【アメリカ製の歴史】1950年代に名作眼鏡の大半が誕生。
かつてメガネは富や知の象徴で、裕福な層しか手にすることができなかった。アメリカでメガネが一般市民にまで普及したのは、プラスチックの加工技術が飛躍的に向上した第二次世界大戦の後のこと。
メガネは多彩なデザインが可能となり、黄金時代が訪れる。代表作はタートオプティカルの[アーネル]だ。かのジェームズ・ディーンが愛用し、瞬く間にアメリカを席巻。多くの工場で[アーネル]に似たフレームが製造された。同時期にもうひとつの傑作が誕生する。
1952年にレイバンが開発した、キャットアイ型ウェリントンの[ウェイファーラー]。ボブ・ディランら多くのアーティストが愛用し、『ブルース・ブラザーズ』など映画の小道具でも活躍。ファッションとしてのサングラスが定着していく。
メタルブリッジにプラスチックブロウを合わせたサーモントも50年代を象徴する意匠だ。眉のようなデザインは、モント将校が自身の顔に貫禄をつけるべく誕生したもので、モント将校(サー・モント)の名が名称となった。
時代は進み、オリバーピープルズが創業時の1987年に発表した[OP–505]に注目。メタルパーツを合わせたコンビボストンは、ロバート・ダウニー・ジュニアなどが愛用しセレブ御用達に。このようにアメリカでは数多のマスターピースが誕生した。
【アメリカ製の代表作】半世紀以上前に誕生したマスターピースの数々。
ジェームズ・ディーンが愛用したウェリントンや、モント将校の願望から生まれたサーモントなど、アメリカの名作メガネの大半は半世紀以上前に誕生したものである。
1.正方形に近い黄金比のウェリントン「JULIUS TART OPTICAL/AR」。
1950年代に誕生したタートオプティカルの[アーネル]を、日本の高い技術でリアルに復刻。程よいボリューム感で掛けやすく、鍵穴を模したキーホールブリッジでクラシカルな趣に。アメリカントラッドを体現した1本だ。4万5100円(G.B.ガファス 渋谷TEL03-6427-6989)
フロントサイドに施したダイヤ型のリベットは、アメリカを象徴するような歴史的なアイコンだ。蝶番にピンを打ち込んでカシメて留めた跡を飾ることで演出した。
フロントの縦と横の比率が4:5くらいで、正方形に近いのがアメリカンスタイル。モスコットの[レムトッシュ]をはじめ、いまも多くのブランドが採用する人気の形だ。
2.貫禄を出すために生まれたサーモント「American Optical/Sirmont」。
重厚なアセテート製ブロウを合わせたサーモントは、マルコムXが愛用したことでも知られるアメリカらしい武骨なデザインだ。フロントサイドに施したウィングのリベットが、目元にアクセントを与えてくれる。4万6200円(クラインアイウェアTEL03-5458-8185)
メタルのブリッジにプラスチックのブロウを合わせて眉を強調。このスタイルが定着し、最近はメタルフレームでブロウの色を切り返したものをサーモントと呼ぶことも。
3.シャープなキャットアイ型ウェリントン「Jacques Marie Mage/DEALAN 53」。
ボブ・ディランへのオマージュ作として誕生した、吊り目なキャットアイ型のシャープなウェリントン。スペシャルオーダーの10 mm厚のアセテート生地を削り出した重厚なフォルムに。
サイドが吊り上がったシャープな意匠は、かつてボブ・ディランが愛用したレイバンの[ウェイファーラー]を踏襲したもの。現代の技術で名作がラグジュアリーに進化した。
4.クラシカルな座掘りのコンビボストン「Oliver Peoples/OV5184 OP-505」。
ブランド創業時のファーストコレクションで発表した代表的なモデルのひとつ。細身のボストンシェイプに座彫りをしてメタルのテンプルを合わせている。随所のメタルパーツが知的な雰囲気。4万1800円(ルックスオティカジャパン カスタマーサービスTEL0120-990-307)
繊細な彫金を施したメタルパーツを合わせたクラシカルな意匠は、いまや量販店のメガネに採用されるほど定着。似た構造のメガネは20年代の米ヴィンテージにも存在した。
【アメリカ製の知っておきたい用語集】
ザイル
1950年代以前のヴィンテージフレームに用いられたプラスチックの総称。アセテートかセルロイドか諸説あり、アメリカ人はプラスチック全般をザイルと呼ぶことも。
アビエーター
1937年にレイバンが米空軍のパイロット用に開発したダブルブリッジのティアドロップ。サングラスの元祖の形で視界が広く、いまも現役のデザインだ。
フルビュー
フロント上部でテンプルがつながる構造。現存する世界最古のメガネメーカーであるアメリカンオプティカルが、1930年代に開発して特許を取得。傾斜角が調整しやすく、視界が広くなった。
リムウェイ
フチなしでレンズを2点で留めるツーポイントの強度を高めるため、レンズの上背部にバーを這わせたスタイル。1930年代に開発され、いまも多くのブランドが採用する。
ニューモント
フチなしフレームのレンズを1点で留めて、レンズ側に3枚の板バネとブロウを這わせた構造。こちらも1930年代に誕生した。
ケーブルテンプル
1885年にアメリカンオプティカルが乗馬用に開発。テンプルが耳の後ろまで回り込むからズレにくい。
金張り
芯材に薄い金のプレートを張ったもの。英語ではGOLD FILLED(GF)。「1/10 12KGF」は10分の1の厚さで12金を張ったという意味になる。主に金メッキが主流になる以前に用いられた。
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