やっぱりビートルズが好き! ヤァ!ヤァ!ヤァ!

東京インディーシーンで活躍する数多くのアーティストから絶大な支持を受ける、いまでは珍しい街のレコード店「ココナッツディスク」。

店長矢島さんと、かつてレコ屋氷河期にひっそりバイトをしていたセカンド編集部員がバックルームで交わす音楽よもやま話。今回は矢島さんが音楽に傾倒するきっかけとなったビートルズを特集。

多くのミュージシャンもオールタイムフェイバリットに挙げるビートルズの魅力を矢島さんの思い出とともにひもといてゆく。

いまビートルズを改めて取り上げる理由。

選曲・矢島和義(ココナッツディスク吉祥寺店)

聞き手・不気味くん(セカンド編集部)

1999年オープンの老舗中古レコード店。店長の矢島さんは確かな知識とは裏腹に素直な耳を持ち、良質なインディーアーティストを数々フックアップしてきた。本誌編集部員の不気味くんは、学生時代に同店で7年間アルバイトをしていた。

不気味くん 今回はついに真打ち登場! いつかはやろうと話していたビートルズ特集ですがようやく実現しますね。なかなか壮大なテーマだと思うんですが、そもそも、なぜこのタイミングで?

矢島さん 最近、ポール・マッカートニーが「AIの力を借りてビートルズの最後の新曲を完成させた」という発言をして大きなニュースになったのね。年内にはリリースされるということでみんなウォーッって盛り上がったんだけど、自分自身もとても驚いて。AIっていうから最初「AI美空ひばり」的なのを想像しちゃって。

不気味くん そんなのもありましたね。ホログラム映像と「ボーカロイド:AI」を使ったやつ。

矢島さん このビートルズのニュースを知ったとき、そういうのやるのかと思って「マジかよ」って感じだったんだけど、実際は全然違っていたようで。1995年から96年にかけて『ザ・ビートルズ・アンソロジー』っていうのが1、2、3とリリースされたんだけど、一作ごとに新曲を入れていたのね。1には「Free As A Bird」、2には「Real Love」というように。それで3でも予定はされていたんだけど、なかなかうまくいかなかったみたいで、結果的にこれには新曲は入らなかった。そこから20年くらい経ってテクノロジーが進化したことで当時できなかったことができるようになったり、ようやく曲を完成させられたということみたい。

不気味くん なるほど、おそらく『アンソロジー3』に入れる予定だった曲だろうと。

矢島さん 何の曲かはまだ発表されていないけどね。

不気味くん なるほどねぇ。今やAIも馬鹿にできないですね。

矢島さん YouTubeにも結構あるのよ。ファンがAIを使って作ってるのが。もしジョン・レノンが生きていたら……、とか。解散せずにそのまま年をとって80歳になって「Let It Be」をやったらどうか……、みたいなのが。ジョンの死後に発表された「Grow Old With Me」をビートルズがやっていたら、という動画もあって、これは実際に聴いたら結構泣けた。ビートルズって定期的に話題になるでしょ。2021年はピーター・ジャクソン監督の『ザ・ビートルズ Get Back』が配信で公開されたし。

不気味くん 確かに話題に事欠かないですよね。再発だったり発掘音源というのが折をみて世に出ています。

矢島さん そうそう。ビートルズはそのあたりをきっちり管理してやっているよね絶対。あそこまで完璧にリリース計画を立てているバンドは他にいないと思うんだ。ローリングストーンズにせよ何にせよ、多くは行き当たりばったりでやってる印象があるけど、ビートルズは実にしっかりコントロールされていて、その結果ビートルズという存在の格がさらに上がって、現在でも「ビートルズを聴いている人はわかっている人」というイメージが確立されたんじゃないかな。もともと世界一有名なバンドではあったんだけど、それをもう一段格上げしたというか。

不気味くんの最初のビートルズ体験。

不気味くん 以前、この連載で「90年代特集」をやったとき(第2回)、矢島さんが「その時代はビートルズが好きだって公言するのは恥ずかしくてできなかった」というようなことをいっていましたよね。それを聞いて、すごく意外に思いました。

矢島さん 不気味くんからするとビートルズは格が違うという感じだった?

不気味くん そうですね。どれだけ若くしてビートルズと出会うかで音楽人生が左右されるみたいなところがありました。小学生時代にビートルズ好きっていう友達が2~3人いて「進んでるなぁ」と思った記憶があります。今考えればそれは親の影響だったんだろうとは思いますが。小6だったか中1のときに『ザ・ビートルズ・ワン』が出て、それがビートルズを認識するきっかけになったんですけど、このリリースを記念して『ニュース・ステーション』で昔のライブ映像とか秘蔵映像をオンエアしてまして、これも幼心に楽しみにしていましたね。僕の年代だとビートルズはそんな存在でした。

矢島さん そうかぁ。『ワン』は2000年だよね。収録曲すべてチャート1位というベスト盤が作れてしまうのってやっぱり格が違うね。ほかのバンドでは難しいと思う。

古いもの好きの矢島少年ビートルズを知る。

不気味くん 僕はそんな感じでしたが、矢島さんがビートルズを知るのはいつ頃のことですか?

矢島さん 傾倒するのは小5、1987年だね。87年ってビートルズがデビューして25周年で世の中もちょっと盛り上がっていて、確かCD化がスタートしたのもそういうきっかけだったんじゃないかな。僕はもともと古いものが好きな小学生で、その頃一番好きだったのが漫画だったんだ。「漫画家になりたい」っていう子どもで。

ただ、好きな漫画というのが当時のリアルタイムのものではなくて古い作品だったの。手塚治虫とか藤子不二雄、石森章太郎、つまりトキワ荘系の漫画家のものを中心に1960年代、70年代の漫画を読んでいて。80年代の中頃ってレトロブームがあって、「昭和レトロ」なんていって昭和20年あたりから40年代のものや古いアニメ、歌番組の特番をテレビでしょっちゅうやっていたんだ。昔のテレビ番組やCMを取り上げる「テレビ探偵団」という番組は毎週観ていたな。

そんな影響を受けて、古いものがリアルタイムのものよりもカッコよく思えた。それで漫画も昔の作品が好きになったわけなんだけど、図書館で古い漫画とか1960年代のテレビ番組について書いてある本を見つけては読んでいるうちにビートルズの記事にたどり着いたの。当時の僕はビートルズという名前やリーダーの人が撃たれて亡くなった、みたいなことは知っていた程度だったから、このときはじめて「これがビートルズなんだ」とちゃんと認識したんだ。

スーツを着てネクタイを締めた、活動初期の頃の写真が載っていて、そのファッションとか髪型がカッコよく思えてとても印象に残った。これが小学校4年生のこと。

この記事を書いた人
2nd 編集部
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