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盗撮への抵抗感と、市場としての小ささ。二つの逆風の中で、Rokid副総裁が「それでも日本」と言い切る理由

『世界進出』を大きくうたうRokidだが、これまで一番注力してきたのは中国市場。グローバル公式ストア、Amazon、米国、オランダ、中国の物流倉庫からの世界配送の体制は確保しているが、『独立した日本サイト』、『ローカルでの独自サポート体制』、『全国の家電量販店での販売ネットワーク』という仕組みまで整えたのは日本が初めて。ある意味、中国以外への初の本格進出ともいえる。現在、円安で購買力が低く、カメラ付きスマートグラスへの忌避感の強い日本を、なぜ最初の本格進出の舞台に選んだのか? Rokidの副総裁、国際事業統括のZoro Shao氏に聞いた。

Rokid
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Makuake歴代1位のAIグラス『Rokid』日本上陸──Evenとはまったく「思想が違う」製品だった

Makuake歴代1位のAIグラス『Rokid』日本上陸──Evenとはまったく「思想が違う」製品だった

2026年08月31日

日本を重視する理由は『日本から受けた恩義』

Rokid日本進出ローンチイベントの舞台袖で、Rokidの副総裁、国際事業統括のZoro Shao氏に単独でインタビューすることができた。なぜ、日本を選んだのか? 多くの人が気になるカメラの問題をどう考えているのか? を中心に、スマートグラスとRokid、そして日本市場のこれからについて突っ込んで質問してみた。

まず、聞いてみたのが、「なぜ、日本だったのか?」という問題だ。

今、円安の影響で日本市場の購買力は非常に低い。このRokidが10万9890円という価格を付けざるを得なかったのがその証左だ。たとえば、もし1ドル115円という相場ならこのデバイスは7万8000円という魅力的な価格になったはずだ。日本政府は好景気をうたうが、それは円安のメリットがある輸出企業の話で、世間では上がらない給与と物価高に苦しんでいる人が多い。10万9890円のデバイスが飛ぶように売れる市場ではない。

さらに、たとえば25歳の人口は中国では約1700〜1800万人いるが、日本では約120万人しかいない。単純に若年層の市場を考えると、日本は中国の14〜15分の1しかないのだ。そんな状況で、なぜグローバル初進出の舞台に日本を選んだのか?

Shao氏の答えは、思いのほか長く、熱のこもったものだった。

「理由はいくつもあります。個人的な好みもある。ただ会社として言えば、私たちはもともとグローバルな企業で、ブランドはアメリカから始まりました。アメリカは世界最大の市場で、当然そこもやっています。それでも日本に重心を置くのは、日本との関係が非常に緊密で、開発者コミュニティがとても活発だからです。小さく見えても、日本はいまだに世界第3、第4の市場ですよ」

Shao氏は、市場の『大きさ』ではなく、『質』が重要なのだと言う。

「日本には良い文化の土壌があって、AIが力を発揮するのに向いている。優れたAI技術も、ものづくりの力も、消費者の生態系もある。それに、私の日本の友人たち、代理店の方々は、追求心があって、上品です。良い製品をきちんと分かってくれて、新しい技術を応援してくれる」

そして、何より『恩義がある』のだと言う。

「Makuakeでの目標は、当初は2億円で十分だと考えていました。なのに、実物を見ても、触ってもいないのに、我々の商品を評価して7413人もの人が、6億3673万円ものお金を出してくれたのです。Makuakeの13年間の最高記録を突破したんです。中国に『滴水之恩、当湧泉相報(一滴の恩は、湧き出る泉で報いる——明代の格言)』という言葉があります。この信頼に、私たちは心を打たれた。だからその信頼に応えるために、グローバル初公開の舞台を日本にしたのです」

カメラ付きスマートグラスに厳しい日本で、どう売るのか?

しかし、もうひとつ気になることがある。それは、日本はカメラ付きデバイスに非常に厳しいということだ。筆者がMeta Ray-Banをしていても一部の人は眉をひそめるし、地下鉄車内など公共の場所では使うのを控えてしまう。実はこれらのグラス型デバイスのカメラは非常に広角で、いわゆる『盗撮』のような写真ではなく、視界全体が写るだけなのだが(iPhoneの超広角の画角で、画質を落とした感じ)、批判する人はそこまで考慮してないだろう。法律ではなく『空気』として自分たちを縛る国民性は、スマホのシャッター音として残っている。

