ScanSnapで古い写真を取り込もう
みなさんは、ご実家や、ご両親がお持ちの昔の写真をご覧になったことがあるだろうか? 古い写真はモノトーンで、その頃は世界もモノクロだったのではないかと思えるくらいだが、当時だって現実世界は高解像度のフルカラーで存在したのだ(当たり前だが)。高齢者の方の頭の中には、その頃のリアルな美しい世界がきっとあるはず。それを再現してみよう。
今回はサンプルとして、10年前に亡くなった筆者の祖母にスキャンさせてもらった写真を使おう。

(これはiX100でスキャンした時の写真だが、一緒にあるのがMacBook Pro 15インチCoreDuoで、すでにこの写真さえも10年経っていることに驚く(汗))
祖母は10年前に105歳で亡くなった。生まれたのは明治44年なので、1911年。この写真は結婚した年に祖父(つまり彼女にとっては夫)と上高地を旅行した時に撮ったものだと聞いた。当時の結婚年齢は若かっただろうから20歳で結婚したとして、1931年。昭和6年前後の写真ということになる。
遡ること約95年だ。

これがScanSnap iX100でスキャンした原本。
焼岳が噴火して、大正池ができたのは大正4年(1915年)だから、それから16年しか経っていない写真。大正池の立ち枯れの木々も、まだ新しくて大量に残っている。この写真では見えないが、他のカットでは、できたばかりの焼岳の山肌に小さな木が生え始めている。
祖父母の新婚時の旅行だったのだと思うが、当時はもっと不便だったであろう上高地に、和装で行くのは大変そうだ。極太のストライプがお洒落だが、この着物がどんな色だったのかも気になる。
ChatGPTは手軽で上手
まずはおなじみChatGPTに頼んでみる。

……うん、大正池の雰囲気や木々は良くできている。こんな感じだったのだろうと思う。
しかし、空は勝手に青空になっているし、祖母の顔は違う人になっている。一般論としてはよくできた写真だが、家族の思い出としてはこれでは困る。似てるのに違う顔というのは気持ち悪い。
選択肢が多く、原本を崩さずにカラー化できるPhotoshop
では次にPhotoshopの生成AI『Firefly』を使ってていねいにやってみよう。まずは、『フィルター>ニューラルフィルター>カラー化』を選択。

うん、写真の雰囲気を活かしたままカラー化されている。抑制された色調がいい雰囲気だ。しかし、ディテールがもっと欲しい。

Fireflyで生成アップスケールしてみた。雰囲気を壊さない範囲でという意味では、ベストかもしれない。
Adobe Photoshopは他社製のモデルも使えるから、それを使ってみよう。

まずはTopaz Gigapixel。ディテールを保持したまま高解像度になる。

悪くない。しかし、クッキリハッキリととまでにはならない。もっと生成AIに頑張ってもらおう……というわけで、Topaz Bloomを使ってみる。これは、生成AIの効き具合をスライドバーで10段階に調整できるので、思い切って9にしてみた。

誰? おばあちゃんどこ行ったの?(笑)
なんか知らん外国の方になっているし、傘は洋傘に。着物の左袖は不思議な感じの洋服になっているし、足は少し地面から浮いている。
背景の山も、ハリーポッターに出てくるゴブリンの住む雪山のような風景になっている。大正池も草が生えたおどろおどろしい沼地に。「My precious….」とか言って、ゴクリが出てきそうだ。生成AIの難しさを感じる。
Gensparkを使ってみた
次はGensparkにマルっと依頼してみた。

1920〜30年代の大正池という文脈は分かってくれたのだけど、写真は濃いめに仕上がった。

悪くはないが、原本よりすごく良くなったというわけでもない。カラー化もしてもらう。

うーん。いろいろ試みてみたけど、結局雨に濡れて色あせたカラー写真みたいな風情にしかならない。プロンプトを工夫すればもっと良くなるのかもしれないけれど、ちょっと思っていたのと違う。
生成AIとはいえタイムマシンではないのだから、学習時に大量の画像から獲得した「山はこう見える」「着物にはこういう色や模様があり得る」「1930年代の写真はこういう雰囲気」といった統計的なパターンを利用し、入力画像からもっともらしい画像を生成している。山や、空の雰囲気は推測できるが、祖母の着物が何色だったのか、分かるわけではない。もっと上手にAIを扱える人はいるだろうけど、筆者的には、ChatGPTが手軽、時間をかけていいならPhotoshop+Fireflyが自然な雰囲気で良かったと思う。
今度は、1960年代と思われる写真をカラー化
というところで、もうちょっと他の写真もカラー化してみよう。ここからは手軽に使える(そしてたまに起こるアクシデントも面白い)Photoshop+Fireflyを使ってみた。
まずは、こちら。

実はこの写真、いつ、どこで撮ったものかよく分からない。
京都、宇治の筆者の実家の近くではないかと思うけど、角にお店があって奥に山がある風景は場所を特定できない。ポスターにある鹿島守之助は調べると1953年4月から参議院議員なので、これが選挙ポスターなら1950〜60年代。祖父母が40〜50歳ぐらいということになるので、たいだいそういう時期だと推定できる。
角のイケズ石(車が家の近くを通り過ぎないようにするための石)が京都っぽい(笑)
ChatGPTで、カラー化するとこんな感じ。

