第2回デジタル競争グローバルフォーラム
https://www.jftc.go.jp/dk/digital/globalforum2026/
機能が制限されるような事態は避けられたようだ
昨年12月に施行された『スマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)』は欧州のDMA(デジタル市場法)の影響を受けて作られており、状況によっては、アップル製品の安全性が低下し、新機能が日本には提供されない……というような事態になる可能性があった。事実、欧州では『ライブ翻訳』や『iPhoneミラーリング』の機能はローンチされていない。
EUはひたすらシリコンバレー企業の競争力を低下させようと制限をかけている。勝負に負けるならEU圏内だけでもルールを変えようというわけだ。そのためには、安全性やユーザーの利便性を損なっても仕方がない……という態度だ。日本がそれに倣う必要はまったくないのだが、なぜだか海外企業に制限を加えることを一定支持する日本企業はあるようで、その流れを受けてスマホ新法は施行されることになった。
法律とはいえ日本の場合現場レベルの『運用』が大切で、その運用次第で、さまざまなリスクが発生したり、制限が生まれたりする可能性があった。
日本の枠組みは、セキュリティ、プライバシー安全性を明確に認めている
その現場レベルの折衝のために、たびたび日本を訪れて政府諸機関と調整し続けていたのがディロン氏だ。

筆者は何度か取材でお会いしているが、常に落ち着いて語り、(たぶん、そのつもりはないのだろうが)何かを憂いているようなまなざしが印象的な紳士だ。もちろん、折衝の詳細は分からないが、日本でiPhoneの安全性に余計な制限がかかったり、新機能がローンチされなくなったり……という事態にならなかったのは、彼のおかげなのかもしれない。

ディロン氏はDMAについて「複雑で官僚主義に基づいて作られた現実に即さないルール」とし、「プライバシー保護の弱体化、セキュリティリスクの増大、製品の発売遅延や品質低下、ユーザーや開発者の混乱を招いている」とした。
対して日本のスマホ新法については、「日本はより実用的で慎重なアプローチを取っています。完璧ではありませんが、開発者やユーザーにとってDMAとは意味のある違いがあります。日本の枠組みは、セキュリティ、プライバシー安全性を正当な競争要素として明確に認めており、企業が子どもを守るための明確な保護措置も含まれています」と語っている。
AIなど将来の技術についても、DMAのように理不尽な制限によりユーザー保護を機能できなくすることはないという。
「競争ルールを使って、エコシステムや技術プラットフォームを無理に統一させ、ひとつのシステムを他のシステムに似せるように強制することには慎重であるべきだ」という発言は、AirDropなどのアップルの独自機能をAndroidなど他のデバイスにも公開するようにという制限のことだろう。
「巨額の投資を行って開発した独自機能を、公開しろというのはイノベーションを阻害する」とディロン氏は語った。その通りだと思う。
というわけで、ひとまずスマホ新法で我々のiPhoneのセキュリティが低下したり、新機能の追加が制限されるような事態は避けられたようである。
それぞれの企業の主張
ちなみに、この第2回デジタル競争グローバルフォーラムは、1月30日の終日にわたって3つのパネルディスカッションが行われた。ディロン氏が登壇したのは、『原則から実践へ〜未来に適合する競争施策』つまりスマホ新法がどう実践されたか、そしてこれからどうなるか……ということを語るセッション。

登壇者はディロン氏の他は、Googleのアジア太平洋地域 法規制政策 統括 フェリシティ・デイ氏、OpenAIの最高経済政策オフィサー アダム・コーエン氏や、OECDの競争課次長などだった。

デイ氏は非常に早口で「AIはまだまだ発展の初期段階で、その成長を法律で制限すべきではない」という主張をし、コーエン氏は「市場は適切に開かれて、自由な競争が行われるべきだ」と語っていた。なるほど、それぞれの企業に主張があるわけだ。
今後の大きなテーマとしてAIがあり、それはどのような法制度の下で運用されるべきなのかという議論が、今後続いていきそうである。
ともあれ、ひとまずはスマホ新法については、よいところに着地したようで、何よりだ。

(村上タクタ)
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