まずは見ておきたい定番「角川映画」の松田優作。
1980年代を代表する邦画と言えば、角川映画を置いて他にない。角川書店とのメディアミックス戦略、本編を上回るほどの完成度を誇る予告編、そして、他のアイドルとは一線を画す角川映画のヒロインたち。そんな角川映画でヒットを飛ばしまくった男といえば、松田優作なのである。角川映画にはアクション作品あり、そして演技派へと移行していった’80年代の作品ありと魅力的な映画がそろうのだ。
1.『野獣死すべし』(1980年)
戦場カメラマンとして熾烈な現場を回った伊達邦彦(松田優作)は、帰国後に転職し、平穏な日々を送っていた。しかし戦場で育まれた野獣の血が騒ぎだし、銀行襲撃を企てる……。狂気さえ感じる演技がキレッキレな作品。頬がこけて見えるよう、奥歯4本を抜いて臨んだという。
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2.『蘇る金狼』(1979年)
一見平凡で真面目なサラリーマンの朝倉哲也(松田優作)。しかし夜になると体を鍛え、裏では会社乗っ取りを企む……という物語。正直かなりの悪党を演じているが、自分の野心を満たすためには手段を選ばない“鬼” になる。そんな役こそ、松田優作の真骨頂と思わせる作品。
3.探偵物語(1983年)
裕福な家庭のお嬢様の直美(薬師丸ひろ子)、そしてそのボディガード兼監視役として雇われた探偵、辻山(松田優作)。ある日辻山が事件に巻き込まれ、ストーリーが進んでいく。自然体の演技で、薬師丸とは対照的な大人っぽさを強調し、二人の妙な間も楽しげな作品。キスシーンも話題となった。
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4.『人間の証明』(1977年)
『犬神家の一族』につぐ角川作品第2弾。殺人事件を追う棟寄刑事を松田優作が熱演。アクション俳優として全盛期にあった1977年に公開されたが、当時のイメージとは異なる寡黙な役も存在感たっぷりに演じた。CMで使われた「母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね」というセリフも印象深い。
続いて、定番の角川映画以外の、松田優作の見ておくべき出演作ベスト5を紹介!
1位 病気を隠しながら撮影した、渾身の遺作。『ブラック・レイン』
日本とアメリカの刑事が協力してヤクザに立ち向かう物語。仁義を軽んじる新世代ヤクザ、佐藤を松田優作が怪演。ハリウッド映画初出演が決まり、ほどなくして癌が発覚。しかし佐藤を演じ切るために周囲に病気を隠し通し、撮影を続行したという。劇中でバイクを乗り回し、派手な格闘シーンもこなすなど、とても癌だったとは思えない、リドリー・スコット監督をも唸らせる迫真の演技を見せた。
2位 演技派・松田優作の、うちに秘めた狂気が炸裂する。『家族ゲーム』
高校受験を控えた息子のために雇った風変りな家庭教師によって、団地住まいの四人家族が次第に変化していくというホームドラマ。公開当時、キネマ旬報ベスト1をはじめ、さまざまな賞を受賞した。表情を顔に出さないユニークな家庭教師を演じているのだが、少し狂気じみた部分を秘めていてとても惹きつけられる。アクション映画から完全に脱却した松田優作を観ることができる作品。その後、長渕剛、櫻井翔(嵐)の主演でドラマ化されている。
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同率3位 不良教師VS不良生徒のバイオレンス作品。『暴力教室』
松田優作が型破りな教師を、不良生徒役に舘ひろしをはじめ、クールスのメンバーが演じた。それだけで見ものだが、シンナー、バイク、日本刀、ひいてはダイナマイトで爆破など何でもアリ。笑える。
同率3位 面白いけどカッコいい、王道キャラを熱演!『最も危険な遊戯』
遊戯シリーズの第1弾。国家権力に立ち向かう殺し屋を描いたハードボイルドアクション。普段はとぼけた性格だが、“殺し”になると人が変わったようになる優作王道パターン。観ておくべし。
同率3位 この展開、ついていける? な初監督作品。『ア・ホーマンス』
ヤクザが対立し合う新宿に、ふらりと現れた記憶を持たない男。やがてヤクザの抗争に巻き込まれていく……という内容だが、なかなかの超展開。松田優作の初監督作品であり、石橋凌のデビュー作。
アイドルとの共演映画からアクション、シリアスな作品まで、40歳という短い生涯のなかで多くの映画に出演した昭和を代表する俳優のひとり、松田優作。名前だけ聞いたことがあるという若い世代も、かつてハマってみていた同世代の方も、この機会に俳優・松田優作に触れてみてはいかがだろうか?
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(出典/「Lightning 2016年8月号 Vol.268」)
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