鹿革で到達した新境地。「THE FLAT HEAD DEERSKIN Collection」

世界中で愛される日本を代表するデニムブランド、THE FLAT HEAD。そのプロダクトに注ぎ込まれた彼らの熱情とこだわりは、他の追随を許さない。そんなTHE FLAT HEADのもう一つのマスターピースが、鹿革を使ったレザーウエアだ。自社工房で生み出されるTHE FLAT HEADのディアスキンアイテムは、着る者にワンランク上の最高のレザー体験を約束してくれる。

はじまりは、一枚のディアスキンシャツだった。

1996年の誕生以来、ジャパンデニムのトップブランドとしてその名を不動のものにしたTHE FLAT HEAD。そのデニムと双璧をなす人気アイテムがレザーウエアだ。特にディアスキンを使ったウエアは、バイカーからファッショニスタまで幅広く支持を集めるTHE FLAT HEADを代表するモデルとして注目を浴び続けている。

中でもブランド設立当初からラインナップされるディアスキンシャツは、鹿革ならではの柔らかな着心地と、均整の取れた美しいデザインで、今なお人気を集めている、まさにTHE FLAT HEADのフラッグシップモデルともいうべき存在だ。

「今でこそディアスキンを使ったレザーウエアは多いですが、はじめてTHE FLAT HEADがディアスキンシャツを作った頃は、ウエアの素材としてはまだまだマイナーな存在でした。でも、牛や馬にはない心地よい着心地のレザーウエアを、どうしても鹿革で作りたかった」

そう話すのは、THE FLAT HEADのディレクターである宮坂勝氏。長年にわたりTHE FLAT HEADのモノ作りに携わってきた、まさにモノ作りのスペシャリストだ。

THE FLAT HEADのディレクターであり工場長でもある宮坂勝氏。品質をコントロールできるのが自社ファクトリーの強みだと話す

「THE FLAT HEADでは、20年来の付き合いのある奈良のタンナー【藤岡勇吉本店】の1.3㎜厚フルベジタブルタンニン鞣しの鹿革を使っています。鹿革は伸縮性もあり粘りも強く、裁断や縫製など、馬や牛といった他の革と比べて、とても難しいんです。傷も多いため、非常に気を使いますね」

現在THE FLAT HEADのディアスキンアイテムは、すべて長野県千曲市にある自社ファクトリー「ストックバーグ」で作られている。ストックバーグは元々革小物の工房としてTHE FLAT HEADの設立と同時に誕生したが、レザーウエアの製作に着手したのは2017年のこと。現在では馬革のウエア3型と鹿革のウエア4型をストックバーグで作っている。

長野県千曲市にあるストックバーグ。広い室内に、ミシンや裁断台などが機能的に配されている。ストックバーグは1996年に3名で設立され、現在は10名の職人を有している

「裁断から縫製まで自社で作る強みは、クォリティをコントロールしやすいということ、そしてダイレクトに動けるということですね。縫製のピッチや作りに関して、レスポンスよく改良できる点も、自社生産のメリットです」

THE FLAT HEADの鹿革ウエアを代表するディアスキンシャツは、鹿革の背骨部分をシャツの背中心に合わせて作られており、また袖も縫い合わせのない1枚革を使用しているため、1着作るのに鹿革を4〜5枚を使用するという非常に贅沢な造りとなっている。

THE FLAT HEADのディアスキンウエア、ワンランク上のレザー体験を約束してくれるはずだ。

自社工房で生み出される、極上の鹿革ウエア。

現在、THE FLAT HEADのアイテムには、自社で作るスペシャルラインと外部工場で作るラインが存在する。中でも鹿革や馬革のジャケットは、長野県千曲市にあるTHE FLAT HEADの自社工房「ストックバーグ」で裁断から縫製まで一貫して生産されている。現在、ストックバーグの職人は約10名。THE FLAT HEADの珠玉のレザーウエアは、職人たちの丁寧な手仕事を経て産声を上げているのだ。

ストックバーグでは、レザーウエアの他に革小物も作られている。革小物を作る際のノウハウがウエアにフィードバッグされることも。

鹿革は非常に柔らかく、折り皺がすぐに付いてしまうため、保管にも気を使う。THE FLAT HEADでは、ストックルームで写真のようにバーに掛けて保管している。

こちらの筋が鹿革の背骨部分。THE FLAT HEADでは、この部分をジャケットの背中心に配している。そのため繊維の伸びる方向が着用者の動きに沿い、着心地もよくなる。鹿革は柔らかく、繊維が絡んでいるため粘りがあるのが特徴。中心を走る筋が、鹿の背骨のライン。THE FLAT HEADでは渋鞣しで素上げの鹿革を使用しており、革本来の風合いが味わえる半面、傷などが目立ってしまうため、原皮の状態に左右されてしまう。厚みは1.3㎜に指定している。