カメラのついたスマートグラスが普及してくると、またぞろ『規制』ということになる可能性もある。

Shao氏は、この問いを「非常に重要な質問だ」と受け止め、笑顔で回答してくれた。

「今のAIグラスは、スマートフォンが登場したばかりの頃に非常によく似ています。スマホも最初は、背面のカメラに対する不安がありました。けれど技術と社会が対話を重ねていくうちに、良い循環が生まれた。日本のように専用の法律や規則を整える国も出てきた。私たちはまず、その法規を守ります」

続けて彼は、この製品が『盗み撮り』を許容しないと強調する。

「撮影のときには、必ずシャッター音とインジケーターが光る仕組みです。不正な使い方のために作ったのではありません。むしろ逆で、クリエイターの撮影を助けたり、日常を記録するためのものです。子どもと遊ぶとき、ペットの散歩のとき、手を使わずに写真を撮れる。友人の中には、結婚式という人生でいちばん大切な瞬間を、このグラスで記録した人もいます」

実際に見せてもらった。写真は「カシャッ」という音とLEDの光で、確かにそれと分かる。ただ、音はさほど大きくないので、賑やかな発表会会場では気付きにくかった。録画に切り替えると点灯したままのLEDはさほど目立たない。

そこを指摘すると、Shao氏の答えは率直だった。

「基準は全世界で共通です。私たちはユーザーのプライバシーを非常に重視しています。データはすべて端末のローカルに保存し、ユーザーのデータをアップロードすることはありません。これから先は、LED部を手で覆うと動作しないようにするなど、悪用を防ぐ方向をさらに強めていく。音をもっと大きくすることも検討しています」

スマホで撮影することには慣れた日本人だが、果たしてカメラ付きスマートグラスは受け入れられるのだろうか? 気になる課題である。

データの置き場はシンガポールだが、年内に日本に配置する予定

また、実質的にはクラウドと対話するコンピューターでもある。ならば、その頭脳であるAIと、やり取りしたデータはどこにあるのか。ここも聞いておきたかった。

「Rokidの核心的な戦略はオープンであること、開かれた生態系です」とShao氏。

「Rokidは世界の最先端のAIに接続します。日本ではChatGPTとGeminiを、ユーザーが自分で選べる。中国ではDeepSeekやQwenなどを使えます。クラウドの部分は、それぞれのAIサービス提供者が担っています」。そのうえで彼は、データの置き場所についても踏み込んだ。

「今は暫定的にシンガポールに置いていますが、日本国内での配置を進めていて、年内には完了する予定です。まもなく日本のローカルに移ります」

この日、Rokidは日本市場へ10億円規模の投資を表明している。データの国内化は、その具体策の一つということだろう。

10万円を切りたかったのではないか?

普及を語るなら、価格は避けて通れない。発表された価格は10万9890円。本当のところはこの強力な円安がなければ、10万円を切りたかったのではないだろうか?

「最初は、本当にそうしようと考えました。競合(おそらくEven G2)の価格も見ています。でも、私たちは誠実でありたい。私たちの製品は、他社より確実に良い。明らかに良いのに、それより安い値段をつけるのは違うと思ったのです。この価格で、『この製品は他とは違う』と伝えたかった」

そしてもう一つ、代理店への配慮も理由に挙げた。

「日本では代理店の意向も尊重しなければならない。輸入、輸送、アフターサービス、サポート──コストがかかり、彼らにも正当な利益が必要です。それが商売のルールでしょう。損をさせるわけにはいかない。安売りで最初から不誠実に見える価格には、したくなかった」とShao氏は語った。

この先、どこへ向かうのか──『Agent』の時代へ

最後に、この製品がどこへ進化していくのかを尋ねた。

「開かれたプラットフォームです」とShao氏は即答した。

「私たちは今日、東京で『Agent Store』を世界に先駆けて発表しました。AIの次の段階はAgent化です。これまでは対話するだけだった。これからは一つひとつのスキルを小さなAgentにして、もっと効率よく協働させ、個人の生産性と生活の便利さを高めていく。日本にはすでに千人近いRokidの開発者がいます。今年の後半には、新しいハードウェアのサプライズもある。楽しみにしていてほしい」

日本という成熟した市場で評価されれば、海外にも誇れる

中国企業の日本進出ということで、筆者もうがった目で見てしまっていた側面もあったかもしれないが、「日本には恩義がある」と言われたのにはちょっと胸を打たれた。

言い方を変えると、経済力は弱くなってしまっているかもしれないが、それでも日本のガジェット市場と、開発者コミュニティは世界の中でも突出して『濃い』ということなのだろう。市場として成熟しており、日本市場で評価されるということが、他の欧米、中国市場に対しても誇れるということでもあるようだ。

まずは、我々は、Makuakeを見てRokidを応援購入してくれた7413人に感謝するべきかもしれない。

(村上タクタ)

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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