2ページ目 - 紳士服業界の重鎮・赤峰幸生さんが、3年ぶりのイタリアで再確認したクラシックの真髄とは?

  • 2023.05.24

盟友、アントニオ・リヴェラーノと語るクラフツマンシップの未来。

(右)アントニオ・リヴェラーノ|1937年イタリア・プーリア州生まれ。7歳から兄ルイジとともにサルト(仕立て職人)の修行を始めた苦労人。技術とセンスを併せ持つイタリアでも稀有なサルトは、自身にも顧客にも妥協を許さない完璧主義者

赤峰 今日はフィレンツェにいる、私の親友をご紹介しましょう。仕立て屋のアントニオです。ぼくとはもう3738年の付き合いになるかな。もはや義兄弟です。

ファッション業界の誰もが憧れるイタリア屈指のサルト(仕立て職人)、アントニオ・リヴェラーノさんじゃないですか!

アントニオ いつも電話で話しているから久しぶりという気もしないけど、また会えて嬉しいよ。

赤峰 最近のイタリアのファッションはどうなの?

アントニオ まあひどくなる一方だね。若い連中が知ったかぶりでスーツや生地について語っているけど、全く基本をわかっていない。職人たちも基礎ができていないのにすぐ独立して、名声やお金を得たがる。ぼくやアカミネみたいに、 若者たちに教える人がいなくなってしまった。

赤峰 確かに。本来、若者を導くのは親の仕事なのにね。

アントニオ もともとイタリアの職人文化は、貴族から生まれたんだ。私たちサルトは彼らから多くを教わり、それを技術として下の世代に伝承してきた。しかしそうした伝統は、1950年代以降の急激な経済の発展によって失われた。大資本が発信する文化に取り込まれてしまったんだ。

赤峰 広告を大量に出しているブランドだけがいいもの、という時代になってしまっている。ぼくはその構造そのものに対して、ある種の戦いを挑みたいね。

アントニオ 今や子どもがテストで悪い点を取ると、親が学校にクレームをつけに来る時代だけど、私もそうした世の中に抗うべく、サルトの学校を運営しているよ。私の世代のように子どもの頃から修行するのは難しいけれど、やる気があれば本物になれるかもしれない。でも23年じゃ不可能。じっくり取り組まなくてはね。

赤峰 それにはひとり一人のお客さまと向き合う、覚悟が必要だよね。アントニオも長い時間をかけて、たくさんの質の高いお客さまと出会い、育てられて、今ここにいるんだから。

アントニオ 本物のサルトとは、洋服のすべてを知り尽くさなくてはなれません。服の仕立てはもちろん、着こなしに至るまでね。だからこそ私は、お客さまに何でも選ばせるのではなく、お客さまを輝かせる洋服を、私が選んで差し上げる。私を信頼してくれれば、すべてうまくいくのです。長年日本に通い、お客さまにスーツを仕立ててきましたが、そういう私のやり方は、日本の紳士服業界に大きな影響を与えられたのかな、と自負しています。

う~ん、義兄弟というだけあって、おふたりの仰ることは本当にそっくりですね!

赤峰 これはもう話が尽きないね。というわけで、この対談の完全版は、私が連載しているWEBマガジン「ぼくのおじさん」を読んでもらおうか。

1978年にアントニオ・リヴェラーノさんが今はなきルイジ・リヴェラーノさんと設立した仕立て屋「LIVERANO & LIVERANO」。アントニオさんが型紙を引き、熟練の職人たちがすべて手縫いで仕上げるスーツは3回ほどの仮縫いを必要とし、日本円で100万円程度~と値は張るが、イタリアの職人文化と芸術的センスが凝縮した、文化遺産とも呼ぶべき洋服だ。ぜひ一生に一度は挑戦したい。VIA DEI FOSSI,43 50123 FIRENZE TEL +39 055 2396436 日曜定休

40年付き合ってわかった、赤峰流メイド・イン・イタリー。

いやあ、世界最高の仕立て屋との対談、刺激的でした! しかしイタリアの洋服って、なんでこんなに魅力的なんですかね?

赤峰 アメリカやイギリスなどと違って、いまだにものづくりの文化が残っていることが大きい。今や紳士もののフルコレクションをつくれるのは、イタリアと日本しかありませんから。加えてイタリアの場合、縫製工場がパタンナーとともに自社ブランドを抱えていることが多いので、この映画のこのシーンに出てくる服……みたいな、細かなニュアンスが通じるんです。これは日本の縫製工場では、ほぼありませんから。

なるほど。先ほど仰った地域ごとの特性もあるんですか?

赤峰 もちろん。私は1998年、そういうイタリアのものづくりを活かした自身のブランド「Y.AKA–MINE」を設立して、全土を飛び回っていました。

すべてをイタリアでつくった、伝説の日本ブランドですね!

赤峰 日本では前人未踏でした。ニットやコートは北部、レザーはトスカーナ、ジャケットはフィレンツェ南部……といった具合に、それぞれの産地でフルコレクションをつくっていましたから。トラブルもたくさん経験しましたが、主に南のほうでしたね()

やはりナポリはクセが強いんですね()

詳細は明かせないがミラノの某店で、Akamine Royal Line用の生地を仕入れる赤峰さん。英国好みの赤峰さんは、イタリア生地であれば繊細な現行の生地よりも、味わい深いヴィンテージ生地を好むという。この日は年季の入ったバーバリーのカバートコートと、リヴェラーノ&リヴェラーノのグレースーツ、足元はジョンロブ。赤峰さんお得意のグレー~ブラウンの配色が、ここイタリアでは実に街になじみ、誰も観光客だとは思わない

赤峰 ともあれイタリアの強みって、中小のファミリー企業が圧倒的に多いことなんです。小規模だからこそ、ものづくりにおける原酒を薄めずに、守り続けることができる。古い考え方かもしれないけれど、これからの時代にこそ必要なやり方とも言えますよね。

最終回っぽい締め方ですが()、それこそトラッドですよね。

赤峰 2ndの読者の皆さんにも、それぞれの暮らしにおいて、自身の軸となるトラディショナルを大切にしてほしいね。皆さん、またどこかでお会いしましょう!

1980年代から着用しているリヴェラーノ&リヴェラーノのビスポークスーツ(写真上段)や、C.P.カンパニーやストーン・アイランドを設立した伝説のデザイナー、マッシモ・オスティのM-65(写真上段中)以外は、赤峰さんが1998年に設立したブランドY.AKAMINEのワードローブ。レザーならなめしの工程にまで携わって、とことん納得のいくものに高めた、思い出の品々だ。トラディショナルのルーツである英国の名品を、イタリアの技術を使って再現するというY.AKAMINEの試みは、日本の全セレクトショップのものづくりに、大きく影響を与えた

(出典/「2nd 20235月号 Vol.194」)

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