『ひゃ、ひゃくまんえんオーバー!』
実際、アップルの広報室から在宅勤務の自宅にこのマシンが送られてくると聞いた時にはヒヤヒヤした。間違えても『置き配』などにならないように、配達時間には手を洗って(?)玄関で待機していた。
届いたのはこちら。M3 Pro/Maxという上位モデルにだけ用意されるスペースブラックを纏った、MacBook Pro 14インチ(M3 Max)の全部入りモデル105万6800円だ。しばらくの間、あずかるだけとはいえドキドキする。
箱を開くとご覧のとおり。
箱自体は最近の再生紙を使った環境に配慮したタイプ。ステッカーやケーブルも黒いのが素敵。ただし、取扱説明書のグラフィックはシルバー。実際の製品の色に合わせてあったiMacとは違って、このあたりは現実的。まぁ、『Pro』モデルだから、実際的でいい。
ちなみに、MagSafe 3ケーブルはしっかり黒なのだが、電源アダプターは白のまま。このあたりはちょっとチグハグな感じ。もちろん、スペースグレイのモデルだって、電源アダプターは白なのだから、変ではないのだが。
iPhoneなどもアダプターは白で、そのあたりを質問したことがあるのだが、「アダプターはコンセント側の部品、ケーブルは本体側の部品というイメージで色が決まっている」というような返答だったように思う。納得できるような、できないような。
ボディのスペースブラックは、かなり黒い。ただ、ピュアなブラックではない。細かいフレークが入ってるような、深みのあるまさに『スペース』を感じる黒だ。
黒といえば、指紋が目立つ色だが、MacBook Proのスペースブラックは陽極酸化被膜を使った処理が施されており、指紋が付きにくくしてあるという。たしかに、色の割には付きにくい印象だ。しかし、撮影中に神経質に見ると指紋は残っているので、期待し過ぎると落胆するかもしれない。『付きにくい』が、『付かない』わけではない。
ディスプレイも、音も、拡張性も最高レベル
ちなみにお借りしたMacBook Pro 14インチは、M3 Max搭載。CPUは高性能コア12個、高効率コア4個の合計16コア。GPUは40コアで、メモリは最大限の128GB、ストレージは8TB。アップルストアで購入すると105万6800円となる。
とはいえ、メモリとストレージの大きさが後述するベンチマークテストにあまり関係しないとすれば、48GBメモリ、1TBストレージにすれば同様の性能のマシンを60万8800円で購入することができる。価格に大きく影響するのはメモリとストレージというわけである。
他、チップセット以外の部分は、従来のMacBook Pro M1 Pro/Max、M2 Pro/Maxと同一である。美しいLiquid Retina XDRディスプレイも、フォースキャンセリングウーファーを備えた6スピーカーも、拡張性の高さも変わらない。
Liquid Retina XDRディスプレイはさほど大きな注目点として話題にならないような気もするが、100万対1という素晴らしいコントラスト比、最大1600ニトの輝度、P3色域、ProMotionによる最大120Hzのアダプティブリフレッシュレート……と、現在望める限りのスペックを持つディスプレイで非常に美しい。
またフォースキャンセリングウーファーを備えた6スピーカーは、音楽を聞くにしても、映画を見るにしても驚くほど良好な音質で、これもノートパソコンとは思えないサウンドだと驚かされるはずだ。
コネクターはMagSafe 3、Thunderbolt 4×3、HDMI、SDカードスロットと、必要なものすべて備わっている。特にThunderboltポートは、下位モデルのM3搭載MacBook Pro 14インチがThunderbolt 3/USB 4の2ポートであるのに対し、Thunderbolt 4を3ポート備え、M3 Pro搭載機は2枚、M3 Max搭載機は4枚までの6Kディスプレイを駆動する能力を持っている。ちなみに、Thunderbolt 3/USB 4とThunderbolt 4では、データの転送速度に差があるなどの違いがある。
ベンチマークでは、圧倒的パフォーマンスを発揮
とはいえ、M2 Pro/Max搭載機と較べれば、違いはチップセットのパフォーマンスだけだということだ。ちょっと注釈を加えておくと、今回のM3 Pro/Maxは、ほぼ単純にM2の2倍、4倍……という感じの設計だったM2 Pro/Maxと違って、M3 ProとM3 Maxそれぞれに必要とされている性能を提供できるように個別に設計されているようだ。たとえば、CPUコア数はM2シリーズの場合はProでもMaxでも同じ最大12コアであるにも関わらず、M3シリーズの場合はProは最大12コアであるにもかかわらず、Maxは16コアが選択可能となっている。M2 Pro/Maxの最大GPUコア数は19個/38個と倍化しているのに対し、M3 Pro/Maxの場合は18個/40個。また、メモリ帯域幅はM3 Proのみ最大150GB/sへと低下している。しかし、これらは性能低下……というよりは、M3 Proの性能が、実際に必要とされているものに合わせて、設計し直されたとみるべきだろう。
