雑誌「2nd」の看板スタイリスト・吉村祥吾の「撮影前夜、事務所にて」第5回

『セカンド』の看板スタイリスト吉村祥吾さんが一体のコーディネイトを組むまでの、理論と感覚が入り混じる紆余曲折を、文字化するスタイリングドキュメンタリー第5回。前回はこちら。

スタイリスト・吉村祥吾さん|1986年生まれ。2016年より『セカンド』で継続的にスタイリン グを担当。普段着のマイルールは「TPOに合わせて、靴から決める」

トラディッショナルな範疇でどう黒を取り入れるのか

今回語ってもらったのは今号P43のコーディネイト。「黒特集」の軸となるグラビアページより、「ポストオーバーオールズ」のカバーオールを主役に据えたコーディネイト。今回は普段出てこないブラックカラーを、トラッドなスタイルとしてどう提案するかが肝となった

編集部 今回はセカンドらしくない「黒」を、トラディショナルなセカンドらしいスタイルに落とし込んでもらいました。やっぱりどこか新鮮に見えます。

吉村 アイビースタイルをそのままブラックにしただけだと、どうしてもドレッシーな印象になると思い、あくまでトラディショナルの範疇でカジュアルな要素をミックスしてバランスをとりました。そうすることで黒の存在感を引き立たせつつ馴染ませられるかなと。

編集部 ダック地のカバーオールにアメトラをミックスしたコーディネイトですね。

吉村 ジャケットはダック地の「ポストオーバーオールズ」です。ほどよいフェード感とシルエットの抜け感など、クオリティはいわずもがな。カバーオールをメインに、王道のワークスタイルでは絶対出てこないようなセカンドらしいミックス感を表現しようと思いました。

編集部 インナーはアメトラらしいクレイジーパターンのBDシャツです。生地はブロードですね。

吉村 本来ならダック地には、オックスフォードの方が質感が近くて相性はいいですが、今回は黒の存在感を活かしたミックススタイルにしたかったということもあり、ガサっとした質感とは正反対のブロードのシャツにしました。Vゾーンはアメトラらしく、色味も派手にすることで、よりアウターのブラックが引き立つようにしました。

編集部 「引き立つ」と「悪目立ち」の線引きは難しそうですね。

吉村 ダック地のカバーオールに対して、例えばハイゲージニットやシルクタイを合わせたら、テイストの対比が強すぎて「間違えた」感じになると思いますが、今回はシャギードッグセーターとローゲージのニットタイを合わせて質感のバランスを整えています。

編集部 パンツはネイビーです。

吉村 いつもならベージュのチノパンツにしたと思いますが、今回はシャツがキャッチーなので、全体を馴染ませる意味でネイビーにしました。ダークネイビーより、この浅いカラーリングのネイビーパンツが、色のバランス的にすごくしっくりきたんです。柔らかめの生地感も武骨なダック地と相性がよく、ほどよいカジュアル感のまま全体のトーンを落とせました。

編集部 靴はタッセルローファーですね。ワークブーツなどの選択肢はなかったですか?

吉村 最初はそっちの方向で考えていましたが、「ミックス感」と「鮮度をあげる」ということで、アウターではなくインナーのトラッド感にテイストを合わせてみようと思いました。今回、足元の選択肢は「オールデン」しかなかったです。ローファーを合わせてみようと思ったんですが、エレガントすぎても、ボリューミーすぎてもダメで。アメトラの王道でありながら、武骨な雰囲気もあるタッセルローファーが最適解でした。

(出典/「2nd 2025年12月号 Vol.215」)

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