デニムの基礎用語辞典
素材、染色、縫製、加工、ヴィンテージまで。デニムをより深く知るための基礎用語で、一本のジーンズに詰まった背景を読み解こう。
アタリ
着用や洗濯を重ねることで、生地の凹凸や縫い目に沿って現れる色落ちや陰影のこと。ヒゲやハチノスもアタリの一種で、持ち主の動きや生活が刻まれた、デニムならではの経年変化として楽しまれる。
アモスケイグ社
19世紀のアメリカで知られた織物メーカーで、リーバイス社が1922年頃まで取引していたと言われる。ワークウエア黎明期の生地供給元のひとつとして語られ、初期のデニム史をたどる際にしばしば登場する存在。
綾織り
経糸と緯糸を一定の規則でずらしながら交差させる織り方。表面に斜めの畝が現れるのが特徴で、平織りよりも柔軟性と耐久性に優れる。デニムはこの綾織りによって、独特の表情と丈夫さを備えた生地となっている。英語ではツイル。
インディゴ
デニムを象徴する青色の染料。現在主流なのは化学合成による合成インディゴで、安定した色味が得られる。植物由来の天然藍を用いた藍染めは、本藍染めと呼ばれることもあり、やわらかく奥行きのある発色が魅力。染料や染色方法によって、色味や褪色の仕方にも違いが表れる。
オンス
生地の重さを示す単位だが、デニム用語では生地の厚みを示す単位として使われることが多い。1平方ヤードあたり何オンスあるかで表す。1オンスは約28・4グラム。略記号は「oz」。
ケミカルウォッシュ
薬品を用いて生地を脱色し、強いコントラストやムラ感を生み出す加工。1980年代を象徴する表現として広まり、酸化剤を使用することによる激しい色落ちが特徴。
コーンミルズ社
アメリカを代表する老舗デニムメーカー。ノースカロライナ州を拠点に、多くのワークブランドやジーンズブランドへ生地を供給してきた。リーバイス社は1915年から当社の生地を使用していたと言われ、ヴィンテージを語る際に欠かせない存在として知られる。
児島
岡山県倉敷市児島地区。学生服や作業服の産地として培った縫製技術を背景に、国産ジーンズの一大産地となった場所。ジャパンデニムを語るうえで、産地名としてまず押さえたい。
サンフォライズ加工
洗濯による大きな縮みを抑えるための防縮加工のこと。未洗いのリジッドデニムでもサイズ変化をある程度安定させる役割を持つ。
シャトル織機
緯糸を巻いたシャトルを往復させながらゆっくりと織り上げる旧式の織機。生産効率は高くないが、生地に自然なムラ感やふくらみが生まれやすい。力織機ともいう。現在でも修理されながら使用されていることが多い。
ストアブランド
百貨店や量販店、小売店が自社名義で展開したブランドのこと。アメリカではワークウエアや日用品の普及に大きな役割を果たし、ヴィンテージ市場でも独自ラベルや仕様の違いが注目される。代表的なのは3大デパートチェーン「JCペニー」「シアーズ」「モンゴメリー・ワード」。
ストーンウォッシュ
軽石などと一緒に洗いをかけることで、生地表面を擦り、穿き込んだような色落ちを与える加工。自然なユーズド感を短期間で表現できるため広く普及した。
XX(ダブルエックス)
最高ランクのデニム生地を指す「エクストラ・エクシード」の略。生地や品質を示す記号として、リーバイスの「501XX」にその表記が用いられた。今日ではヴィンテージデニムを象徴する言葉として定着し、年代や仕様を読み解くうえでも重要な基準。
デッドストック
当時に生産されたものの、未使用のまま残った商品を指す。長期保管ゆえの焼けや汚れが見られる場合もあるが、フラッシャーなどがそのまま残っていると価値は高い。
デニム
一般には、経糸をインディゴで染め、緯糸に未晒しの糸を用いて織られる綾織り生地を指すことが多い。フランス語の「セルジュ・ドゥ・ニーム(ニーム地方で作られたサージ生地の意)」が語源。
ハチノス
膝裏に現れる蜂の巣状のシワと色落ちのこと。立つ、座る、しゃがむといった動作によってシワが定着し、その部分が擦れることで生まれる。穿き手のクセが出やすいアタリであり、美しいハチノスは色落ち好きの大きな楽しみ。
ヒゲ
フロントの股部分から太ももにかけて現れる、横方向の筋状の色落ち。穿いたときにできるシワが擦れることで形成され、穿き込みの歴史を視覚的に表す代表的なアタリとして親しまれている。濃淡の出方で印象は大きく変わる。
ユニオンスペシャル
アメリカの老舗ミシンメーカー。とくに裾のチェーンステッチを縫うミシンで有名で、その縫製によって洗い後に生まれる独特のうねりは「パッカリング」として愛好家に珍重される。ヴィンテージ縫製を語るうえで欠かせない名機。
リジッド
生地を一度も水に通していない状態で販売されるデニムを指すことが多い。糊が残っていて生地が硬く、自分の穿き方によるアタリや色落ちを一から育てられるのが魅力として、世界中で人気がある。
ロープ染色
束ねた糸をロープ状にしてインディゴ染料に浸し、酸化させながら染める方法。糸の芯まで染まりきらないため、穿き込むほどに白い芯が現れ、デニムらしい褪色に。
ロットナンバー
リーバイスの501や、リーの101など、ブランドが製品を識別するために付ける番号で、品番や型番にあたるもの。シルエットや仕様、時代ごとの差異を見分ける手がかりになり、ヴィンテージでも現行品でも重要。一本の背景を読み解く入口になる情報である。
ジーンズの各部名称
LVCの1937年モデルは、ワークウエア出自のジーンズならではのディテールが満載。まずは各部の名称と役割を知ることから始めよう。
ウォッチポケット
もともとは懐中時計を入れるため、このような名称に。腕時計の所持率が上がると同時に、コインや鍵を入れるようになったことから、「コインポケット」とも呼ばれる。ポケット口にセルビッジが使われていた時代もある。

