鯖江最高峰のメタル工場で「ディグナクラシック」の[309 ピース]の製作工程を知る

今年生誕15周年を迎える「ディグナクラシック」を手がける「パリミキ」が所有する、メタル専門の自社工場「クリエイトスリー」も鯖江に構える。ものづくりにおいては、「手作業の良さ」にやたらスポットが当たるが、ここでは機械を使った「とにかくストイックな完璧主義」に定評がある。繊細かつ精密なその工程を今回見せてもらった。

メタルフレームの製造は驚くほど繊細だった

「ディグナクラシック」を手がける「パリミキ」が所有する、メタル専門の自社工場「クリエイトスリー」。ものづくりにおいては、「手作業の良さ」にやたらスポットが当たるが、ここでは機械を使った「とにかくストイックな完璧主義」に定評がある。

クリエイトスリー

たとえば、金型を作る工程は手作業で行う工場が多いなか、同工場では機械で金型に直接凹型の彫りを入れていく。これにより、限りなく精度が高まる。また、「ディグナクラシック」の象徴、ぐにゃりと曲がるゴムメタルを扱えるのは、同工場含めてたったの4社。鯖江屈指の工場なのだ。

1.製図・モデリング

まずは原型となる製図を作り、デザイナーの思い描く完成図を、実際に製造するうえで実現可能な形に落とし込む。金型を作るための3Dデータを作るモデリングという作業も。

2.金型づくり

各パーツを作るための基盤となる金型を作る。上の写真中央の奥にある箱型の金属が、何も手が施されていない状態。右が機械によって、一部のパーツの形が彫り込まれ、金型として完成した状態だ。

3.プレス

高熱でメタルを柔らかくしながら潰していくプレス工程。ひとつのパーツに対して平均すると8回ほど、プレスを行う必要がある。モデルによって使う金型が異なり、それらがズラリと並ぶ収納庫は圧巻。

パーツごとのプレスの順序を記したシートを見せてもらったが、テンプルに至っては12工程も必要

4.切削

プレスでパーツを抜き出すだけでは、まだ製品にできるほどのクオリティにはならない。油をかけてバリが出るのを防ぎつつ、カッターで切削していく。1㎜以下の非常に細かな世界である。

5.ロウづけ

メタルならでは工程が、この「ロウづけ」である。熱によって溶けるロウ剤を接着剤として、1000度ほどの熱を与えることでパーツ同士を固定していく。ロウ剤が不恰好にはみ出したり、製品になったときにロウがパーツから離れたりしないよう、細心の注意を払う。

ロウづけの前に、電流で各パーツにロウ剤を付着させるのだが、驚いたのはその細かさ。パーツによっては、0.5㎜四方という極小サイズも。しかも手作業

6.ガラ入れ・磨き

これがガラとなるくるみチップ!

角のある状態のフレームに丸みを与えるガラ入れはプラフレームと共通。ただし、ガラ(研磨用チップ)の種類が異なり、「クリエイトスリー」ではくるみチップをメインで使用。もちろん手作業によるバフがけの工程も必要不可欠。これにより美しき光沢を得る。

黙々とバフがけをしていた奥村さんという男性は、なんと同じ席で50年以上バフがけだけを続けてきたレジェンド。かたやガラ入れを担当していた女性は20代の若手職人

7.最終調整

人の手によって最終調整。完璧を目指して、少しの微差も見逃さない。ここでなにも調整しないことはあり得ないという。クリップオンにいたっては、バーの曲がり具合を癖づけるのは完全なる手作業。

最後はやっぱり人の手で!

ディグナクラシック渾身の周年記念モデルに注目

ジャケット3万9600円/シオタ(シオタ customerservice@ciota.jp)、パンツ3万2500円/セラー ドアー(アントリムTEL03-5466-1662)

国内最大規模を誇るメガネチェーン「パリミキ」のオリジナルブランドであり、2nd誌でもお馴染みの「ディグナクラシック」。本年で生誕15周年を迎え、アニバーサリーモデル5型がリリース予定。うち3型にクリップオンが付属し、それぞれシリアルナンバー入りで600本のみ生産される、まさにスペシャルなモデルだ。

同ブランドに多大な影響を与えたという、偉大なミュージシャンが愛用していたメガネをオマージュした[309 ピース]や、手彫りした金型をプレスすることで、非常に細かく美しい彫金があしらわれた[310]、[311]。そのクオリティの高さに対してはお手頃な価格は、周年モデルだからこその特権。この機を逃すわけにはいかない。

309 Peace

今回主役を張る[ピース]。偉大なミュージシャンに敬意を表したという玉型や、タルの形をした智が魅力。5万9400円(ディグナハウスTEL03-5843-1612)

310

50年代の米国ヴィンテージに見られたシェイプをモチーフに製作。周年モデルのなかではもっとも普遍的でかけやすい。5万9400円(ディグナハウス)

311

[310]同様、50年代の米国ヴィンテージがソース。クラウンパントとは反対に、下辺が直線的な意匠を“シモカク”と呼ぶ。5万9400円(ディグナハウス)

15周年を祝して作られたすべてのモデルに、それぞれ専用のクリップオンが付属。どれを選んでも、1本で2度オイシイというワケだ。それでいてこの価格とは恐れ入る

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2024年4月号 Vol.203」)

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パピー高野
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パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
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