レザージャケット作りは、パーツ取りから始まる。鹿革は傷が多いので、それらを見極めながら、型紙を置いていく。

写真はレザーシャツのパーツ取り。THE FLAT HEADのレザーシャツは、1着作るのに4~5枚の鹿革を使う。

型紙を置き、銀ペンで印をつけたら、次は裁断の工程。鹿革は馬革や牛革と違い、伸縮性もあり粘りも強いので裁断が非常に難しい。そのため使用する革裁ち包丁は常に研いで切れ味を確保しているという。

縫い代や革の合わさる部分を薄く漉いていく。1.3㎜の鹿革を0.8㎜に漉いていくのだが、鹿革の場合、その繊維質の関係から伸縮性が強いため、漉き機にかけると巻き込んでしまい破れてしまうことも。細心の注意が必要となる。

THE FLAT HEADの証、オリジナルタグを縫い付けていく。クルマやモーターサイクルなどTHE FLAT HEADの世界観が象徴的に描かれる。

ディアスキンのシングルライダースLJ-DS01の袖口にマチを縫い付けていく。このマチは鹿革を2枚合わせた贅沢な仕様だ。

ライダースの袖口のマチのパーツは、表側からミシンで縫製していくため、縫っていく際には裏側を見ることは出来ない。

裏返してみるとご覧の通りの美しい仕上がりに。こうした細やかな箇所にも、職人技が光る。

THE FLAT HEAD DEERSKIN Collectionのプロダクツ。

LS-DS003 (Sample)

THE FLAT HEADのディアスキンアイテムを一躍有名にしたディアスキンシャツLS-DS001をアップデートさせ、さらなる進化を遂げた新モデル。1.3㎜厚の渋鞣しの鹿革を使用、鹿革の背骨部分を背中心に配し、袖も1枚革とするなど贅沢な造りとなっている。ウエスタンヨークが付き、フロントは水牛ボタン仕様。29万4800円

製作は長野にある自社ファクトリーで行われる。クルマとバイクの描かれたタグには、彼らの想いが詰まっている
フロントをはじめ、各所のボタンは水牛ボタンを採用して いる。自社工房ではボタンホール用の専用マシンも導入し た
背面にはウエスタンヨーク。中央部分の筋は、鹿革の背骨 部分。写真はサンプルのため仕様が若干変更される可能性もあり

LS-DS001

THE FLAT HEAD設立当初からラインナップされるディアスキンシャツLS-DS001。ワークシャツをイメージしたデザインで、ジーンズとの相性も抜群の1着に仕上がっている。革の背骨部分を背面の中央部分に配しているため、タイトフィットながら着用ストレスもない。THE FLAT HEADの定番アイテムだ。19万8000円

首周りには補強としてウルトラスウェードを使用しており、肌触りも心地よい。立体的なカーブを描く襟の形状も美しい
背面の中央部分にある筋は、鹿の背骨部分にあたるため、着心地も非常によく、左右対称の革の表情も美しい。贅沢な仕様だ
袖は一枚の革で構成され、肘部分に革の背中心が来るように配置される。継ぎ目のない袖は、すっきりとしていて美しい

LV-DS001

通気性と保温性に優れたディアスキンで仕立てたベストは、シャツの上から羽織ってもよし、インナーとしても重宝するため1年を通して着られる汎用性の高い1着。鹿革の背を中心にパーツを裁断しているため、着用感も良好。フロントは着脱も容易なスナップボタン仕様で、特製の鉄製バックルがアクセントになっている。15万4000円

LJ-DS001

「逆ハ」デザインの胸ポケットが印象的なスタンドカラーのシングルライダース。タイトなシルエットで、袖を通すと鹿革に包み込まれるような着用感が味わえる。1.3㎜厚の渋鞣しの鹿革は、着用するほどに体に馴染み、表面が擦れて特有の光沢が出現する。背面にはウエスタンヨークが設けられ、デザイン性も高い。27万5000円

【DATA】
THE FLAT HEAD MAIN STORE
長野県千曲市内川250-6
Tel.026-275-3005
営業/12:00~19:30
休み/水・木曜
https://www.flat-head.com/

※情報は取材当時のものです。

(出典/「CLUTCH2023年2月号 Vol.89」)

この記事を書いた人
モヒカン小川
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モヒカン小川

革ジャンの伝道師

幼少期の革ジャンとの出会いをきっかけにアメカジファッションにハマる。特にレザー、ミリタリーの知識は編集部随一を誇り、革ジャンについては業界でも知られた存在である。トレードマークのモヒカンは、やめ時を見失っているらしい。
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