幾多のオーナーを経て宿るストーリー性という魅力。
2nd vol.191『服=道具。』特集にてエディーバウアーの[カラコラムジャケット]を紹介してくれたメイデンズショップの牧野さん。随所にカスタムが施され、圧倒的なオーラを放っていたが、そもそも牧野さん自身が、そういった過去の所有者の手が加えられた古着に魅かれるそう。
「前回のカラコラムジャケットは最初のオーナーがおそらく山岳救助隊のメンバーでした。なぜ分かるかというと「Mountain Rescue」の文字が刺繍されているからです。それ以外にも何年にどこぞの山に登ったかが刺繍され、袖には訪れたであろうナショナルパークのワッペンが貼られるなど、それはもう情報が盛りだくさん。そういったカスタムには過去の所有者の人となりが詰まっています。
その痕跡に思いを巡らすことで、今の時代に僕の手に来たことへの運命的な過程も含めて、より一層その古着に対する愛が深まるんです」
そう語る牧野さんのコレクションを拝見していこう。
実はまだまだカスタム古着、持ってます(笑)
1.ペニーズのダブルレザーライダースジャケット。ハードなカスタム痕で圧倒的な存在感を放つ鋲ジャンは、自身が好むカルチャーともリンクするアイテムだという。
「福岡のアーユーディファレントにて購入したのですが、そこのオーナーがカオティック・ディ スコード(80年代に活躍したイギリスのハードコアバンド)の名盤『ネバー・トラス ト・ア・フレンド』のジャケットに映る革ジャンと同じモチーフのカスタムを、バックにペイントしているんです。その塩梅がすごく気に入っています」
言わずと知れた名作デニムジャケット、2.リーの[101J]は譲り受けたものだという。
「達正さん(デニムブランド、ウェストオーバーオールズのデザイナー、大貫達正氏)にいただいたものです。よく呑みに行くのですが、その都度お願いしてたら譲ってくれました(笑)。サイズ感も刺繍のテイストもドンピシャです」
3~5.エル・エル・ビーンのトートバッグという王道アイテムも、ペイントが入ったものを集めている。
「サムシングハプンズ(大阪を拠点とするオンライン限定ヴィンテージショップ)で購入したボート・アンド・トートと、福岡のツーフェイスで購入した薪を運ぶためのログキャリーバッグをトートバッグに仕立てたものです。
5~6年前にボーディというハンドペイントや刺繍のカスタムを得意とするブランドに出会ったことで、カスタム古着熱がさらに高まったのですが、そのきっかけがうちの愛犬をパンツにペイントしてもらったことでした。やはり動物モチーフはいいです」
6.ヴィンテージのスウェット。「この僕の見た目通り、ネイティブアメリカンモノが好きでして(笑)。大胆なインディアンペイントがツボでした。アクセサリーや髪型と参考になりますよね」
7.ヴィンテージのハンティングベスト。「ハンティング系のアイテムはデザインが賑やかでもともと好きなのですが、これは特に動物柄のパッチに魅かれました」
8.ヴィンテージのスウェット。前Vが確認できる50sのスウェットにはハンドペイントが随所に施されている。「元々あるデザインを活かしたペイントがなんともクリエイティブで気に入っています」
9.ヴィンテージのウエスタンシャツはスナップボタンではなく掛けボタンを採用した40s。「こちらも動物や風景の刺繍に魅かれました。ただサテンの裂けが怖くてなかなか着れないです」
10.ネイティブアメリカンのトートバッグは2019年にアリゾナのトレーディングポストで購入したという一品。「ニードルポイントでカチーナ(アメリカの先住民であるインディアンのホピ族が信仰する、超自然的な精霊)なんて最高に贅沢な組み合わせです」
11.ヴィンテージのニット。「すごい数のワッペンでカスタムされた60sのレタードニット。落ち着いた色味で見た目以上に合わせやすく重宝しています」
12.ヴィンテージのコーチジャケット。「地元・岡崎の古着店キャバレーで購入。アメリカの数あるバスプロショップ のワッペンでカスタムされていて、見ているだけで楽しい1着です」
13.リーバイスの[646]は、70sならではのベルボトムが特徴だが、こちらにも印象的な刺繍が施される。「見た目通り(笑)ヒッピー的なスタイルも好きで、646は欠かせないパンツです」
(出典/「2nd 2023年3月号 Vol.192」)
Photo/Satoshi Ohmura, Nanako Hidaka, Akane Matsumoto Text/Okamoto 546, Shinsuke Isomura
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