アーバンミリタリー最注目ブランド アーミーツイルの新作4選を大解剖!

  • 2022.09.21

「ヴィンテージのソースはあくまでお手本」という、デザイナー多田周平さん独自の視点から生み出されるアーミーツイル。今季の新作から、“選ばれる”理由を紐解く。

ヴィンテージへの深い造詣と自由な発想で“多田ism”を注入するモダンミリタリー。

デザイナーの多田さんは某人気アパレルブランドでモデリストを務めたのち、マルベリーに入社。1940年頃に誕生して、すでに消滅していたアメリカのストアブランド「アーミーツイル」を、国内で再興させるべく、立ち上げから参画。ミリタリーを中心に、あらゆるヴィンテージへの造詣が深く、現代ファッションに対する理解力やモノづくりへの閃きも相当なもの。それら、“多田ism” が注入された現代版アーミーツイルは、大手セレクトショップを中心にメンズ、レディス問わず、圧倒的な支持を受けている。

1.Reversible Hooded Coat

「僕の作る服のデザインはすべてが“ニュアンス” であって、決してレプリカや復刻ではないんです」と自らの服作りを言い表す多田さん。その最たる例を今季のコレクションから選んでもらうとこのアウターが出てきた。

「独特なピケ素材であるジャングルクロスを使ったN-1デッキジャケットはヴィンテージ市場でも人気ですが、そのコートタイプが存在することはあまり知られていません。何しろオリジナルの希少性が高いからです。今回はそんなレアな1着をモチーフにしたのですが、実はコレ、シルエットはM-65フィールドコートをサンプリングしています。単純にモッズコートの方が着た時のシルエットがお洒落だなぁって思うからです。肩の落ち方など絶妙じゃないですか。そういうところにニュアンスが表れて、それこそが僕の服作りの生命線だと思っています」

FABRIC_ Broken Twill
SAUCE_ 1940s U.S.Army N-1 Deck Coat
COLOR_ Khaki,Black,Beige
SIZE_ M,L
PRICE_ 25,300yen

絶妙な肩の落ち具合を表現するため通称モッズコートで親しまれるM-65フィールドパーカのパターンを採用
本来デッキジャケットの袖は内リブ仕様だが、着脱しやすいように表地と裏地の突き合わせ袖にアレンジ
裏面はフリース素材でM-43のライナーをイメージした全く異なるソースのリバーシブル仕様

2.Big Shirt

ブランドの定番素材であるコットンポリエステルの混紡生地を使った、同じく定番型となるビッグシャツ。今季はそこにドイツ軍のスノーカモモチーフをプリントしている。

「これは純粋に生地とプリントの相性から、やってみたいという気持ちが生まれ、作ったアイテムです。欧米ではパインリーフカモと呼ばれているのですが、文字通り松の葉のような模様が特徴です。でもオリジナルとは少し色を変えています。もっと緑と黄色が強い感じなんですが、いまのファッションに落とし込むならコレくらいのトーンかな? という感覚でオリジナルより控えめな色となっています。一方で、オリジナルらしいラフ感はどうしても表現したくて、クレヨンを使って凹凸感のある絵柄を作ったり、何度も試し刷りしてかすれ具合を調整したりと、柄のひとつひとつにこだわりました」

FABRIC_ Print Cotton/Polyester
SAUCE_ 1990s U.S.Army
COLOR_ WHITE, KHAKI
PRICE_ 13,200yen
SIZE_ M,L 

オリジナルと異なる色味でも、プリントの凹凸感やかすれ具合はオリジナルに近づけたという。その絶妙な塩梅が多田流といえる
タグには防縮加工のSANFORIZED(サンフォライズド)の文字があり、ヴィンテージ志向のスタンスを窺い知る

3.Half Zip Pullover Sweat

「オリジナルはものすごく着にくいんですが、でも光るところがあって。だからスウェット素材を使ってお互いの欠点を補完し合ってみたらいいんじゃないかと。結果、いい感じのスウェットになりました」というなんとも独特な多田節が冴え渡るのがこちらのアイテム。

デザインソースはアメリカ軍のポリエステルスウェットとフランス軍のスウェットとなる。前者は生地がゴワゴワしており、しかもハーフジップの首元が高い上に締め付けが強く非常に着にくい。後者は薄手だけど起毛されててしかももちっとした生地感が肌触り良く非常に着やすいが、シルエットがタイトな上にロング丈で着にくい。ゆえにその両者をコンビネーションし、いいとこ取りしたのが今季の新作というワケだ。

「想像以上に相性のいいマッチングで、手応えを感じる自信作です」

FABRIC_ Cotton Sweat
SAUCE_ 1990s U.S.Army, 1970s French Army
COLOR_ KHAKI, CHARCOAL, CAMEL
SIZE_ M,L
PRICE_ 9,900yen

しっかりオリジナルの雰囲気を残しながらの改良に苦心したという襟。スタイルの根幹を成すところだけに緻密な調整がなされている
優秀なファブリックゆえに、日の目を見せてあげたいという想いから、再現性の高さにこだわったというオリジナルのスウェット生地

4.Cargo Pants

M-51オーバーパンツはその性質上、貫通ポケットになっていたり、シルエットがアンバランスなくらい大きかったりするが、アーミーツイルの解釈のもとでカジュアル穿きしやすく仕上げられた新作。

「通常使いできる袋ポケットにしたり、細部も普段穿き仕様に調整したりしていますが、ワタリの太さなどはそのままです。その分、あえて“歪み” を入れて馴染みをよくしています。古着には“まっすぐ” なところがないんです。例えば付いているポケットの線を見ると微妙に歪んでいます。これが元々なのか経年変
化によるパッカリングからなのかは分からないですが、なにしろ“まっすぐ” な直線ってないんですよ。だからパターンを引く時点で意図的に歪みを入れています。新品なのに最初から馴染むなぁ? なんて感じてもらえてたら、したり顔しちゃいますね(笑)」

FABRIC_ Cotton Nylon Weather
SAUCE_ 1950s U.S.Army Military Pants
COLOR_ KHAKI, BLACK
SIZE_ M,L
PRICE_ 16,500yen

ヴィンテージでは貫通となっている左右のポケットも、通常使いできるよう裏地の付いた袋ポケット仕様に
ウエストのドローストリングスはヴィンテージ意匠のまま。すっきり見えるようにパターンを調整している
直線ではなくわずかに歪みを持ったポケットのフラップ。このような小さなこだわりを随所に散りばめる

【問い合わせ】
マルベリー
TEL03-6450-4800
https://armytwill.com/

(出典/「2nd 2022年11月号 Vol.188」)

 

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