2ページ目 - ベイクルーズを定年まで勤め上げたシャツ屋の和田くんを紹介します【アメトラをつくった巨人たち。】

新たな航路藍がつなぐアジアと日本

勤続43年を経て「ベイクルーズ」を離れた後、世界中を旅するなかで和田さんの目に止まったのは、アジアだった。

「当初は、会社を辞めたら子ども食堂でもやろうかと思ってたんですよ。でも、タイを旅して、山岳民族の手織り布に出会って以来、彼らの伝統をよりモダンなかたちで日本へと伝えたいと考えるようになっていました。」。

こうして現地ブランド「KALM」と契約し、2024年にそれらの代理店となる「ネイビードットブルー」を立ち上げる。

「名前の由来は“海のように深い藍”と“青をつなぐ点”。点が集まって線になり、文化が広がっていく。そんなイメージです」。

同ブランドでは、和田さん自ら別注というかたちでオーダーをかけ、手織り布や民族刺繍を日本的な感性で再構築している。

「一点ずつ異なる生地を使い、旧いワッペンや刺繍を切り取って背中に縫い付ける。効率よく織った布では出せない揺らぎ、伝統に裏打ちされた重厚さ、そこに人の手の証拠があるのです。ファッションやモードって一過性のものだと思われがちですが、ぼくは“時間を編む仕事”だと思ってるんですよ」。

バンコクの工房では、和田さんが現地の職人と一緒に針を持つこともある。

「指先が覚えてるんですよ。久しぶりに縫って、楽しいと。ブランドはまだ始まったばかり。でも、ぼくにとっては原点回帰なのです。19歳の頃と同じように、また手の届く場所から始めている感覚です」。

変わらないものを、もう一度

和田さんが貫いてきたのは、時代の流行を追うことではない。むしろ「流行の手前」にある人の感情、手の温度、時の呼吸を常に見つめてきた

「ファッションって、結局は“人の顔”なんですよ。何を着るかより、どう着るか。その人がその服をどう楽しむかに尽きる。やっぱり服って面白いですよね。世界を変える力はないけど、人の気持ちは変えられる。だから、やめられないのです」。

ベイクルーズのキーマンとして世界中を飛び回った

今や全従業員数6000人超を数える「ベイクルーズ」黎明期を知る数少ない古参のひとり。「エディフィス」「ジャーナルスタンダード」「レショップ」といったオリジナルレーベルの立ち上げはもちろん、アウトレットから飲食、ECまで数多くの業務に従事し、世界中を駆け回った現役時代。定年後も充電期間として世界を放浪し、昨年シーンにカムバック。次なる動向にも期待が集まっている。

守備範囲の広さを示すジャンル不問の愛用品

国もジャンルも問わない、和田さんの愛用品。自身で着ることを前提としており、すべてマイサイズだという。1986年に買ったチャンピオンは、ベイクルーズ時代にスウェットを作るうえで参考にしたもの。日本製のナイキのヴィンテージスニーカーは、デッドストックに奇跡的に出会い購入。ほかにも、所有していたエルメスのスカーフの生地を使って製作したベスト、代官山の古着店で購入したという1940年代製のエルメスのコート、ブルックス ブラザーズの日本限定アメリカ製ジャケットなど、愛用品の幅は驚くほど広い。

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2nd 編集部
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