優作に魅せられ、ファッションもライフスタイルもトレースするようになった男の人生。
はじまりは映画『探偵物語』だった。薬師丸ひろ子目当てに観たDVDだったが、出演している松田優作が妙に気になった。この時、藤井克彦24歳。松田優作が亡くなってすでに25年の時が経っていた。
「優作にどっぷりハマったのは、母親がBSの再放送で観ていた『大都会partⅡ』でした。まさに優作の全盛期ですね。パンタロンスーツを着て走る姿が、あまりにもカッコよかった。優作というと『太陽にほえろ』のジーパン役が有名ですが、あの頃の優作は、まだ弾けきれてないんです。デビュー作ですしね」
『大都会partⅡ』を観てからというもの、藤井さんはどんどん松田優作にのめり込んでいく。出演する映画やドラマは言うに及ばず、当時の雑誌や書籍、サントラを次々と集めていった。藤井さんの優作愛は、それだけにとどまらなかった。松田優作・身長185㎝、藤井克彦・身長188㎝。優作と同じ長身を生かし、ファッションや髪形も、優作をトレースしていくようになる。その頃に撮られた写真が、このページの写真だ。まるで本人と見紛うほどの完成度といえる。この姿を見た友人から勧められ、舞台のオーディションを受けたこともある。結果は合格。
「松田優作に憧れる劇団員」という役で、J‒WAVEが企画する舞台に立った。役名も「優作」。
「東京・下北沢の本多劇場の舞台に立ったんですが、本多劇場といえば、松田優作がライブを行った場所。感慨深かったですね」
原宿にあるベルボトム専門店「DeeDee」でベルボトムを買い、下北沢にある優作の行きつけだったバー「レディジェーン」で、優作の愛飲したアーリータイムズを飲んだ。胸板の厚い優作に少しでも近づくために筋トレもしたという。
「僕が優作に心酔する理由は、何も見た目だけではありません。彼のプロフェッショナリズムに感銘を受けたんです。例えば『野獣死すべし』では、世界中の戦場を取材し、数々の地獄を見た外信部記者の役で、げっそり頬のこけた雰囲気を出すために、奥歯を抜いて撮影に臨んでいます。そういう視点で優作作品を観返すと、身が締まる思いがしますね。自分の仕事と照らし合わせて、『自分はちゃんとやれているのだろうか、全力を出し切っているだろうか?』と自問します」
現在31歳となった藤井さん。仕事に差し支えるため、優作風のパーマヘアを止め、ばっさりと髪の毛を切った。しかし、優作への想いは何も変わることはない。人生の指針として、そして仕事に臨む姿勢を学ぶ“師匠”として、藤井さんは、今日も松田優作と向き合っている。
藤井さんが所有する珠玉の優作コレクション。
いまでは手に入りにくい、ファン垂涎のレアグッズや関係者のサイン、藤井さんのYouTube チャンネル「蘇える藤井」のファンから送られた一点モノまで、藤井さんが集めた松田優作関連のお宝の一部を紹介する。
映画のパンフレットはすべて所有。
実銃を隠したいわくつきの表紙。
松田優作関連書籍。
優作といえば……の革ジャン&ベルボトム。
松田優作には欠かせない拳銃も持ってます。
(出典/「Lightning2022年6月号 Vol.338」)
Text/T.Ogawa 小川高寛 Photo/S.Kai 甲斐俊一郎
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