F1の色にまつわるマメ知識1——タイム表示のパープル/グリーン/イエロー
冒頭に、F1ファンじゃないとちょっと分かりにくいシーンがある。
主人公のブラッド・ピット演じるソニー・ヘイズが冒頭タイムアタックをする。タイム表示が、イエローになったり、グリーンになったり、パープルになったりするのだが、ここはちょっと説明が欲しいところ。

F1では、タイム表示がイエローだと自己ベストを更新していないという意味なのだ。だから冒頭イエローなのはタイムが出ていないということ。
途中からグリーンになるのは自身のタイムは更新している……つまりベストタイムを出しているということになる。そして、パープルは最上級。つまり、今のセッションでは誰よりも速いベストタイムをマークしているということだ。

予選で、パープルならつまりはポールポジションということ。
コースは3つの『セクター』という区間に区切られており、そのセクターごとに色が表示される。第1セクター、第2セクターをパープルで来たら、全体ベストタイムを獲得できる可能性が高いから、「第1、第2セクター、パープル!」と言われると、F1ファンは自動的に鳥肌が立つようになっている(笑)

ちなみに、映画ではタイムが出てないシーンで文字が赤くなるが、これは映画の演出で、実際には一般の中継では赤くなることはない(チームのコンピュータではそういう表示があるのかもしれないが)。
F1の色にまつわるマメ知識2——レッドフラッグとイエローフラッグ
ご存じのように、サーキットには制限速度も一般的な信号機もないが、その代わりフラッグに関するルールは厳密に守られる。
これは、バイクでもクルマでも、どんな草レースでも基本的には共通のルール(フラッグ規定の子細は国や、クラスなどによって異なる部分もある)になっている。

レースでは常にほぼ全力で走るわけだけが、事故が起こっているところに避ける余力のないスピードで進入してしまうと大惨事になる可能性がある。そのためにフラッグは絶対に遵守しなければならない。
一番重要な旗は赤旗……つまりレッドフラッグだ。この旗が出たら、レースは中断。走行車はただちにレーシングスピードでの走行をやめて、路上でどんなアクシデントが起こっていたとしても速やかに止まれる速度でピットに戻らねばならない。
たとえば、コース全体にクラッシュしたクルマの部品が散らばっていたり、バイクなら転んで気絶したライダーがコース上に横たわっていたりすることさえある。いずれにしても、もう競う必要はないのだから、安全な速度でピットに戻る。直前までハイスピードで走行していると、速度感覚がズレていて150km/hでさえ遅く感じることもあるから、本当にゆっくり走る必要がある。
次に重要なのは黄旗……イエローフラッグ。この旗が振られるとそこより先のコース上に何らかのアクシデントが発生していることを示している。追い越しは禁止。イエローフラッグが出ている範囲内で追い越しをすると、重大なペナルティが科せられる。

イエローフラッグが振られていると(振動という)、アクシデントの現場であることを表している。重大なアクシデントの場合は2枚のイエローフラッグが振動で出される場合もある。
一般には、何らかの事故。パーツが落ちていたり、観客席から飛んだビニール袋が障害になる場合もある(だからレース観戦時には絶対に飛ぶようなものを持っていてはいけない)。特殊な例としては何らかの生き物がコースに入ってる場合もある。2024年のシンガポールGPでは、体長1mを超すような大きなトカゲが進入したし、鈴鹿サーキットは内側に池があるので、雨の日にはカメがコース上に出てくることもある。
我々が走っていたような草レースではイエローフラッグが出たら大きくスピードを落すが、F1の場合はタイヤを冷やしたくない、ペースを維持したいなどの理由でたびたび速度が減速されず、問題になることがある。また旗を使いにくい場所のために、ライトパネルが使われることもあるし、F1の場合はステアリングディスプレイにも表示される。
ちなみにレッドとイエローの他の色の旗もある。白旗は救急車など4輪車がコース上に入っている(F1では4輪車を入れる場合には赤旗でレースが中断される)。赤/黄の縞模様の旗はオイル旗と呼ばれ、コース上に滑りやすい液体が出ている。緑旗は、黄旗や白旗の解除。ブルーは後ろから自分と違うラップの速い車両が来ているので、邪魔をしないように道を譲れ……という旗。周回遅れになると振られる。黒旗もしくは、黒にオレンジボールは、機械的故障などでの走行停止命令。一般にはゼッケン番号と一緒に出される。そしてご存じ白黒のチェッカーフラッグはゴール、レース終了だ。

F1の色にまつわるマメ知識3——赤/黄/白/緑/青、タイヤのロゴの色
昔は、レース用のタイヤも提供メーカーごとに性能差があったりして、各社が性能を競っていたのだが、現在は単一のメーカー(イタリアのピレリ)が提供しており、レースのエンターテイメント性を高めるために、ドライコンディションでは3種類のタイヤを提供している。

それぞれ、ソフトタイヤ、ミディアムタイヤ、ハードタイヤに、ロゴが赤/黄/白で入っている。
ソフトタイヤは柔らかくてグリップが良くて速く走れるが、すぐに磨耗してダメになる。ハードタイヤは長い間走行可能だが、硬くて遅い(一般的には)。そしてミディアムタイヤはその中間だ。ハードタイヤだとピットインせずに長時間走れるが、タイムが遅くなる。
タイヤ交換は最短約2秒というすさまじく短い時間で交換されるが、ピットロードには制限速度があるので、一度タイヤ交換に入るとおよそ二十数秒(コースによって違う)を失ってしまう。これらの要素を勘案して、タイヤを選択して戦略を練るというわけだ。
劇中でも、ソニーがピットインして赤いロゴのソフトタイヤで飛び出して猛追するシーンがあるのはそういうことだ。
2026年は、5戦だけだが地上波でも放映される
ちょっと劇中では分かりにくかったF1の色にまつわる話を書いてみた。
他に、選手の名前などは、チームカラー(マクラーレンはオレンジ、レッドブルは紺、フェラーリは赤など)で書かれるとか、知っていると理解が早まる色の知識がある。
2026年シーズンからは、アップルがアメリカでの独占放映権を取得。日本でも、フジテレビが独占放映権を獲得し(DAZNが契約解除された)、CSとオンラインで全戦を生放送し、さらに5戦を地上波で放映することになった。

映画『F1/エフワン』を見て面白ければ、ぜひリアルのF1を観てみていただきたい。実は筆者も2〜3年前から最近のF1にハマった『にわか』なのだが(87〜90年ぐらいは鈴鹿に行くぐらい熱心に観ていた)、鈴鹿とカタールの2戦を現地観戦してしまうほどハマってしまった。面白いので、ぜひ。

(村上タクタ)
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