
Rokid スマートAIグラス
https://jp.rokid.com/pages/rokid-glasses
Makuakeの記録を塗り替えて日本上陸したRokidとは?
Rokidは、AIとARに特化した中国・杭州(上海の近く)のテクノロジー企業。2014年創業以来いくつかの製品を出していたが、2025年8月に発表した『Rokid Glasses』(国内では『Rokid スマートAIグラス』)が大ヒット。同社の発表によると、この1年でディスプレイ搭載型ARグラス分野の世界1位となり、成長率は600%を超えるという。国内ではMakuakeで2月26日から先行販売され、7413人のサポーターから6億3673万円という歴代最高額を集めている。

登壇したRokid海外事業統括副総裁のZoro Shao氏は「スマートグラスこそがAIにとって最も自然で重要な入口。人類はスマホの時代からウェアラブルAIの時代へ移行していく」と語り、今後1年で日本市場に少なくとも10億円を投資すると発表した。

筆者が興味深く感じたのは、耳の不自由なユーザーの利用シーン。音声をRokidがテキスト化してくれるので、耳の不自由な人が、スムーズに会話に参加できているというムービーが紹介された。こういう用途は想像していなかったが、たしかに耳の不自由な人にとっては画期的な利用方法だといえるだろう。

イベントではほかにも、スマートグラス専用としては世界初を謳うAI OS『YodaOS』、エージェントアプリを流通させる『Agent Store』の開設、東京を皮切りに横浜、大阪、名古屋、福岡を巡る体験ツアーの開催が発表された。日本市場への力の入れようが伝わってくる内容だった。

Evenに似ているが、実態は『まったく別物』
緑色のマイクロLEDの文字が視界に浮かぶ……という体験は、ThunderVoltで紹介してきたEven G2にそっくりだといえる。しかし、実際に体験してみると、両者の設計思想、製品として目指すところはまったく違うと感じた。
Evenはカメラもスピーカーも持たず、普通のメガネと変わらない軽さで、かけていることを意識させずに日常に溶け込むことに徹したデバイスだ。カメラを持たないので、特に日本においてスマートグラスの課題である『カメラに対する忌避感』が問題にならない。他の人に不安を感じさせないし、万一スマートグラスのカメラが法規制されたとしても問題なく使える。

対してRokidは、1200万画素のカメラとマイク、スピーカーを搭載し、AIで『いろんなことができる』ことを目指したデバイスである。Even Realitiesが『日常に溶け込むアシスタントのようなAI眼鏡』を目指しているのに対し、Rokidは『見たもの聞いたものをすべてAIに取り込んで処理できる、全部入りデバイス』を目指している。『洗練』か、『全部入り』か、そこが大きく違う。

ちなみに、ディスプレイの解像度はEven G2の640×350に対して、Rokidは640×480と一回り多い。輝度も1500nits(G2は1200nits)とRokidが上回る。表示位置もEven G2は視界の邪魔にならない少し下に(G1は上だった)に控えめに表示されるが、Rokidは目の前少し下にかなり明るく表示される。
これも思想を表わしており、Rokidは画面表示が見やすく、Even G2は現実の視界の邪魔をしない。

チップはSnapdragon AR1 Gen 1とNXP RT600のデュアル構成で、GPT-5やGeminiなど複数のAIモデルを呼び出せて、89言語のリアルタイム翻訳にも対応する。スペック的には現時点の『フル装備』といっていい。
『見ているものをAIが理解する』のが最大の肝
Rokidが一番重視している機能は、目の前の光景や音をカメラとマイクで取得し、AIで解析して、文字情報なり音声なりでユーザーに返せるというところにある。
たとえば、ドイツ語の読めないメニューを見ながら「私の好みに合いそうな料理はどれ?」と聞けば、AIが候補を選んで解説してくれるだろう。旅先でこれが視界の中で完結するのは、スマホの翻訳アプリとは別次元の体験だ。
イベントで「これは欲しい」と興味を惹かれたのが、開発者パートナーが披露した名刺アプリ『Rokid Card』だ。名刺を取り込んで、どんな会社で、何をやっていて、規模はどのぐらいか……といった情報が視界の端に表示される。会話を中断することも、スマホをのぞき込んで相手に失礼な印象を与えることもなく、目線の延長線上で情報を得られる。名刺文化の残る日本ならではの着眼でもあり、まさに『AIが視界に入る』価値を体現した利用例だと思う。将来的には、会った人の顔と情報を覚えておいてくれる……というようなアプリケーションが登場する可能性もあるだろう。

開発者エコシステムの動きも活発だ。先月には都内でハッカソンが開催され、最優秀賞にはコンビニなど小売業のエリアマネージャー向けに、店舗の巡回・確認業務をRokidとダッシュボードで効率化するツールが選ばれたという。個人の便利ツールにとどまらず、業務用途にも広がりそうな気配がある。7月にはAgent Storeも開設されるので、こうしたアプリケーションが増えていくかどうかにも注目したい。
カメラへの忌避感と、デザインが課題か
一方で、課題もあると思う。
まず、カメラの存在そのものだ。『見ているものをAIが理解する』というRokid最大の武器はカメラがあってこそだが、思い起こせば10年以上前のGoogle Glassの頃から、カメラ付きグラスは常に「撮られているのではないか」という周囲の思いと隣り合わせだった。

特に日本はカメラ付きウェアラブルへの忌避感が強い。周囲の理解を得ながら使えるかどうかは、普及のカギになるだろう。国内販売代理店のフューチャーモデルは、日本ユーザーのデータを年度内に国内保管に切り替える計画を進めているという。視界のデータを取り込むだけに、これらの姿勢が今後大きく問われることになるだろう。
もうひとつはデザインだ。実物はテンプルが太く、ごつい印象で、正直、スタイルが洗練されているとは言いがたい。言い方は悪いが『ギークなアイテム』の域を出ない。『普通のメガネに見えること』に全振りしたEvenや、Ray-BanやOakleyとコラボすることでお洒落さを取り込んだMetaとは対照的なポイントだ。
まずは7月10日、店頭で体験してみてほしい
Rokid スマートAIグラスは7月10日発売。価格は10万9890円(税込)。公式オンラインストアのほか、Amazon、楽天市場、そしてヨドバシカメラ、ビックカメラ、エディオンなど全国75店舗で順次販売される。前述のとおり、東京から横浜、大阪、名古屋、福岡へと巡る体験ツアーも予定されているので、実際に視界に浮かぶ緑色の文字を体験できる機会は多そうだ。

『日常に溶け込む』Evenか、『AIで何でもできる』Rokidか。同じ緑色の文字の向こうに、AIグラスの異なる未来が見えてくる。筆者も機会があれば借りて、じっくりレビューしたいと思っている。
また、Rokid海外事業統括副総裁のZoro Shao氏に気になるポイントをインタビューしたので、そちらの記事も楽しみにしていただきたい。
(村上タクタ)
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