“ニシンの骨”が軍服を変えた!? タフで美しいへリンボーンツイル(HBT)の歴戦のウエアたち

HBTはワークやミリタリーを語るうえで欠かせない存在だ。ヘリンボーンツイルの名は、V字状の綾目が“ニシンの骨”に似ていることに由来。この織り構造は強度と耐久性に優れており、この構造が高く評価されミリタリーウエアにも採用されるようになった。独特の表情と高い耐久性を兼ね備えたこの生地は、時代やジャンルを超えて、いまなお多くの服好きたちを惹きつけてやまない。この魅力を多様なウエアとの関係性を軸に、素材としての個性や経年変化といった視点でも掘り下げていく。

第二次世界大戦でアメリカ軍に採用され、高い耐久性と快適性で戦場を支えたHBT

第二次世界大戦以前、アメリカ陸軍のユーティリティウエアにはダック地やデニムといった厚手の素材が用いられていたが、重量や通気性の面で過酷な環境下では課題も多かった。

そこで採用されたのがHBT。

軽量でありながら高い強度を備えたこの生地は、作業着や戦闘被服として急速に普及し、兵士の機動性と快適性を大きく向上させた。

当初はオリーブドラブ単色の実用本位な仕様が主流だったが、戦局の拡大とともに被服にも迷彩の必要性が求められ、フロッグスキン迷彩が誕生する。斑点状のパターンは密林や海岸線といった多様な環境に対応する目的で開発され、特にアメリカ海兵隊を中心に実戦投入された経緯を持つ。このようにHBTは環境適応性を備えた装備へと変化していく過程で、多大なる影響を与えたのだ。

ここでは、第二次世界大戦期にアメリカ陸軍・海軍、そして海兵隊が採用したHBT製ミリタリーガーメンツをピック。実物ヴィンテージをもとに、それぞれのディテールの違い、年代ごとの変遷を追いながら、HBTウエアの系譜を整理していく。

アメリカ陸軍初採用の、通称M-41 HBT|[U.S. ARMY] Jacket, Herringbone Twill, Special

アメリカ陸軍が初めてHBT生地を採用したユーティリティジャケットで、1941年の採用からM-41 HBTと呼ばれる。それまでのダックやデニム製被服の重さや通気性、着脱性の問題を改善する目的で開発され、軽量かつ高強度のHBT生地を使い、前開き仕様やサイドアジャスターの採用により、作業性と快適性を大きく向上させた。

前身:[U.S. ARMY] Fatigue Coat及びJumper, Working, Denim

デニム/ダック製の軍用被服は20世紀初頭〜1930年代を通じて大きく形を変えずに使われ続けるが、1940年には着脱性を改善した前開き仕様へと改良され、翌年にはHBT素材へ移行する。

通称M-43 HBTサイドカーゴパンツ|[U.S. ARMY]Trousers, Herringbone Twill, O.D. Shade 7

1943年に採用されたM-43 HBTサイドカーゴパンツは、カーゴパンツの原型の一つとされる。両腿の大型ポケットや前立てのガスフラップなど特徴的な設計を備える一方、スラッシュポケットを持たないなど利便性はまだ発展途上だったが、このサイドポケットの意匠は後の軍用トラウザーズに大きな影響を与えた。

コットンツイル使用も存在

M-43 HBTサイドカーゴパンツにはコットンツイル仕様も存在する。一説には、湿度の高い熱帯地域での運用を想定しており、水に濡れてもHBTより乾きやすい生地が用いられたとされる。

通称M-43 HBTジャケット|[U.S. ARMY] Jacket, Herringbone Twill, O.D. Shade 7

1943年に採用されたM-43 HBTジャケットは、M-41の流れを受けて改良されたモデル。2ポケットの基本構成を踏襲しつつ全体の仕様を簡素化し、量産性を高めるとともに、前立て内側にはガスフラップを追加するなど、より戦闘環境を意識したディテールが盛り込まれた。

襟裏に配された2つのボタンは、化学兵器対策を想定したディテール。ここにウール製のガスプロテクティブフードを装着して使用する設計となっている。

通称M-47 HBTシャツ(M-43改良型)|[U.S. ARMY] Jacket, Herringbone Twill, O.D. Shade 7

M-47 HBTシャツは、1940年代後半に登場したM-43 HBTジャケットの改良型。13スターの金属ボタンは尿素製へと変更され、ガスフラップも廃止、マチ付きポケットからマチのないパッチポケットに変更されるなど、仕様は大幅に簡素化。シルエットもジャケットからシャツに近い軽快なものへと変化する。

通称M-42フロッグスキンワンピース|[U.S. ARMY] Suit, Working, One-Piece, Jungle

M-42フロッグスキンワンピースは、1942年にアメリカ陸軍向けに登場したジャングル用ワンピース。両胸と両太腿に大型カーゴポケットを備え、装備の重さでずり落ちないよう内側にサスペンダーを設けている。フロッグスキン迷彩は、密林や沿岸の環境に対応するため陸軍が初めて公式に採用したパターンだ。

M-41 HBTに、ハンドペイントでフロッグスキン迷彩を意識したパターンが施された個体。制式採用ではないものの、現場レベルでも迷彩の必要性が認識されていたことを示す一例だ。

通称M-43フロッグスキンジャケット|[U.S. ARMY] Jacket, Herringbone Twill, Camouflage

1943年に登場したM-43フロッグスキンジャケットは、前頁で紹介したM-42フロッグスキンワンピースの進化版。M-43 HBTに近いデザインながら、装備品の引っ掛かりや地面での接触を想定して隠しボタンのマチ付きポケットや肘の二重補強を備え、ガスフラップも設けられるなど戦場での実用性を高めた設計だ。

1943年9月20日にフィラデルフィア兵站補給部で検査・承認された記録もしっかり残る。当時から米陸軍では品質管理が徹底されていた。

通称M-43フロッグスキンサイドカーゴパンツ|[U.S. ARMY] Trousers, Herringbone Twill, Camouflage

M-43フロッグスキンサイドカーゴパンツは、M-43 HBTサイドカーゴパンツに近いデザインを持ちながら、実戦向けに改良されたモデルだ。隠しボタン仕様のサイドポケットや二重補強の膝、サスペンダー用ボタンを備え、裾はボタンで絞れる設計となっており、ブーツインを想定した実用性の高い作りだ。

フロッグスキン迷彩は熱帯の密林や沿岸部での視認性低下を目的とした初期迷彩パターン。グリーンとブラウンの両面プリントとなるが、デザインはリバーシブルを想定していない。

この記事を書いた人
ADちゃん
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ADちゃん

ストリート&ミリタリー系編集者

Lightning本誌ではミリタリー担当として活動中。米空軍のフライトジャケットも大好きだけど、どちらかといえば土臭い米陸軍モノが大好物。そして得意とするミリタリージャンルは、第二次世界大戦から特殊部隊などの現代戦まで幅広く網羅。その流れからミリタリー系のバックパックも好き。まぁとにかく質実剛健なプロダクツが好きな男。【得意分野】ヴィンテージ古着、スケートボード、ミリタリーファッション、サバイバルゲーム
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