『クライ・ベイビー』
さる2025年の12月に行われた「東京コミコン」でのサイン会が、主催側の段取りが悪く炎上してしまったジョニー・デップ。まぁそんなファンにとってもジョニー・デップ本人にとっても不幸なニュースこそあったばかりだが、それでもこのニュース、1回15万円という撮影会に数百人ものファンが殺到してさばき切れなかったという、彼の人気が日本では絶大なものであることを物語るに十分なものだった。まぁ大幅に本人の会場入りが遅れたというのが発端でもあったが、それでも彼自身、遅くまで時間を延長して真摯にフォローアップしていたと聞くと、それなりに日本のファンへの愛情が伝わるエピソードであるとも思えた。
さて、そんなジョニー・デップがその名を日本でも知られるようになったキッカケとなった作品といえば、ティム・バートン監督による1990年度作品の『シザー・ハンズ』だと思うのだが、しかしそれ以前に、このティム・バートンの作品で主演を射止める導線となった映画というのが、今回、ここに紹介している1990年のジョン・ウォーターズ監督作品『クライ・ベイビー』だといわれている。
ジョン・ウォーターズ監督といえば、1970年代にトランスジェンダーのディヴァイン主演の『ピンク・フラミンゴ』でエッジの効いた作風により世界に名を知らしめ、世のカルト映画とされる作品を語る上では必ず見聞きする存在。
そんなジョン・ウォーターズが、1954年当時のボルチモアを舞台に、そこに実際に生きていた“ドレイプ”や“グリーサー”といった、ある種、社会の底辺層で暮らす反社会的ともいえる文化的人種、勢力の物語を描きたいという思いから制作が始まったこの作品は、その根底にあるテーマ、背景こそはダークで重いものでもあるが、この作品自体はメジャースタジオを介しているということもあって、終始明るい印象でコメディタッチのミュージカル、日本的にいえばいわゆる学園ラブコメといった体を成している。
また個人的に興味深いのは、これがジョニー・デップの初主演作にして、バイクというものが絡められている点、マーロン・ブランドの『乱暴者』以来、ビッグスターは出世作なりデビュー時期にバイクに絡んだ映画に出ているというジンクスに叶ったものであるということ。そして、日本での公開が制作された翌年、『ターミネーター2』や『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』、『ストーン・コールド』と同じ年と、そのタイミングにも時代的な“何か”を感じるんだよねぇ。
とはいえ、俺個人はこの作品が日本で公開された当時、既にH-Dを扱うメディアに身を置いていたにもかかわらず、まったくノーマークでいたんだよねぇ。その後、数年経ってからレンタルビデオ店でジャケット見かけて初めて知ったというのが実情だった。
まぁ90年代前半ぢゃネットもないしね。しかし今ならネットで手軽にその映像を観ることができる。探して観るコトをお勧めするぜ。
『クライ・ベイビー』
原題:Cry-Baby
上映時間:85分
制作:1990年(アメリカ)
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
監督:ジョン・ウォーターズ
出演:ジョニー・デップ/トレイシー・ローズ
1970年代に『フィメール・トラブル』、『ピンク・フラミンゴ』といった伝説的なカルト作品を世に送り出し、1980年代に『ヘア・スプレー』で商業的成功を収めたジョン・ウォーターズが、いよいよハリウッドメジャーにより制作を委ねられた作品。演出、映像美、ディティールと観るべき点が実に多くある作品でもあり、現在では公開当時以上に高い評価を受けている。
見どころ①
ジョニー・デップ演じる主人公のクライ・ベイビーが高校生のため、バイクは解体屋を営むお婆ちゃんからのプレゼントということに。メインで使われていたのは1955年型「KH55」とされている。
見どころ②
1953年式(?)のグレッチのシンクロマティックを抱えるジョニー・デップ。若かりしころのエルヴィスを彷彿とさせるような姿で、ヒルビリーからロカビリーへの移行期への雰囲気を醸し出している。
見どころ③
ライダースを着てH-Dに乗りヒロインを迎えに行くシーン。この場面、おそらくエンジンはサイドバルブのKH55ではなく、アイアンのショベルヘッドに換装されているように思える。
見どころ④
「ドレイプス」の面々は強烈なキャスティング。なじみのGF役にはトレイシー・ローズ、オヤジ役にはイギー・ポップ、また別に監獄の場面ではウィレム・デフォーまでがカメオ出演している。
見どころ⑤
種別的に低所得層の不良勢力とされた「ドレイプス」。そこに属するクライ・ベイビー率いる一団が乗るのは、マットブラックの車体にフレイムスを描いた1951年式のフォード カスタム、2ドアセダン。
(出典/「
text/T.Kurokawa 黑川銕仁
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