という前提をおいた上で、お預かりしたM3 Maxはどれほどのパフォーマンスを示すのか。ベンチマークテストを行ってみた。
使ったのはGeekbench 6。
ご覧のように、シングルコアの性能は、M1→M2→M3と、順当に10〜20%の性能向上をみており、マルチコアの性能数字は、その性能向上とコア数の追加を掛け合わせたものになっている。従来モデルは、ProやMaxであってもコア数はさほど増やされていなかったが、今回のM3 Maxは最大16コア(高性能コア12、高効率コア4)ということで、大幅な性能向上を見ている。
GPU性能についてはそれより速い速度で性能向上を見せており、(ここには数値がないが)M2 Maxの性能を大きく上回り、M2 Ultraの性能に迫るもになっている。
インテル世代のMacBook Air(Core i5)と較べると、クラスが違うとはいえ、同じノートパソコンだというのに比較にならないほど高性能になっていることが、視覚的にお分かりいただけるだろう。
コア数やメモリ帯域に制限の加わったM3 Pro搭載機の数値がどうなったのかは興味のあるところだが、少なくともM3 Maxの性能は、安心して購入ボタンを押せるものだと言っていいだろう。
動画編集、フィルターも書き出しも、超速い!
さて、次に実際に使ってみてのパフォーマンスをチェックすることにした。
といっても、筆者自身はあまり重い画像の編集はしないのだが。
まず、iPhone 15 Pro Maxで、10分間のApple ProRes 422 HQの画像を撮影。MacBook Pro 14インチのM3モデルと、M3 Maxモデルに取り込んで編集してみた。たった10分でも60GB以上あるという画像サイズだ。
その動画全部に、映画っぽい世界観になると今流行りのティール&オレンジのエフェクトをかけてみた。
MacBook Pro M3では、2分26秒04。これでも十分に速いはずなのだが、MacBook Pro M3 Maxは、このフィルターの適用をわずか51秒8でやってのける。
これらの処理は、何度もやり直したりするものだから、処理が速いとそれだけ全体の効率は良くなる。フィルターをかける処理に要する時間が1/2.8に短縮されるということで、動画を編集する人にとって、このパフォーマンスはありがたいはずだ。
次に、その動画を.movに書き出してみた。
MacBook Pro M3でも(これだって十分に速いはず)1分35秒05かかるところを、MacBook Pro M3 Maxはわずか、39秒03でやってのけた。作業時間が1/2.4になる計算だ。
動画を書き出してから、「あ、このテロップ、間違えている」というのはよくある失敗だと思うのだが、これだけ書き出し時間が速ければ、リカバリーにかかる時間は短くて済むというものだ。
日々、動画編集をやってらっしゃる方は、これだけでもM3 Max搭載機が欲しくなったのではないだろうか? そして、日々時間に追われて仕事をしているプロフェッショナルにとっては、決して高いものではないと思う(むしろ、ストレージやメモリの方が悩ましい)。
持ち運べる、超ハイパフォーマンス!
最後に、(私はゲームには疎いのだが)Steamで、『Baldur’s Gate 3』をインストールしてプレイしてみた。コントローラはプレステのDualSenseワイヤレスコントローラを使用。最近のMacはワイヤレスのゲームコントローラーをBluetooth接続で利用できるので、ひとつ持っておくと便利だ。
『Baldur’s Gate 3』
https://store.steampowered.com/app/1086940/Baldurs_Gate_3/
『Baldur’s Gate 3』は往年のダンジョンズ&ドラゴンズの世界観を使ったロールプレイングゲーム。ご覧のような選択肢型の会話と、マップ内での移動、モンスターとの戦闘を重ねながらゲームを進めていく。
ちょこっと最初の方をプレイしただけだが、キャラクターメイクから、種族や職業などを自由に選べて、フィールドの中でもほとんど自由に歩ける。ムービー部分もあるが、基本的には高度なグラフィックス処理が必要とされる。MacBook Pro M3 Maxであれば、そんな処理能力を必要とするゲームでも楽々と快適にプレイすることができる。
筆者の利用では、なかなかM3 Maxの『底』を知ることはできないが、パフォーマンスの素晴らしさの一端はうかがい知ることができた。持ち運べる処理能力が必要だが、16インチの大画面は不要(もしくは、外付けディスプレイを使う)という人に、ぜひお勧めしたい。
(村上タクタ)
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