戦闘服に平和の象徴デイジーの刺繍を施す、アメリカ生まれのヴィンテージ古着リメイクブランド「SHANANA MIL」

「戦闘服」であるミリタリーガーメンツに、完全なる手作業で刺繍を施す。アメリカ生まれのヴィンテージ古着のリメイクブランドSHANANA MILだ。刺繍のモチーフとなるデイジーの花言葉は「平和」。戦争の対義語だ。このミスマッチングが戦闘服を、平和を象徴するガーメントに変化させる。

唯一無二の存在感を放つ手刺繍のデイジー

ヴィンテージのミリタリーガーメンツに手刺繍やペイントを加え、まったく新しい服を生み出す。それが「SHANANA MIL」だ。拠点はアメリカ・ロサンゼルス。オーナーのGypsyさんは1980年代にアメリカに渡り、古着のディーラーをやりながら、この唯一無二のブランドを立ち上げた。

ベイカーパンツやオールインワン、フィールドジャケットなど様々なミリタリーガーメンツをベースに、それぞれが持つ本来の良さを崩すことなく、デイジーの花をバランス良く刺繍する。戦闘感を打ち消し、ピースフルなアイテムに変貌させるのだ。ミリタリーガーメンツへのリスペクトと独創性が共存を果たす。

一流シェフが良質な食材を探し求めるように、「SHANANA MIL Daisy」には良質な、ベースとなるヴィンテージを探し出さなければならない。旧いモノの価値が見直され、ヴィンテージ古着が高騰する昨今、ベース集めにも苦労する時代になった。ますます、デイジーの価値は高まるばかりなのだ。ただ、SHANANA MILが開いたヴィンテージミリタリーガーメンツの「裏扉」は、一度入ると出たくなくなる、居心地の良い花畑に繋がっている。

SHANANA MILのアトリエには数々の刺繍糸がストックされている。「デイジー」シリーズは花びらの白の他に様々な色が加えられる。

多過ぎず、少な過ぎず。そして、大き過ぎず、小さ過ぎず。絶妙なバランスでデイジーの花が配置され、美しい全体像が作られる。

工場で完成するプロダクツではない。アトリエで作られる、まるでアートピース。自分に合う一着を探し当てる楽しみがある。

1984年、ロサンゼルスオリンピックの年に古着バイヤーとしてアメリカに行き、すぐに移住を決意したというオーナーのGypsyさん。現在もバリバリのヴィンテージディーラーで、ミリタリーガーメンツの知識は絶大。

WW1当時のミルスペックのステンシルマシンは現在も稼働中。SHANANA MILのステンシルペイントアイテムにも使われる。貴重なコレクションであり、商売道具でもある。

SHANANA MILのアトリエ入口の壁にステンシルでペイントされているのはネイティブアメリカンの教えで、Gypsyさんの座右の銘。「我々は地球の一部なのだ」という意味。

第二次大戦期のアメリカ海兵隊のM-43トラウザーズ。HBTで古着市場では高騰している。そこにステンシルとハンドペイントでカスタムを施している。「お酒を飲みながら、描いたんです(笑)」と言う、彼のアート作品。

SHANANA MILのショールームには貴重なヴィンテージフライトジャケットがディスプレイ。「A-2、好きなんだよね〜」と微笑むGypsyさん。ヴィンテージへの敬意は永遠なり。

ヴィンテージディーラーとしての顔も健在

ロサンゼルス某所にあるSHANANA MILのショールーム兼アトリエ。日本からも古着のバイヤーたちがやって来る場所でもある。

第一次世界大戦前の将校用セレモニージャケットだろうか。これもアメリカ軍の軍服である。ボタンではなくフック留め。金モールの装飾がゴージャスで、保存状態も良好。

ヴィンテージのミリタリーガーメンツが所狭しと並ぶSHANANA MILのショールーム。Gypsyさんが大好きだと言うA-2は、特に何着も揃っているが、いずれの個体もコンディションの良さがが目立つ。

世にも珍しいタイガーカモのテーラードジャケット。おそらくパーティジャケットだろう。台北のテーラーで仕立てられたモノだとわかるテーラーネームが内側に。持ち主の名前も刺繍されている、本格的なテーラーリング。

100%シルクのカモフラージュ生地は第二次大戦期のドイツ軍のパラシュートクロス。フランス侵攻の際にフランスの地形に合わせて考案されたパターン。テーラーでコートに仕立てられた。

(出典/「CLUTCH Magazine 2026年5月号 Vol.103」)

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