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キヤノンから『動画の6』フルサイズセンサー搭載EOS R6 V登場

キヤノンからEOS R6 Vが発表された。PowerShot V1、V10、EOS R50 Vに続く、Vシリーズ初のフルサイズ機の登場である。キヤノンオンラインショップ価格は36万3000円。EOS R6 Mark IIIの42万9000円よりは6万6000円安いが、EOS R50 Vの11万3300円に比べれば大幅に高い。さらに上位にはプロ機であるEOS R5 CなどのCシリーズがあるが、YouTuberなどのクリエイター向けラインナップとしてはEOS R6 Vがフラッグシップとなるのだろう。

同時にRF20-50mm F4 L IS USM PZという、フルサイズ対応RFレンズ初のパワーズーム内蔵レンズも登場した。RFマウントカメラ/レンズのラインナップはさらに拡充したといえるだろう。

Vシリーズ初のフルサイズセンサー機が持つ意味

筆者はEOS R6 Mark IIを使っている。筆者にとってR6は、あくまでスチル、つまり静止画を撮るためのカメラだ。もちろん動画も撮れるが、日常的にはファインダーを覗き、シャッターを切る道具である。だからEOS R6 Vは、自分向けというより「R6系のカメラを動画のために作り直すと、こうなるのか」という目線の観察になる。

縦位置撮影用に、本体向って右下にRECボタンがあるのも動画機ならでは。

まず大きな違いは、ファインダーがないことだ。筆者から見ると不自由だが、外部モニターをつないだり、ジンバルやリグに載せたりする人にとってはこの方が便利なのかもしれない。

下位モデルのEOS R50 Vに対して、圧倒的な美点がEOS R6 Mark IIIゆずりのフルサイズセンサーだろう。動画を撮るにしても、映画のような対象以外を大きくボカした映像を楽しめる。これはAPS-CのEOS R50 Vでは絶対に得られない。そのために3倍以上の価格というのもスゴい話だが、YouTubeを撮るにしても被写体を印象的に捉えられるのは大きな利点だ。

ただ、EOS R6 Mark IIIのセンサーを使っているだけでなく、7Kオープンゲート記録が可能になっているのが大きな特徴だ。通常、動画は16:9などの横長フォーマットでセンサーの一部を使って撮る。しかしオープンゲートでは、静止画と同じ3:2のセンサー領域を広く使う。これにより、あとから横動画にも縦動画にも切り出しやすくなる。YouTube、Instagram、TikTokなど、同じ素材を複数のプラットフォーム向けに使い回す人にとっては、かなり大きな意味がある。

動画向けらしさは、記録性能にも表れている。7K RAW、オーバーサンプリングによる4K60P、クロップなしの4K120P、Canon Log 2、最大15+ストップのダイナミックレンジなど、スペックだけを見ると、もはや『写真も撮れる動画機』と言った方が近い。さらに冷却ファンを内蔵し、長時間撮影やライブ配信にも配慮している。

冷却ファンによって空気を通す構造のために本体はだいぶ厚くなっている。この通風口は水も入るわけだが、内部構造とは別にシーリングされているので、防塵防滴構造に変わりはない。

面白いのは、それでも静止画性能を捨てていないことだ。約3250万画素のフルサイズセンサー、秒40コマの電子シャッター連写、プリ連続撮影など、スチルも十分に撮れる。ただし、メカシャッターはないし、ファインダーもない。筆者のように「カメラは目に当てて撮るもの」と思っている人間にとっては、EOS R6 Mark IIIの方が自然だろう。一方、動画から入った人が、サムネイルや告知用の静止画も同じ機材で撮るなら、R6 Vの方が自然なのかもしれない。

アサイン可能なボタンが非常に多くなっており、それぞれ番号が割り振られているのも動画機ならでは。背面のダイヤルが十字キーのように傾く構造になっていて、そこにも機能をアサイン可能なのも新しい。

同時にF4のパワーズームレンズも登場

同時発表のRF20-50mm F4 L IS USM PZも、動画向けという意味ではかなり分かりやすい。20mm始まりのF4通し、全長固定、約420g、そしてパワーズーム内蔵。スチル用レンズなら、20-50mmという焦点距離は少し短く感じるかもしれない。しかし、動画では20mmの広さがありがたい。手持ち、自撮り、ジンバル、室内撮影では、24mmより20mmの方が効く場面は多いはずだ。

パワーズームも、筆者のようにスチル中心だと必須ではない。むしろ手でズームリングを回せばいいと思う。しかし動画では、ズーム中の速度や滑らかさが画の印象に直結する。手で回すとどうしてもムラが出るし、ジンバルに載せた時にはレンズが伸び縮みして重心が変わるのも困る。その点、このレンズは全長固定で、ボディ側のズームレバーやリモコンから操作できる。動画を撮る人にとっては、ここが「Lレンズであること」と同じくらい重要なのだと思う。

筆者が実機を触って印象的だったのは、見た目ほど重く感じなかったことだ。冷却機構を持つぶん厚みはあるが、ボディもレンズも意外に軽い。RF20-50mm F4 L IS USM PZは、Lレンズとしてはかなり軽く、R6 Vとの組み合わせでも前が重くなりすぎない。動画機材は、スペック以上に取り回しが重要だ。長時間持つ、ジンバルに載せる、三脚に据える、縦位置で撮る。そうした実運用を考えると、この軽さは効くだろう。

もちろん、筆者のようなスチル中心のユーザーが、R6 Vを選ぶ理由はそれほど多くない。ファインダーが欲しいし、メカシャッターも欲しい。R6 Mark IIから買い替えるなら、素直にR6 Mark IIIの方を見ることになると思う。

しかし、動画を主戦場にしている人から見ると、話は違うのだろう。ファインダーより冷却ファン、メカシャッターよりオープンゲート、手動ズームよりパワーズーム、横位置だけでなく縦位置UI。R6 Vは、写真用カメラに動画機能を足した製品ではなく、動画の現場から逆算してR6系を再構成したカメラなのだ。

自分のためのカメラではない。だが、なぜこういう形になったのかは分かる。スチルのR6を使っているからこそ、EOS R6 Vの違いはよく見える。これはR6の派生機というより、画質にこだわり、背景を美しくボカしたい動画クリエイターにとっての“Vシリーズフラッグシップ機”なのである。

(村上タクタ)

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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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