これは比較的上手くいっている気がする。
細かい文字はAIらしい崩れを見せているが、選挙ポスターなどは上手にカラー化されている。フンドーキチ醤油の看板の吉のマークがうまく赤になっているが、郵便の看板の赤は表現されていないのはなぜだろう? これは学習データにありそうなものだが。
1931年頃の大阪、中之島近く

これは少し時代を遡って、さっきの上高地の写真の時代と近いはず。祖父は大阪毎日新聞社に勤めていたので、おそらく中之島近辺などのオフィス街だと思われる。 これもChatGPTにカラー化してもらおう。

これはけっこう上手くいった。祖父母の顔はやりすぎな気もするが、かろうじて「祖父母かな?」という線を維持している。驚いたのは祖母の着物で、こんなに華やかなものだったのだと驚いた。いや、この通りの色だとは限らないが、たしかに模様からするとこういう色味のような気がしてきた。
レンガの色、木々の緑も自然な感じだ。奥に写っている車に時代を感じる。
ヒルマン・ミンクスって車、知っている?
さらに、もう1枚。
30年ほど時代を下って、祖母と、娘夫婦。つまり、筆者の両親の写真。
これは場所もよく分かっていて、琵琶湖の青柳浜だ。筆者もこの時代から10年ほど経って、両親とよくキャンプに行ったし、その後は米軍払い下げの父のテントを借りて、友達ともキャンプに行った。筆者は高校時代、毎夏、友達とこのキャンプ場に10日ぐらい滞在して、泳いではマージャンしたり、バンガローの影に隠れてサバゲ(当時はそういう言葉はなかったが)をしていたものだ。

背後の車は、父が最初に中古で買ったヒルマン・ミンクス。
いすゞ系の英国車で、ちょっと輸入車っぽいいい車だったのを、数年落ちの中古車で買ったのだと思う。若者がクルマに乗れるようになる、日本のモータリゼーションの先駆けだともいえる。その後サニークーぺーを買って弟と京都の北山の山中で草レース的なラリーに出てたりしたというから、車が好きだったんだなぁと思う。

カラー化してみて初めて気がついたのだけど、祖母の横のピクニックバッグの上には、祖父のハットが乗っている。祖父がカメラを持って、この写真を撮っていたのだなとあらためて感じる。
’70年代初頭のNYは、なんとWTCが1本
ヒルマン・ミンクスを買って琵琶湖にドライブをした父も昨年亡くなって、詳細を聞くことはできない。
このちょっと後に父がNYに行った時の写真も出てきた。筆者が2歳の頃、父は1年ほど海外をうろうろしていたというから、時期としては1971年頃だと思われる。

サングラスをして、チャールズ・ブロンソンを気取っていたのだと思う。背後のビルがWTCだとすると、1973年竣工なので、建設中なのは時期として符合する。
これをカラー化してみた。

カラー化してみると、より雰囲気が出た。後ろがWTCだと言ったからか、2本に増やされているのはご愛嬌。父は、55年ほど前にここをどんな気持ちで歩いていたのだろうか?
ちなみに、ChatGPTに場所を推測させてみると「撮影場所はマンハッタン南東端の South Street、FDR Drive(当時のSouth Street Viaduct)沿いと見るのがかなり有力です。おそらくBrooklyn Bridge〜Manhattan Bridgeの間、South Street Seaportより少し北寄り。カメラは南西〜西南西、Lower Manhattan中心部と建設中のWTC方向を向いています。」との回答。
当たっているのかどうかは、今となっては良く分からない。
元データの解像度と正確性が大切。取り込みは、ぜひScanSnapで
生成AIでの写真復元やカラー化は面白い。
一方で、元写真に残っていない情報まで、本当に過去に存在した状態に戻しているわけではない。元画像に残っている情報と、大量の画像を学習することで得た知識を使って、「おそらくこうだったのではないか」というもっともらしいディテールを生成している部分もある。つまり、きれいになればなるほど、それが本当に過去の風景を正確に再現したものなのかは注意して見る必要がある。それを踏まえた上で楽しみたい。
生成アップスケールで重要なのは、『高解像度化=本来そこにあった情報が戻ってくる』ではないこと。通常の補間なら既存画素から計算して拡大するだけだが、生成アップスケールは「この顔ならここにまつ毛がありそう」「この着物ならこんな織り目だろう」と新しいディテールまで作ってしまう。見た目の解像感は上がっても、史料としての情報量が増えるわけではないことに注意したい。
だからこそ大切なのが、元写真からできるだけ多くの情報を取り込んでおくことだ。元データに十分な情報が残っていれば、それだけAIが推測して補う必要は少なくなる。最初に写真をスキャンする時には、なるべく高解像度かつクリアな状態で保存しておきたい。そのためにも、ScanSnapできれいに取り込み、用途に応じて十分な解像度でスキャンしておくことが大切だ。
(村上タクタ)
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