【東京横丁酒場ガイド】まるます家(赤羽)|朝から飲めても罪悪感ゼロ。家庭の延長ここにあり。

  • 2023.08.30

”せんべろ”や”ハシゴ酒””ネオ大衆酒場”などが昭和時代を知らない若者の間で流行っている今、「安くて旨い」横丁酒場が人気を集めている。そのなかでも歴史の長い横丁酒場に必ずある「物語」がまた酒の肴になるだろう。赤羽にある「まるます家」は戦後すぐに創業した、朝から持ち帰りと店飲みが楽しめる下町酒場だ。

家飲みにも店飲みにも対応する鯉と鰻の名店。

外観は大きな看板が印象的で、遠くから見ても高い位置に置かれたうなぎの看板ですぐにわかる

平日でも朝酒ができる店は全国に数多あるが、まるます家ほど質の高い肴を出す店はない。埼玉に隣接する城北一帯には町工場が多く、高度経済成長をフル稼働で支えた。夜勤明けの工員らがお酒を飲む店が今なおあり、その代表格がまるます家なのだ。

外に面している蒲焼の焼き場。香りが道にただよい、お客さんが引き寄せられるように集う。取材時は平日の15時であったにもかかわらず、すでに入店を待つ列ができていた

戦後すぐの昭和25(1950)年創業。3代目になる松島和子さんの祖父が創業者だが、自転車預かり場を経営しながらも、飲み助ゆえにあちこち出歩き、心配した祖母が飲み屋の開業を思いついたという。もっとも、店を始めても結局は、祖父は「外でばかり飲んでいた」そうな。

店名通りの川魚がウリの店。隅田川や荒川が近く、川魚料理の文化がある地域だからこそ。使用する鯉は赤城山の麓の清流育ち。臭みは皆無で、信州にルーツを持つぼくには最高の酒肴だ。

キビキビと店を取り仕切る和子さんの動きには一分の無駄もない。早朝から仕込みをし、それでも追いつかないので営業中も。だから、閉店後はバタンキューなのだとか
無い物はないメニューの充実ぶりも、サービス精神の現れだ。懐具合がよければうなぎの蒲焼きで特級酒、そこそこなら鯉のあらいで二級酒と使い分けができたのだろう

1階の真ん中にある会計場所。注文が入ると、その商品の色付きの札を針に刺す。1階で食事をした際には、ぜひご自身の目でたしかめていただきたい

「まるます家」の極上川魚料理。

うなぎの蒲焼(2,300)は、 身が大きくふわふわ。200円プラスすればうな重もたべられる。

鯉あらい(400)は、清らかな生け簀で泥もしっかり吐かせ、泥臭さは一切しない。この旨味は何にも変えがたい。すっきりした飲み口の新潟の金枡に合う。

ジャン酎モヒート(1,200)は人気の飲み物。3杯以上飲むなら断然おトクである。モヒート(ライム)をもらい、自分で作るのも楽しい。

DATA
まるます家
東京都北区赤羽1-17-7
TEL03-3902-5614
営業/11時~19
休み/月曜(月に1度連休あり)

※値段など情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/別冊Lightning Vol.209TOKYOノスタルジック横丁」)

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