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下取りに出したiPhoneは資源として、次のアップル製品に。Apple製品の再生素材比率30%を支える『Trade In』の裏側

米カリフォルニア州クパチーノのApple Park Visitor Centerで、Appleの下取りプログラム『Apple Trade In』とリサイクルについてのセッションに参加してきた。説明してくれたのは、アップルの環境担当シニアプロダクトマネージャーのローレン・ブラウンさん。テーブルの上には、画面の割れたiPhoneやバッテリーの死んだ古いMacが並べられている。Apple Storeでこういう『古い製品』を見る機会は、まずない。だが実は、この製品群こそが今回アップルに来たテーマである環境戦略の入口なのだ。

今回は、アップルのサステナビリティに対する取り組みを取材するために、クパチーノまでやってきた。

なぜ「早く出す」ことが重要なのか

ブラウンさんが繰り返し強調したのが、残存価値のタイミングの話だった。

「あなたがそのデバイスを使わなくなった瞬間が、残存価値のいちばん高い瞬間なんです」

言われてみれば当たり前だ。引き出しに入れた瞬間から価値は下がり続ける。しかもApple製品は下取り価値を保ちやすく、Android端末と比べて約40%多く価値を保持しているという試算もあるそうだ。それでも、寝かせておけば目減りする。資料用として、たくさんの古いiPhoneを引き出しにしまい込んでいる筆者が言うのもなんだが、Trade Inに出すなら早く出した方がいい。

ちなみに独立した調査によれば、世界のスマートフォンの約50%が引き出しの中で眠ったままだという。ご自身の引き出しを思い浮かべて、心当たりのない方のほうが少ないのではないだろうか。収納したままになる理由のひとつは、『対処の方法がわからない』ということになるだろう。だから、アップルはTrade Inに取り組んでいるのだ。

アップルが示す優先順位は明快。まず最優先は、家族や友人に譲る『パス・ダウン』。譲る相手がいなければTrade In。値段が付かなければ無料でリサイクル。この順で、デバイスを活かそうというのだ。それが、地球環境を守ることにも繋がる。

なお、買い替える予定がなくても、下取り額をApple Gift Cardとして受け取って『固定』しておくことができる。引き出しの中で価値が下がっていくより、Apple Gift Card化しておいた方がユーザーも得だし、早くリサイクルが行われる。

Trade Inの下取りは非常にシステマチックだ

ストアスタッフによる店頭下取りの実演デモも見せてもらった。

スタッフが『Apple Store』アプリを開き、顧客の許可を得た上でアカウント情報にアクセスする。買い物用のアプリだとばかり思っていたが、店頭ではサービスツールとしても使われているらしい。画面にはiCloudに紐づいたデバイスと下取り額が並び、この日、サンプルとして使われた13インチのiPad Airは390ドルと表示された。あとはQRコードをスキャンし、表と裏を撮影してヒビや傷の確認などの診断。非常にシンプルだ。

店舗は混雑していて予約が取りにくいし、地方在住で近くにApple Storeがないという人もいるだろう。そんな時は、 https://www.apple.com/jp/shop/trade-in から申し込めば宅配業者が自宅まで回収用の段ボールを持って来てくれる。

データ消去やアクティベーションロックの解除は端末が誘導してくれるが、店頭で下取りするならApple Accountのパスワードを必ず覚えて来ること。目の前で消去してもらえるし、待ち時間も短くできるという。

取り出したアルミニウムが、次のAppleデバイスになる

さて、ここからが本題だ。割れて動かない、査定ゼロの端末はどうなるのか。

「金銭的な残存価値がなくても、環境的な価値は大きいということを知っていただきたいのです」とブラウンさんは言う。

iPhoneにもiPadにも、アルミニウム、鉄、タングステン、銅、金、コバルトといった重要な素材が使われている。回収したデバイスは検査され、再利用も修理もできないものは『Daisy』という分解ロボットを有するシステムへ送られる。DaisyはiPhoneを36機種、1時間あたり最大200台のペースで分解できるという。他の製品は高度なシュレッダーや選別機が担当する。

リサイクルと分別には、(溶かしたり、峻別したりするために)大きなエネルギーや手間がかかる。だからこそ、Daisyなどの技術を使って、最初から分解して素材ごとに選別することが大事なのだ。部品レベルまで分解しておけば、溶かしたり峻別したりするためのコストは下がる。

分解したiPhone部品1トンから回収できる銅と金は、鉱石2000トンから採れる量に匹敵するのだそうだ。鉱山で地中を掘り進めなければ得られない素材が、引き出しの中の1台から生まれるのだ。眠らせておくのはあまりにももったいない。

重要なのは、これが『捨て方の話』ではなく『作り方の話』だということだ。回収された素材は精製され、次のApple製品に戻っていく。実際、2025年に出荷したApple製品全体で、素材の30%が再生素材となった(過去最高)。

Appleが設計するすべてのバッテリーには100%再生コバルト、すべてのマグネットには100%再生希土類元素、自社設計のプリント基板のメッキには100%再生金が使われている。今年発表された『MacBook Neo』に至っては、筐体からディスプレイ、キーボード、ロジックボードまで含めて全体の60%が再生素材で作られている。最も安価なMacBook Neoは、同時にMacノートブック史上最小のカーボンフットプリントで生産されているのである。

もちろん、すべての素材がApple製品に戻るわけではない。Apple製品は要求される素材のグレードが非常に高く、その純度が得られない場合は、回収した素材はサッシや自動車部品といった他業界へ回ることもある。「信頼性、耐久性、品質の基準を満たさない素材は、Apple製品には一切入りません」とブラウンさん。エコだから多少妥協、という発想がそもそもないのだ。逆に言えば、我々が返した1台が確実にどこかの素材の需要を減らしている、と考えていいだろう。

問題は、知られていないことだ

日本のリサイクル率について聞いてみたところ、ブラウンさんの答えは慎重だった。

「国ごとにリサイクル率の大きな差があるというわけではありません。国民性の問題ではないと思います。このサービスがあると知られているかどうかが大きい。伝えるのは我々の責任です」

Appleは20種類以上の電子機器を無料で引き取る。ストアで売っているものはほぼ何でも、というスケール感で、Androidスマートフォンも受け付ける。ケーブルやドングルも構わない。だが、この事実をどれだけの人がご存知だろうか。

割れて値段の付かないiPhoneは、廃棄物ではなく鉱山の負荷を減らす素材であり、次のMacBookの筐体の一部かもしれないのだ。ならば引き出しを開けるのは、今週末でいいのではないだろうか。まだ動く1台があるなら、なおのこと早めのTrade Inを検討したい。

(村上タクタ)

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村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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