイシングを施しても腫れは引かず、グローブを着用できないほどに、みるみる腫れ上がっていった。
負傷しながらも最終レースに出場 !

いよいよ決勝。マシンの調整を終えてスターティンググリッドへ。決勝に挑む岩城さんは、笑顔で多くの声援に応えていた。

テントでは決勝に向けて破損箇所の修理が進む。クラッチ操作があまりできないため、クラッチレバーの調整なども急ピッチで行われた。

決勝前、負傷しながらも勝負に挑む岩城さんの激励のため、メインスポンサーであるKMT代表の森塚計介さんがテントを訪れ、固い握手を交わす。
出遅れたものの、最終的にトップでゴール !

セカンドグリッドでスタートしたが、出遅れて4位まで後退。徐々に順位を上げ、#50の大浦選手、#30の伊藤選手、#3の「ファーストアローズ」の伊藤一也選手とトップ争いとなった。
ここぞという時に勝負強さを見せた岩城さん。表彰台の頂点に立つ!

波乱のレースを制し、表彰台の頂点に立った岩城さん。77歳の喜寿までトップを目指して走り続けると宣言し、レースを支えたスタッフ、声援を送ってくれたファン、ライバルたちへ感謝の言葉を贈った。
51GARAGE supported by KMT INC

65歳を機にレース活動から引退していた岩城滉一さん。2024年、73歳の時に半導体装置のトータルソリューション企業である、「KMT Inc.」がメインスポンサーとなり、本格的にレース活動を再開した。今季は2003年式「XL883R」でAVCCのCSSCクラスに参戦。レースの模様を公式YouTubeチャンネル「#51TV」(@51tv52)で配信中だ。
(出典/「
text/T.Morita 守田二草 photo/S.Ise 伊勢悟 取材協力/KMT INC https://www.kmtech.jp バーン!H-Dスポーツ https://www.burn-hd-sports.com/ COUZ https://couz.co.jp
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