
Shokz OpenFit Pro
https://jp.shokz.com/pages/openfit-pro
自分のいる空間と、音楽が融合する
OpenFit Proを使っていると、『あ、周囲の音を聞きながら音楽を聴くって、こういうことなんだ!』という発見を体験できた。
AirPods Max 2を頂点に、AirPods Proなどは完全に周囲の音を遮るイヤフォンだ(外部音取り込みという機能はあるが)。それはそれで、現実世界と自分を切り離して、音楽に没頭させてくれる素晴らしいガジェットだとは思う。たとえば、満員電車の苦痛と雑音から自分を切り離して、別世界で音楽を楽しめる。
しかし、このOpenFit Proを使っていると、音楽空間と、現実空間が融合する。公園の木々の間を歩きながらエンヤの『Orinoco Flow』を聞く、 夜の街角の雑踏の音を聞きながらサカナクションの『アルクアラウンド』を聞く、家で料理をしながら宇多田ヒカルの『花束を君に』を聞く。
生活の空間にBGMが流れる。そういう音楽体験を自分の日常に取り入れることができる。

もちろんスピーカーで音楽を流しても近い体験になるのだが、定位置にいなくても、キッチンに行っても、屋外を歩いていても高音質で音楽が楽しめるのが新鮮な体験だ。そして、他のイヤフォンのように「閉じて」いないのが新しい。自分のいる空間と音楽が融合しているのだ。
Shokzのオープンイヤーイヤフォンの進化の到達点
もちろん、従来のオープンイヤーイヤフォンでも同じことが起こっていたのだが、音質のレベルが違うと、体験も違う。いわば、高音質のスピーカーの定位置に自分が常にいるような状態なのだ。
筆者は、歴代のShokzのイヤフォンのほとんどを体験させてもらっているが、間違いなく本作がもっとも高音質に仕上がっている。カナル式のノイズキャンセリングイヤフォンとは体験が違うので比較は難しいが、筆者的にはAirPods Pro 3より自然に聞えるし高音質だと思う(これは筆者的にはかなり評価高い)。

歴史を辿ると、初期のShokzのイヤフォンは音質的には普通のイヤフォンと比較するのは難しかった。筆者はTitaniumの頃から試用しているが、当時の骨伝導イヤフォンは音量を上げると、耳の前の皮膚がビリビリと振動する感じがあった。また、しっかりした低音を表現するのは難しかった。そこから年々驚くほどの音質向上を続けており、現在の骨伝導型のフラッグシップであるOpenRun Pro 2は骨伝導スピーカーと、低音用の空気電動スピーカーを併用するShokz DualPitchを使って、高い音質を実現している。
こちらは、筆者はランニングの時に毎日使っている。左右がチタンのワイヤーで繋がったShokz伝統のスタイルは、ランニング時にズレず、落としたりする心配がないので安心なのだ。
オープンイヤーはここまで進化したのか! という感慨
それとは別に、気軽に日常シーンで使える、より高音質を楽しめるオープンイヤーイヤフォンとして登場したのがOpenFitシリーズだ。こちらは骨伝導を使わないDirectPitchテクノロジーという仕組みを使って、オープンイヤーでの高音質を実現してきた(筆者の推測だが、骨伝導を使うためには、左右を繋いでチタンワイヤーで頭部に押さえつける必要があるのだと思う)。
OpenFit、OpenFit 2、OpenFit Air、OpenFit 2+と進化、バリエーションを増やし続けて、今回登場したOpenFit Proに到達する。現在ラインナップされているOpenFit Airが1万9880円、OpenFit 2+が2万7880円だから、3万9880円のOpenFit Proはかなり高価だ。
しかし、試用してみると、その価値があると断言できる。
Titaniumからの流れを知っている筆者としては、オープンイヤーイヤフォンがここまで来たのか! と感慨深い気がする。
比較すると、中高音がクリアで低音がしっかりしている
過去のOpenFitシリーズと較べると、音のクリアさが素晴らしい。
たとえば、OpenFit 2+とOpenFit Proを比べてみると、OpenFit 2+は音の輪郭が少しぼんやりしている。特に低音がボンヤリしている。OpenFit Proの方がはるかに音がクリアだし中音、高音もクッキリ聞こえてくる。
Dolby Atmosに対応したこともあるのか、楽器の定位がしっかりしていて、オープンイヤーなのにどの楽器がどの方向から聞こえてくるのかが感じられる。

筆者も朝のランニングで日常的に使っているOpenRun Pro 2と比べると、低音の迫力が段違いだ。OpenRun Pro 2は歴代のランニング用のShokzと比べると群を抜いて高音質だとは思うが、それよりもはっきりと低音がしっかり作り込まれている。こうなると、次のOpenRun Proシリーズがどうなるのか気になるが、そこはスポーツ用と、日常ユース用の違いというところなのだろう。
フォーカスモードの効果はどれぐらい?
ユーザーの方が、一番気になるポイントは『フォーカスモード』だろう。
国内ではフォーカスモードと呼ばれているが、海外では国によっては『ノイズキャンセリング』と表記されているそうで、いわゆる逆位相の音を出して雑音を相殺するANC (アクティブノイズキャンセリング)の仕組みを使っている。

もちろん、耳の塞がっていない状態でANCを動作させても直接耳に入ってくる音はあるわけで、ほんとうにどの程度の効果があるのか疑問に思われる方も多いだろう。筆者も不思議に思った。
実体験としては、『ノイズキャンセリング』というほどの効果はない。AirPods Pro 3やAirPods Max 2のような、動作させた途端に『バン!』と異世界に入ってしまったようなノイズキャンセリング効果はないと言っていいだろう。だから、Shokzは日本国内ではノイズキャンセリングという言葉を使わずに、『フォーカスモード』と呼称したのだと思う。

では効果がないかというとそんなこともない。いろいろなところで動作させてみたが、たとえば電車の中で動作させると周囲のノイズは聞こえるが、あまり気にならなくなって音楽に集中することができる。『フォーカスモード』とはナイスな表現だと思う。街角を歩いていても、後ろから来る人の足音は聞こえるが、同時にフォーカスモードがオフの時より音楽は聞き取りやすくなる。またPodcastのような会話も聞きやすい。
電車で聞いている時に、スタッフに横に座ってもらったが、オープンなのに音漏れは極めて少ない模様。フォーカスモードのおかげで音量を上げなくても聞えることも功を奏している。もちろん、ボリュームを上げすぎると音漏れするので、配慮は必要だ。
『周囲の音を聞きながら高音質』という商品価値は伝わるか?
製品として難しい部分があって、AirPods Pro 3のような『周囲の音を遮った高音質』が欲しい人が購入すると『期待外れ』になる可能性もある。
『周囲の音を聞きながら高音質』という商品価値が伝わるかどうか? 我々のようなメディアやインフルエンサーの責任も重いと思うが、ライフスタイルにピタリと合うならこれほど素晴らしい製品はないと思う。

そういう意味では、ブランドアンバサダーのサカナクション山口一郎さんの表現は適切だと思うし、彼のような日常の生活も大切にしたいと考えているミュージシャンが愛用しているという事実は、この商品のキャラクターをよく表していると思う。
この記事を読んで、Shokz OpenFit Proが気になった方はぜひお試しいただきたい。
(村上タクタ)