ベルトループ
ベルトを固定し、ウエストサイズの微調整を可能にするループ。1930年代後半にベルト着用が広がるとジーンズにも定着し、リーバイスでは当初の幅広仕様から戦後には細幅へと変化。実用性と時代性を映すディテール。

トップボタンとボタンフライ
トップボタンは刻印や装飾にブランドの個性が表れるディテール。ヴィンテージではボタンフライが代表的だが、1950年代には501ZXXのようなジッパーフライ仕様も登場する。年代やモデルごとの違いを楽しめる部分だ。

スレーキ
ポケットの袋布にあたるスレーキは、内側に隠された重要なディテール。生成りのツイル地が多く見られるが、大戦期にはヘリンボーンツイルやデニム、ネル生地が使われる例もある。素材やスタンプ、縫製が年代ごとに違う。

リベット
1873年に特許を取得したリベットは、負荷のかかる箇所を補強するための金属パーツ。かつては股部分にも補強用のクロッチリベットが打たれていたが、やがて姿を消し、後にカンヌキ留めへと置き換えられていった。

セルビッジ
生地の端がほつれないよう旧式のシャトル織機で織られた、生地の“耳”部分。白地に赤糸を走らせた赤耳が有名だが、色や仕様はさまざま。ヴィンテージジーンズを象徴するディテールとして、多くの愛好家に親しまれる。

スティッチ
ヴィンテージジーンズの各部の縫製には綿糸が使われることが多く、経年で糸が褪色して独特の表情を生む。裾は環縫いミシンによるチェーンスティッチが多く見られ、洗濯と着用を重ねると波打つようなパッカリングが現れる。

バックシンチ
サスペンダーで穿く時代に、ウエストサイズを背面で調整するために設けられたベルト状のパーツ。リーバイスに限らず多くのワークパンツに見られたが、ベルトループの普及や大戦期の物資統制を背景に姿を消していった。

パッチ
ブランド名やサイズ、ロット番号などを記したパーツ。初期は馬革や鹿革などのレザーパッチが主流だったが、1950年代頃からはコストや耐久性を考慮した紙パッチも普及。素材によって縮み方や風合いの変化が異なる。

隠しリベット
当初表面に露出していた、バックポケット口を補強するリベットは、鞍や家具を傷付けるため、生地の内側へ隠す仕様に変更。リーバイスでは1937年に特許を取得し、1966年頃まで続いた。コンシールドリベットの呼称も。

ピスネーム
ブランド名や商標を記した小さな布タグ。リーバイスでは赤いタブが使われることから「赤タブ」とも呼ばれ、年代によって文字の表記や商標登録を示す®マークの有無などに違いが見られる。年代判別に欠かせない。

アーキュエイトスティッチ
バックポケットにある弓形(=アーキュエイト)のスティッチ。リーバイスで古くから採用され、多くのメーカーが真似たため1943年に米国で商標登録された。大戦期にはペンキによる代用も行われ、戦後再びスティッチ仕様に。

(出典/「
photo/Nanako Hidaka 日高奈々子 text/Joji Sakaguchi 坂口丈治
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