【追悼・重松 健】さよなら、Crazy Tak/寄稿・増井貴光

初めて重松健に会ったのは2002年だったと思う。すぐに意気投合して「アメリカのレースを撮りに来なよ」という言葉に軽く「行きます」と返事をしてしまった。

1/4マイルを駆け抜ける、そんな生き方が魅力だった

ラスベガスのレースコースと日程だけ教えてくれたが、細かいことはまったく分からず。まぁアメリカは慣れているからどうにかなるだろうと行ってみると、当の本人は「ホントに来たの⁉」という感じ。その後何度もアメリカのレースを撮影したが、本人からの情報はいい加減、もしくは断片的。そんなノリで2018年まで年に1〜2回ほどではあるが彼を追いかけることになった。お互いにいい加減で適当な距離感があったから四半世紀も付き合いが続いた気もする。

2017年に彼は、6.021秒という驚異的なタイムでクオーターマイルを走った。これはナイトロハーレーでの世界記録だ。残念ながらその場におらず撮影はできなかったが、自分のことのようにうれしかったことを覚えている。

19年には、233mphという最高速の記録も出した。話をすると出した最高速よりも6秒を切ることに気持ちが向いていた。いい加減に見えつつもストイックにスピードを追求した男だった。

市販ドラッグレーサーである「V-RODデストロイヤー」のメディア向け試乗会で、僕はカメラマンではなくライダーとして走り、彼から手取り足取り教えてもらった。ブルスカやアメフェスで彼がデモランをする時は、ナイトロハーレーを僕のロードグライドでトーイングしたことも多い。VDAにはチームブルーパンサーで出場していた。そのロードグライドのインジェクションチューニングも彼にやってもらった。チューニングが終わって試乗すると「気持ちいいですわ〜」としか言わない。テクニカルなことや注意点など何も説明しない。やっぱりいい加減だと思いつつ試乗して感じたのは「気持ちいい!」だった。

クレイジーTakというニックネーム通り破天荒な男だった。冗談で「世界最速のヘンタイ」と呼んでいたが本人はまんざらでもなかったんじゃないかと思う。親友というには距離があったけれど、彼がいたから僕の人生は10倍くらい楽しくなった。昨年の11月に松山で呑む機会があった。いつも通り馬鹿話で盛り上がっていると急に真顔で「来年はアメリカを走るから一緒に行こう」と言ってきた。初めて会った時と同じように躊躇なく「行くよ」と答えた。その約束は叶うことはないけれど、彼が鮮烈にクオーターマイルを走るシーンを僕はいつまでも忘れない。

彼の鮮烈な生き方は、誰もが忘れないだろう

(出典/「CLUB HARLEY 2026年4月号」)

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