2ページ目 - EYEVAN(アイヴァン)の名作メガネはこうして生まれる

  • 2024.03.31

鯖江にひとりだけの職人による手彫り彫金「E-0505」

1980年代に発表したヴィンテージラインの代表モデルをベースに、メタルパーツをチタン素材でアップデート。世界を席巻した名作はこうして現在も鯖江で作られている。メガネ4万4000円、サングラス4万8400円(アイヴァン 東京ギャラリーTEL03-3409-1972)

1980年代に発表したヴィンテージテイストのモデルをデザインベースに持つ、[E-0505]は、アイヴァンが世界に誇る永世定番。とはいえ、量産向きかと問われると、全くもってそうではない。伸縮性や強度など、特性が異なる2種類の素材を僅か数ミリの細かいパーツを組み合わせて作り出すコンビネーションフレームは、むしろ他モデルより高い技術力を要する。

まず、その精度が求められるのがメタルパーツの製作。本モデルは軽量かつ耐久性に優れたチタン素材を採用するため、その加工はより難易度が高い。さらに、ブリッジからノーズパットまでが一体化した特徴的な「マンレイ山ブリッジ」は複雑な曲線を描くため、数十トンものプレスを何度も掛けながら、段階的に少しずつ成型する。その工程数はヨロイ飾りで10、ヨロイで16、テンプルは20にも及ぶという想像以上の手間と労力。

極めつけは、ブリッジとヨロイパーツに見られる繊細な彫金模様。オリジナルで製作された金型のマスターは、なんと鯖江にひとりしか存在しない職人による手彫り。各部に刻まれた絶滅危惧の職人技を、これほどまでに堪能できるアイウエアも極めて希少である。

このような工程や意匠は目に留まりやすい点であるが、[E-0505]に命を吹き込む本当の要は「組み上げ」にある。その名の通り、各パーツをひとつに組み上げる工程だが図面に照らし合わせるだけではない。ネジを絞めながらひとつひとつ人の手で整えるため工場によって“ツラ”が変わる。そこはかとなく漂うアメリカンな風格はその勘所をわきまえた工場だからこそ成せる、いぶし銀の業だ。

一体化したマンレイ山ブリッジやヨロイ、テンプルなど、使用されるメタルパーツは全てこのモデルのために金型から作られたオリジナル。わずか数ミリのパーツ作りでも、数十回にわたって高圧プレスを掛けながら成型するため、計り知れない労力と時間が費やされている
金型のマスターに施される美しい彫金模様は、なんと手彫り。鯖江にもひとりしかいない職人が鏨(たがね)を用いて生み出す、繊細なエッジは機械で彫るより、遥かに存在感が増す

他より多くのパーツを要するプラスチックフレームほど、メガネ作りの仕上げ工程である「組み上げ」が重要視される。全体のバランスや“面構え”を整えるのは、図面だけでは計り知れない、職人の経験値が物を言うのだ

【問い合わせ】
アイヴァン 東京ギャラリー
TEL03-3409-1972
https://eyevaneyewear.com/

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2024年4月号 Vol.203」)

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